隕石、水害、そして地震
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに
製作
2022年日本映画
311に挑む驕り
監督
新海誠
・君の名は。
・天気の子
・言の葉の庭
・雲のむこう、約束の場所
ネタバレ あらすじ
2022年11月18日劇場版鑑賞
2022年43本目
新海再び
2022年11月現在
日本興行収入歴代5位で
250億円を『君の名は。』で
稼いだ伝説のアニメ作家新海誠。
その次の『天気の子』も
141億円という日本興行収入
歴代14位という記録を持ち。
合計すると『千と千尋の神隠し』
よりも稼いでいる激ヤバな
作品を2連続で生み出し。
近年の映画大金高騰や
全てのシネコンで劇場を
貸し切るほどの回数を上映したりと
容易に記録塗り替えが
できてしまうシステムが
出来上がっているにしても
それでも2010年代後半の
オリジナルアニメ映画として
邦画を牽引する存在へと
昇華してしまった
低予算で内省的な作風が
多かった新海誠さんですが
今や時代を担う存在として
『天気の子』続く
オリジナルアニメ映画が爆誕。
その名も『すずめの戸締り』
スルーしようとも考えた自分ですが
予告編にて
日本各地の廃墟を巡って
災厄のドアを閉めて
災厄を封印するという和製SFに
魅力を感じまして鑑賞しました。
時代の担い手として3.11を描かずにはいられないのか
成功したクリエイターとしての驕り
今作ではそれを感じずにはいられなかった。
今作では2011年3月11日の被害者を
主役に据えて
その時のトラウマが
フラッシュバックするという
若干PTSD的な闇深い主人公が
冒険と恋愛の旅を超えて
その痛みの先にも確かに
喜びも存在するという
めっちゃ前向きなメッセージを掲示してくる
災厄として描くのは地震で
生々しい緊急地震速報の描写もある。
3.11については直接は描くことはせず
結果としてその犠牲者の彼女が
その痛みを超えて解放されるという
物語なのだが
見終わって全然得しないし
メッセージ性が強すぎる気もする。
そこを描くために
緩和剤としての恋愛だったり
冒険だったりという
作り手の苦労というものを
感じさせる作品だったなぁと。
監督としても3.11を風化させようとする
国やマスメディアにどうしても
警報を鳴らしたかったようで
オリンピックやら再開発やら
コロナ対策で被災地の復興は
過去にされていることが
許せなかったのだと思う。
流石に日本映画界を救ったような
男の希望を止めることなど誰も
できないだろう。
ある種監督の思いや願いに満ちている作品
なのだがそこにさらに
監督の意味深なオマージュがあって
なんだか見ていてしんどい。
成功作品の面影を借りて
今作の監督の思いについては
紛れもないオマージュを感じたし
むしろ監督のエンタメを
作るのではなく思想を描いた
作品としてちょっとに苦手だった。
あの痛みはあまりにも大きく
キャラクター1人の行動で
どうにかできるような内容では
なかったと思う。
結局この作品自体も
あの大災害に負けてしまったと
個人的には思えてしまった。
その痛みを和らげる手法として
王子が野獣やカエルに
なってしまうという
物語の手法を借りて
主人公の初恋の人を
椅子にするトリックで
作品を愛らしいものにした。
そして謎の存在を
愛くるしい猫として扱い
突如普通の猫のような
趣にすることや
作品中にユーミンの楽曲を
流すことで
『魔女の宅急便』の面影を借りている。
さらには東京にて大地震を起こそうとする
禍々しき存在の歪なCGについては
まるでエヴァンゲリヲンの使徒だった。
またこれは良い点なのだが
日本のありそうな伝承を巧みに
利用して閉じ師という仕事を
作ったのは面白い。
見ていて『ペルソナ4』を
思い出した。
劇中には過去作の『君の名は。』の
瀧くんの声をした芹沢を登場して
何か根幹的なつながりを
見ているものに与えたりと。
そして『天気の子』でもあった
微細な東京や高速道路の姿など
多くの魅力を織り交ぜながら
根本的な過去の災厄に
立ち向かおうとしているのだが
そこに辿り着くまでのキャラクターのドラマが散漫していて心情が分かりづらい
宮崎→愛媛→神戸→東京→東北
という道中で主人公はそれぞれに
人に出会いそれぞれの価値観に
触れていくというわけなのだが
そのドラマに並列して
災厄の封印というガジェットが
あるわけでどっちつかずで
散漫としている。
コロコロと映画は引っ掛かりを
作ることなく最後に着地してしまった。
というのが自分の印象でした。
またなんで成功者ってのは
地域貢献みたいなことして
自社の部下とかに感謝せずに
第三者の社会貢献に走りたがるのか?
