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◎【87点】この世界の片隅に【映画感想】◎

この世界の片隅に

製作

2016年日本映画

監督

片渕 須直
・アリーテ姫




制作費が足りないため、一般の人からのクラウドファンディングを用いて、
制作費を補填したアニメ映画

監督は、フジテレビ系列の日曜夜20時頃に放映していた世界名作劇場の『名犬ラッシー』の監督を務めた片渕 須直さん。
てかその時代に日曜に枠でアニメを放映しているのが、今だと全く考えられないのが、わらけてくるよね。
ワンピースとかそのあたりにいたけど、逆に日曜の朝に追いやられてるな。
でも今じゃアニメが産業として96年ぐらいよりも盛んになっていて、今もその時間アニメやればいいのに。
さて雑談はさて置き。
結構前になりますが、見ました『世界の片隅に』
公開二週目です。
メイン劇場の新宿の方では毎週舞台挨拶などをやっているようで、連日満席のよう。
自分は近所の劇場で鑑賞しましたが、完売だったと思う。
1週目に見た人が、だいたい絶賛の本作で、最近利用している映画レビューサイトのフィルマークスでも5点中4点以上のレビューだらけ。
ツィッターでも「年間ベスト決定」という人だらけ。
まぁそんなことはさて置き。
気になってたので見ました!

今がいかに恵まれた時代か?

そして今の平和が失われつつある今こそ、
もう一度普通の日常の尊さを噛みしめるために、是非見てほしい。
正直言えば、「言うほどすげぇ映画ではなかった。」と言うのが所感だが。
それ以上に「一年に一度、元旦の夜中や大晦日に放映して通常の「今」の幸福を確認した方がいい」そう思った。
作品として、時代が第二次世界大戦の末期、舞台が広島県。
と言う夢も希望もない絶望が根底にある。
しかし本作は、その重さを廃絶したわけでもなく、その戦争と隣り合わせに生きる、心が子供のまま大人になってしまった女性の視点を主人公に据えて、その時代の広島に生きる、ドキュメンタリーにも近い、日常が描かれたアニメ作品。

日常と戦争

これね。日本で近年よくある日常系アニメなんですよ。
その期間が学生だとかアニメ制作とかそう言うのじゃなくて、戦争末期の広島という、ただそれだけなんです。
じゃあもう「火垂るの墓」みたいに絶望的な作品かと言われると、全く違う。
戦争と隣り合わせに普通に生きる人々のゆるいお話なんですよ。
嫁いだ先で、主婦として国民として奮闘するちょっととぼけたすずが、戦争という物不足や貧乏、空襲、憲兵と数多くのものに抑圧されながらも、絶望をせずに生活をする。
そういう作品なんですよ。
それがまたね。怖いことにその抑圧に慣れていくんです。
空襲も「またかよ」程度で家族一丸で逃げる。
もっと悲惨に逃げ惑うかと思いきや、「はいはい。またか。まぁ日本勝ってるしね。」みたいなそんな感じなんです。
その感情が、まぁ現代ともあんま変わらないというか。
でも日々、生活は苦しくなって、近所の子供はみんな戦争に連れて行かれてしまって、それなのに、悲しむこともなく、ただただ営みを続ける。
なんともセンセーショナルながら、その戦争を体験していない私たちにとっては、「それどころじゃないでしょ?」とい疑問と同時に、「当時を生きるとはこういうことだったのかもしれない?」という本作の丁寧なドキュメンタリー性にただただ納得してしまうのでした。

身近になった戦争と。。

そのハイセンスな切り口だけでも、すごい飛び抜けた作品だったと思うのですが、
それ以上に、現在の世界情勢を考えると「戦争」ということがここ20年前よりも身近になったこともあって、むしろ今の「戦争」がない今の幸せを噛みしめる必要があるなと再認識してしまう。
だって、あんな何もかも、子供も財産も国に奪われて、そしてご飯までも少なくて、
今のコンビニでなんでも揃うような生活が、いかに進歩して幸福か?というもう今の慣れきってしまった幸福をもう一度、すべての人が見直す必要があり、戦争が起きてしまったら、いつまた家も住所も戸籍も無くなってしまうかもしれないという差し迫った恐怖を避けるためにも、頭の片隅に本作の克明さを注入する必要があるのかもしれない。
もちろんそんなことよりも本作の優れたアニメ性も忘れてはいけない。
近年のデジタル作画とはちょっと違うジブリの「かぐや姫」を彷彿させる淡さ。
絶妙にデフォルメされたキャラクターたちが生々しく痛みを抱えることで、何十倍もむごたらしさを感じる。
そして劇中で印象的に使われるすずの絵や、戦争と空襲の克明さ等、素晴らしさもある。
今作で芸能界復帰とも言えるすずさんの声を入れたのんちゃんも良かった。
ちょっと道徳くさい作品ではあるが、単純に反戦がどうとか?それ以上に、キャラクターたちの強さは、魅力的。
現在のように情報がなんでも手に入るような時代とは違い、その分、生き方の選択が少なく、幸福がある意味では簡単に選択して得られるようになっている。
それでも戦時中でも喜びを見出すすずは希望に溢れた存在だなと。
これは個人的見解だが、今も今で生きづらいなと文章を書いていて思う。
昔よりも自由になった社会ですが、その自由さが落差を生み出し、選択の自由から、確実な幸福がどうしても手に入りづらい、はたまた幸福がどこにも見出せない、喜びのゴールが具体的に見えないし、それが実現できない。
なんとも空虚で無機質なそんな社会になってしまったと思う。
またすずが最後の最後で戦争に負けた事実を知って、憤りを表現する。
結果を知っている自分たちは、ただただ翻弄されて可哀想と思うが、すずたちは苦しい生活を耐え抜き、勝利を信じて国に貢献していて、勝利を信じていた。
そんな愛国心が国全体にあったという表現として、明確に現代とのズレを感じた。

メモ得点メモ
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど  10/10
・映像のアプローチ 8/10
・映画の美術面 8/10
・キャラクターの魅力 8/10
・音楽 8.5/10
・上映時間と個人的趣味 8.5/10

87点

歴史の詳細を把握しないで見た方が、ドキドキして楽しめると思う。
あと戦争に飲み込まれる前は、かなり海外かぶれな日本だったなと。

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