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☆【90点】パラサイト 半地下の家族【解説 考察 :ユーモアでは埋められない格差】☆

パラサイト

製作

2019年韓国映画

無残な
生まれ持った階級と格差

監督

ポン・ジュノ
・オクジャ/okja
スノーピアサー
・グエムル-漢江の怪物-
・殺人の追憶

キャスト

ソン・ガンホ
・タクシー運転手 約束は海を越えて
・殺人の追憶
スノーピアサー
・グエムル-漢江の怪物-

あらすじ

現代の大韓民国のどこかの街。
この地には貧困層が多数住んでいる。
キム一家は4人家族。
父のギテク(ソン・ガンホ)は自営業に失敗し職を転々とし、
現在は失業中で内職に励む。
母のチュンスクは元ハンマー投げのスポーツ選手でメダリスト。
長男のギウは資金難のため、大学に行けず、
日雇いの仕事を探しているが見つからない。
長女のギジョンも大学進学を目指しているが資金難のため、
その未来は暗いが美術を専攻していた。
楽天的な家族だが、全員仕事がなく、内職でギリギリの生活。
インフラもなく、
住んでいる場所も地下と1階の間の半地下という不思議な古い建物。

そんなある日、ギウを元同級生で現在大学生のミニョクが訪ねてくる。
彼は、海外に留学するので、
英語の家庭教師のアルバイトを辞めることになったのだが、
彼の教え子の女子生徒のダヘに恋をしており、
彼女が大学生になった暁には結婚を前提にお付き合いをしたいと考えているのだ。
そんな彼女を次の家庭教師と恋愛されてはまずいと考えた彼は、
旧友で学力の非常に高かったギウに家庭教師を引き継いで欲しいと言うのだ。

仕事のなかったギウはミニョクの依頼を承諾。
ダヘの家庭教師になるため、ギジョンに学歴詐称した履歴書を作成、
父のギテクと一緒に面接での発言などの脚本をつくり別人へと変貌し、ダヘの家にいく。
彼女の家庭であるパク家は、
彼らの住む街から少し離れた高台の
富裕層が住む地域にある高級住宅街のうちのひとつの大豪邸だった。
二階建てで吹き抜けもあり広いリビングだけでなく、
地下には食料庫もあり、さらにはパーティーもできる広大な庭もあり、
著名な建築家がデザインした素晴らしい家だった。
ギウは見事に高学歴を詐称し、面接官のダヘの母ヨンギョに気に入られる。
しかも給料は想像していた以上の大金だった。
また自分たちと違う思考をするギウにダヘは惹かれてしまう。

そしてある日、
ヨンギョの息子ダソンは、落ち着きがなく、悪さばかりしていた。
またダソンは絵に興味があるが、悪童の彼に家庭教師はほとんど愛想を尽かし、
それを見抜いたギウは彼の妹のギジョンを同じく学歴や身分を詐称して、
家庭教師兼精神療法士として紹介する。
それに興味を持ったヨンギョ、
後日一家のもとに現れたギジョンは見事にダソンを手懐けた。
さらに大金を手にしたキム一家は、
他にパク家の仕事で身内を紛れ込まそうと考えるキム家。
ギジョンは人のいいパク家に従事する運転手に目をつけ、
濡れ衣を着せて、ヨンギョを唆し、運転手を解雇させ、
ギジョンは巧みにギテクを経歴詐称し紹介する。
余力のあるパク家はギテクを雇うのだった。
そして彼らが次に目をつけたのは、
以前ここに住んでいたこの家を建築した建築家の家政婦で、
そのままパク家の家政婦になったムングァン。
彼女にも濡れ衣を着せて、首にさせ、ギテクの妻チュンスクを招こうとする。

キム家の策略は見事に成功し、
パク一家にて、多額の報酬と最高の職場を手に入れた彼ら。
パク一家がある日、ダソンの誕生日でキャンプに出かけることをいいことに、
不在のキム家にて宴を開いたするパク一家。
盛り上がっていた矢先に、辞めた家政婦が忘れ物をとりにきたと訪ねにきてしまい。。。。