日本社会への癒しに挑む
社会貢献じゃなくて
監督を応援している
オタクたちへのご褒美が
欲しかった部分はあるんだよ。
ちょっと主役2人の声が…
個人的な価値観だが
今作の宗像は
ジャニーズの若い人が担当。
序盤は舌足らずで下手だが
後半は持ち直した。
主役の鈴芽も若手の女優が担当で
めっちゃ下手だった。
こういう感じがジブリ作品の
オマージュのように思えるが
2010年代から
海外からのNetflixの援助や
AmazonなどのVOD配信で
制作費が若干増えたのか
声優さんも上手い人が
一気に増えて育っている中
この素人採用っていうのは
自分も耳が肥えてしまって
辛かったです。
なんだかんだ34歳の
おっさんですけど
肩の力抜いてみれるから
アニメは適当に見ているんだけど
毎週高クオリティのアニメ
数本見ているのが常ですからね。
時代のアニメの高品質化というとこはあるよねぇ
アニメの品質ぶち上がり問題
本当に直近のアニメ
質が高くてクソやばい。
『鬼滅の刃 遊郭編』
『チェーンソーマン』や
『進撃の巨人』
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
『呪術廻戦』
などなど2020年代に入って
地上波フォーマットの1話20分程度の
アニメーションのクオリティが
クソ高い。
むしろ『天気の子』や
『君の名は。』は時代の先駆けで
凄まじいクオリティの映像を
浴びることに感動したが
地上波がそのレベルに
追いつき始めているのが
本当にやばい。
むしろその感動が
手軽になったことで
映画のアニメに対しても
実写寄りの作風は
評価しづらくなってしまって
むしろデフォルメされている方が
良いのではないか?
と思う部分もある。
前作でスポンサーから怒られた?
流石に前作ほどの
マーチンダイジングのような
日常の品物が随所に出てくるような
描写は減っていた。
むしろ『天気の子』は
心の貧困の象徴のような
扱いで出てきたので
出資者から首を傾げられて
「今回は遠慮します」とかに
なったのではないか?
と思うのでした。
今作はどこまで興行成績いける?
やはり今作でも100億越えを
狙っているように思える本作。
公開日は異常な上映回数でしたね。
IMAXもIMAXサイズで製作した
『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』
をどこかしてまでも上映
しておりました。
実際今作はリピートしたいか?
人に勧めたいか?
となると結構しんどい。
やはり3.11の悲劇に
全く立ち向かえていない。
物語の敗北を感じた
やることの意義は確かにある。
そして散漫した物語で
挙句登場人物も
「闇が深い」という台詞があったり。
また終盤の強引な大怪獣バトル感
好きなんだけども
そこでのそれは一体何か意味が
あったのか???
と思う所もあった。
あれで敗北してたら
再び福島で震度7が起きてた?
という恐ろしいプロットだったのかな?
ダイジンの無垢な感じで
封印することをやめて
自由を得ようとするが
結局再び石になる
犠牲の物語も心が痛い。
今作は『天気の子』のような
明確なハッピーエンドの
エピローグの言及は避けて
ふわっとした淡い終わりがある。
それもなんか物足りなかった。
結局数年に一度閉じ師として
閉じる旅をしないといけないのか?
そして鈴芽もまた相棒として
一緒に旅をするのか?
その辺りの未来のワクワク感が
描かれず。
ジブリだったらそういうの
上手いのになぁと思うとこもあった。
そんなわけで
流石に3作目もあって
時代も変わった所もあって
そこまでヒットしないのでは?
と思うのでした。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7/10
・映像のアプローチ 7/10
・映画の美術面 7/10
・キャラクターの魅力 5/10
・音楽 5/10
・上映時間と個人的趣味 6/10
64点
音楽が普通の映画風だったのと
ここぞって時に
ドヤって感じがして残念でした。
映画=ミュージックビデオでも
よかったんです。
それぐらいに音楽流しまくっても
よかったんです。
あと地味に深津絵里が声優してて
衝撃でした。
ダイジンの大臣らしさ全然わからんし。
魔術使って人間にカモフラできるのも謎。
扉閉じる瞬間の人の営み。
最後の時がくっそえぐかった。
また本作では津波の映像はないが
実際にYouTubeなどで
当時の津波の映像や
2011年に家で生中継して
平地が津波で削がれる姿を見たものとしては
本当にあの傷は拭いきれないし
個人の問題で消化してもいけないもの
だなぁと感じる。
自分が生き残れるとかそういう
問題じゃないし
それを拝金主義や個人の資本主義の
価値観で安全を奪ってはいけないことだなと
そういうことの方が大事な
ことなのではないか?と改めて思った。
『君の名は。』はフィクションに
物語が勝利していて最高だったんだがなぁ。
現実に立ち向かうのは厳しいよ。