「もう一つの地球から始まるドロドロした人間ドラマ」
あらすじ
舞台はアメリカ。
17歳のローダは、成績優秀な高校生。特に宇宙や星についてとても熱心に研究していた。
その甲斐あって、MITへの進学が決まっていた。喜びお酒を飲んでパーティーをするローダ。
しかし帰り道飲酒運転をしながらラジオを聞いていると最近接近してくる星が非常に地球に酷似していることが分かったと放送される。車の窓からその星を眺めていた彼女は、そのまま前方不注意で交通事故を起こし、相手の車に乗っていた家族を父親以外殺してしまうのだった。
未成年のローダは遺族の父親に特定されることはなかった。
4年後、少年院から出所したローダは、前途有望だった未来も全て無くなり、高校の清掃員になる。その惨めな生活に嫌気がさし自殺未遂もしてみる…。
そして空にある地球に酷似した星は、更に接近し、ついにこちら側の地球からあちらの地球へ信号を送るまでに至るのだった。それは同時にあちらの地球でも行われていたのだった。
そしてNASAは向こうの地球に人材を派遣することを決定。それを公募することになる。ローダはそれに興味を抱き応募しようとする。
またローダは仕事の帰り道に、4年前に命を奪ってしまった家族の遺族の父親のジョンの家に訪れる。ジョンは荒れ果てた生活をしていた。ジョンに見つかったローダは自身を訪問清掃員と偽り、ジョンの家に潜入し掃除をする。
徐々に再生していくジョンの生活、ローダは自分が彼の家族の命を奪ったことを言えないまま二人は肉体関係を結んでしまうのだった…。
2012年7月7日鑑賞
感想
2011年のサンダンス映画祭で審査員特別賞とかなんか微妙な賞をゲットした作品。
何故か小規模な映画にも関わらずBlu-ray化もされている。
一応もう一つの地球が現れてしまうことによって巻き起こるサスペンスドラマ。
ということでジャンルはSFになるのですが、そのSF要素を決して真っ正面から描こうとしない、変な映画。
巷ではSF贖罪映画と呼ばれている、なんだかネタっぽい映画ですが、サンダンス映画祭らしい若手の低予算映画。もう一つの地球が確かに空中に存在するのだが、それが観客をワクワクさせるような効能は一切なく、ある意味目の保養とも思える。(苦笑)
論点としては、やはり主人公の女が自分が家族殺しの犯人であるにも関わらず、うっかり被害者と肉体関係を結んでしまうというドロドロな展開をどう受け止めるか、かな。
別に主人公も悪気があって、そのような関係になったわけでもなく、打ち明けたいのだが、打ち明けられない恐怖。それなのに徐々に親しくなってしまう葛藤が非常に重く、見ていて息苦しい鬱映画。それをまた手持ちカメラ風と寂れた映像と微妙に悪い家庭カメラ風な演出で見せるわけ、挙げ句にカメラのズームをしてみたりと妙にドキュメンタリー風にしたりして、制作者たちはどんだけSなんだよという。
まずSF映画として見て、『美しく青きドナウ』やら電子音が鳴らないという罠。正直最初の設定と終盤以外は別にSFでも何でもないので、本当にレンタルして後悔した感は強い。
しかも簡素でドライと来てしまって、このドロドロした人間関係に嫌気さえ感じるという罠。
この地獄から抜け出すべく、主人公はもう一つの地球に行こうとするわけで、あっちの地球の自分はもしかしたら違う自分かもしれない。
しかし彼女はその権利を勿論、被害者の男に譲る。全身全霊で償いをしつくした彼女を待っていたのは、向こうの世界から来た有能な自分だった…。
あの事故から二つの世界はリンクしなくなっていたというのがこの映画のSF的救いか?
しかしそのもう一人の自分が後ろにいるというところで映画は終了。
どこまでも映画制作者たちはサディストだな。
この時点で向こうの世界での自分は平和ということは象徴されるのだが、別の見方をすると自分があそこにいることを知っていたという事実もあると思う。つまり自分がどうなるのかを知っているということは、同じことを経験している。そもそもこの場所にこれた理由もまた同様な理由を述べて立候補したからとも言える。そうまで複雑じゃないにしろ、あの場所に自分がいることを知っているもう一人の自分とは、映画内に解説が無ければ、もしかしたら混乱を生むだけに過ぎず、あそこで終わらせることは、観客の解釈に任せるという逃げであると自分は思うのだ…。
異色な要素を混ぜ込み実力を見せつけたような感じがして自分はこの映画鼻につきましたね。
こういうちょっとした若手の鬼才気取りのアート映画を好む人はいると思います。
そういう重厚な異色なドラマを見たいという人にはお勧めしたい。内容ほとんど話したけれども、映画を見ると全然違う印象が必ずあるから大丈夫だと思う。そもそも映画は内容も大事だけど映像という具現化された立体的に切り取られたものなのだしね。(苦笑)
得点
4点
テンポも悪く感じられたが、中身はあると思うが、共感出来る人はごく一部なのではないだろうか?オススメは出来ない。
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