2020年1月12日劇場鑑賞 2020年2本目



格差社会だよ全員集合

2019年に開催された第72回カンヌ国際映画祭最高賞受賞
2020年に開催された第92回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞受賞

2019年を震撼させ、アカデミー賞の歴史を変えた
ポン・ジュノ監督の韓国映画が劇場通常公開されたので鑑賞しました。

『寄生』一つの生物が、他の生物についたり内部に入り込んだりして、
そこから栄養を取るなどして生活すること。

韓国の貧乏家族と富豪家族の2組。
無職な貧乏家族はある日幸運にも仕事を手にする。
しかしそれは富豪家族に入り込んで、給料をもらう寄生生活だったのだが、
その寄生行為をしていたのは、彼らだけではなかった。。。

『半地下』北朝鮮の核戦争を懸念した韓国は、
富豪たち向けに地下の核シェルターを作成。
ただ90年代の不動産高騰により、使用する可能性の低い核シェルターを住居へ改造。
日当たりの悪いその場所は貧困層の住処へ

via GIPHY

というわけで、上記2つがプロットを結びつける重要要素。

そこにポン・ジュノ監督のブラックユーモアによって、
まさかの富豪家族のもとに貧乏家族がするする潜り込んでいく。

そのテンポの良さを素っ頓狂な感じに描いていてとても面白くて見やすいのだが、
根底にある2つの家族の根本的な格差が辛い現実を突きつけてくる。

頑張っても報われない社会

思えば2000年代や90年代はアメリカでもアメリカンドリームという言葉があった。
都市部に出て結果を出せば、成功を掴める。
努力をすれば報われる時代だった。

しかし本作の貧乏家族のキム家においては、
とても優秀な頭脳を持っている長男ギウと長女ギジョンが描かれるのだが。
しかし彼らは進学もできず、明るい未来が全く見えてこない。

彼らはそこそこから抜け出すことが術が存在しないのだ。

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韓国はそういう社会になってしまった。
生まれ育った環境に差がつき抜け出せない。

それが現代の格差社会。
お金がある家庭に生まれた子は頭脳などなくとも経済力で学力を補える。
現代の韓国の若者は結婚、出産、友人、恋愛、正規雇用、住居、夢。
何もかもを諦めるのだ。

そしてその社会問題は、韓国だけにとどまらず、全世界を巻き込み始めている

イギリスではケン・ローチ監督が
『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』にて、
国の社会保障制度によって苦しられて命を失ってしまった労働者や、
仕事のない労働者が選択肢なく大企業の利益至上主義による
劣悪な雇用形態により業務過多と労働保険の保証のない状態で
低流労働階級者の家庭の崩壊。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』は2016年のパルムドールを受賞。

そして2018年のパルム・ドールでは日本の『万引き家族』が受賞したが、
『万引き家族』も社会の底辺の家族の苦しみと幸福を描いた作品である。
まともな仕事に就かず犯罪行為を行なって生活品を手にし、
そして血のつながらないもの同士で擬似家族として過ごし、
高齢者の年金のみがまともな収入源という
ちょっと機を狙い過ぎてて擬似家族というテーマが濃すぎる部分もあるが、
根本的には抜け出すことのできない貧困が根底にある。
そしてそして2019年の日本での興行成績No.1だった作品『天気の子』
このアニメ映画も親のいない少年少女と家出してきた少年の
都市部を舞台にしたSF冒険ロマンスだが。
日本社会の闇を描いたように溢れまくっている小売業の低価格の食料品の数々が、
日本社会の当たり前の貧困を再度浮かび上がらせてくる。

そしてアメリカでは『アス』にて、
虐げられた人権のない自分の分身たちが一斉に放棄し社会を崩壊させ、
『ジョーカー』では国によって削減された貧困層の福祉補助がきっかけで
精神病患者の歯止めの効かない狂気が爆発。
そしてもともと社会に抑圧されていた貧困層の労働階級が、
暴走するジョーカーことアーサーを象徴として抗議活動が暴徒化し、
都市機能が麻痺する狂気の一夜が始まってしまう。

