製作
2018年アメリカ映画
ディズニの長編アニメーションを救った男の悲しき一生
2020年8月16日自宅Disney+鑑賞 2020年46本目
『リトル・マーメイド』をディズニー・アニメを救った男
ドキュメンタリー映画というものは、
いまいち感想を書くのが難しい。
映画とは映像、シナリオ、演技。
これらの総合力でもあるし、
ケミストリーでもあるし、
色々な側面から見て、
良いとこも悪いとこも見れる。
映画の感想を話すだけで
自分自身がすごい存在であるという
虎の威を借る狐状態が快感だなと
感じる時もある。
しかしこのドキュメンタリー映画というものは、
個人的には優れた評論文というか、
主張をまとめたものだったり、
ある事象を収めたものだったりと
そりゃびっくりするような展開があれば、
すっごく興奮するし、
許せないと思い憤ることもあるが、
その主張に対して
自分がどう思うかという、
そういうことなんだよな。
それに対しての今作は、
今まで知りもしなかった男、
ハワード・アッシュマンという
ディズニー・アニメーションを救った男の
短すぎた人生を教えてくれる、
ディズニー映画の違った見方を教授する
作品であった。
アラン・メンケンの師匠
映画はこのハワード・アッシュマンの人生を
描いている。
先に言ってしまえば、
彼は『リトルマーメイド』『美女と野獣』
『アラジン』の3作の作詞を手掛けた人で、
『美女と野獣』完成直前にエイズにより他界
してしまった人だ。
彼は幼少から舞台芸術に心惹かれ、
とりわけ演劇に関心を持ち、
ミュージカルを愛していた。
NYの大学ではないもっと田舎くさい
インディアナ大学出身ながら、
仲間たちとニューヨークに移り、
ブロードウェイのその下のオフブロードウェイの
さらに下のオフオフブロードウェイで劇団を
立ち上げて成功に導き、
結果的に若くしてブロードウェイでミュージカルを
演出する天才だったのだが、
成功と挫折を常に経験し、
そして同性愛者である多感で、
そして完璧主義で
ミュージカルを誰よりも愛し、
その面白さに全てを捧げた人だった。
彼がアラン・メンケンと
カート・ヴォネガットの長編小説
『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』
を舞台化し大成功、
そして自身が過去に愛したB級映画を舞台化し、
その成功により彼らは映画界にデビューした。
ハワード・アッシュマンという才能に
下火だったディズニーはアニメ映画復興の為、
再びのアンデルセンの童話
人魚姫の楽曲を彼に依頼し、
そしてハワードは、音楽家のアラン・メンケンを
呼び込んだ。
ハワードの作詞に対する思いと
メンケンのそれに呼応した楽曲、
2人のケミストリーにより、
Disneyは復活した。
それを自分は知らなかったし、
ディズニーアニメの歴史を語る上では、
見ておいた方がいい作品だと思う。
ハワードの悲痛な叫びがミュージカルの肉体となる
このハワードという人は、
ゲイでエイズになって死んでしまう。
しかし彼は死ぬ直前までエイズであることを
言わないのだ。
ハワードは残された命を全て歌詞に捧げ、
逆にスタッフは鬼のような形相の彼に、
恐怖とそし資金と時間を使う彼に苛立ちを覚えた。
何度も何度もその歌詞の言い回しに注文をつける
彼は、作詞だけにとどまらず物語の設定や、
プロットも担う。
まさにディズニー・ルネッサンスの本流を
生み出した立役者だったのだ。
また彼の表面的な恐怖に対して、
内面的な命が尽きるまでの恐怖だけに
止まらず、同性愛者としてエイズを患う
社会的に排斥される立場の悲しみ、
周囲からの恐怖などが、
美女と野獣の野獣の醜さや
暴力を振るう様など、
彼の抱えていて恐怖や怒り
がキャラクターそのものに投影され、
また彼の生への渇望が、
アラジンのジーニーの楽曲へと昇華され、
アリエルの人間の世界で自由に歩くことは、
彼自身がゲイとしてパートナーと
世界に受け入れられて、
街を歩けるそういう世界を夢見た気持ちが、
生命を燃やし尽くした男の詞が、
ディズニーアニメには息づいてる。
だからこそ90年代初頭のこの3本は
普及の名作であり、
『アラジン』と『美女と野獣』は
実写映画化も大成功したのではないか??
ちなみにアラン・メンケンは本作で
実写化はゴミだと全否定。
むしろ彼自身でハワードとの共作を
再度のミュージカル化を彼自身が出がけ、
まるでハワードの生き様に捧げている
ようにも思える。
ちなみにディズニー地獄の実写化シリーズは
もうそろそろやめて欲しい。
もしもハワードが生きていたら、
どんな名曲がこの世に生まれていたのだろうか?
Disney+に入会していたら
是非見て欲しい作品の1本。
自分はDisney+大好き人間です。
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