いずれも全世界が拡がり過ぎた格差において危機感を感じたことで
今年のアカデミー賞は『パラサイト』になったとも言える。

脚本が面白い

もちろん『パラサイト』は
ブラックユーモアたっぷりの韓国映画らしいノリのコメディと社会風刺作品なのだが、
終盤にて一気に崩壊する。

中盤で暴かれるもう一つの寄生家族の存在。
意外にも伏線があったりするが、キム一家を超える寄生っぷり。
そこから徐々に崩れていくキムたちの完全犯罪とも言える寄生行為。

そして現実的にも問題となっている地球温暖化による大雨で
キム家は水害に遭い精神崩壊。

追い込まれてひび割れてしまった2つの家族の心は、
最終盤にて水害も気にしない
大富豪の優雅な日常の一貫である庭での
誕生日パーティーで一気にサスペンス映画として収束していく。

そのおそろしき大団円はやはり脚本の妙とも言える。
頓珍漢でブラックユーモアたっぷりのトーンから一気に
格差社会の軋轢と拭い去れない
差別意識により混沌の悲劇に落とし込んでいくのが、コーエン兄弟を思わせて熱い。
また邦題の半地下という面が最後にはパラサイト へと変貌していく、
半地下からさらに地下に潜りパラサイトとなるのも面白いなぁと。

他にも多数のメタファーがあって、奥深い映画だった。

エピローグで語られる叶わない夢

映画は輪廻のようにまた1人地下世界に一家の長が本物の寄生虫に成り果てる。
それに対するモールス信号のネタにて、父から子の一方通行の手紙が成立。
それに対して、ちょっとしっとりした邦画らしささえも感じてしまうが、
ギウの届かない手紙が語られて映画は終わる。
あたかもそこに辿りつくかと思いきや、
それは絶対的に叶うことはないことは明白だった。
ギウの人生が今後どんなにうまく行ったとしても500年以上はかかるという。
ラストシーンはまさに叶わない夢を見る
韓国の若者のメタファーか何かなんでしょうかね?
いや現代社会の若者全てへのメッセージなのかも。

こりゃYouTuberで一攫千金がもはや正攻法の時代なのでは。。。

キム家もパク家も作り物

これはびっくりした。
あるときメイキングシーンみたけど、
キム家の住んでいた街、あれ全部セットなのね。
実際に洪水も起こしていて、凄すぎる。
また素晴らしい構図が多数あったパク家もセット。
なんだかんだプロダクションデザインなどもすごいハイレベルの映画だったよね。

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hisSCORE

・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9/10
・映像のアプローチ 9/10
・映画の美術面 10/10
・キャラクターの魅力 8/10
・音楽 8/10
・上映時間と個人的趣味 9/10

90点

なんだかんだダヘのトラウマとかやばそう。
恋した人が身分偽ってたし、父親死んじゃったし。
まぁポン・ジュノ作品は少女が辛い目にあうという一貫性があるようです。

正直ね。評価しようにも当事者の気持ちがわかるんだよな。

このキム家の行い。
個人的には人ごととは思えない。
自分も結構貧乏出身だって、20代ぐらいから実感した。
それまであんまり考えてなかった。
収入とか多分一般家庭の半分ぐらいなのではないか?ってようやく気がついた。
よく考えたらお金ないから避けたこと結構あったし。
お金がなくて生き急いだこともあったなって。
それに今自分はその名前を捨てて、他者の家に婿に入って、
そこで色々もらってて、
正直自分もあんまりキム家と変わらないなぁと。
貧困層からは脱却はできたかもしれないけど、
いつ何がどうなるかわからないなぁとも。
だからね。見終わった直後はこの映画の描いていることを見て、
それを評価するアカデミー賞とかってどういう思考なんだろうか?って思ったし、
この映画を見にきている人は何を思ってこの映画を見ようと思って、
単純に面白かったなぁって思ってる人って、
どんな育ちの人なんだよって思ったりして、戸惑ったりした。
ある意味自分の話のように思えたとこもあったし。
ただ映画製作者たちも下積みかあって、
今でも誰かに支えてもらって寄生している人たちも多数いるのかな?って今では思えてきて、
そういう共感と、現代社会への警報と近年の映画作品の風潮を考えて、
今作のメタファーの多数のあるシナリオと映像とギャグ要素のバランスが
やっぱり非常に優れいてたなぁと改めて思いました。

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