★この記事をまとめるとこんな感じ★
製作
1975年アメリカ映画
監督
ミロス・フォアマン
・アマデウス
・マン・オン・ザ・ムーン
・ヘアー
・ラリー・フリント
出演
ジャック・ニコルソン
・チャイナタウン
・ディパーテッド
・恋愛小説家
・バットマン
ダニー・デヴィート
・バットマン リターンズ
・ツインズ
・ローズ家の戦争
・鬼ママを殺せ
クリストファー・ロイド
・バック・トゥ・ザ・フューチャー
・アダムス・ファミリー
・ロジャー・ラビット
あらすじ
1963年のアメリカの西海岸の北部オレゴン州。
38歳ランドル・マクマーフィー(ジャック・ニコルソン)は5度の暴力事件、刑務所でも問題を起こし、
精神鑑定を偽装して締め付けのない精神病院にうつってきた。
しかし精神病院では、婦長のラチェッドにより厳格なルールが定められており、
自由とは無縁の質素な生活が待っていた。
マクマーフィーはそれに反発し、仲良くなった患者たちと反抗をするようになる。
鬱屈した生活を送る患者たちはマクマーフィーの奔放性に影響され、楽しい日々を過ごしていくが、
マクマーフィーは精神病院から脱走することを企てており、精神病のふりをしているインディアンのチーフとともに抜け出すことも考えるが、
徐々に患者たちに情が移って来たマクマーフィーは人生の楽しを享受しようと婦長と対立しながらも、犯罪に近い行為を繰り返し患者たちに外の世界の面白さなどを魅せていくのだが。。。。
2018年5月22日Blu-ray鑑賞50本目
感想
10年前に一度DVDで見た映画。
当時は、ジャック・ニコルソンの演技に魅了されたのと、終盤のあのおぞましい展開に衝撃を受けたが、そのあとのバスルームの壁のシーンが同様にインパクト強すぎて、とりあえず面白かった記憶がある。
この度10年経ったし、そもそも書いた記事が紛失したのも合わさって、
ディスクユニオンで中古未開封で販売していたスチールブックを購入して鑑賞。
本作も映画データベースサイトIMdbでTOP250の高評価を得ている伝説的な作品。上位20位以内に入る最高評価の映画の一つ。
ジャック・ニコルソンのキャリアのピークの1つ
1976年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞を受賞。
ジャック・ニコルソンにおいては、演技面において本作がピークとも言える。1969年の『イージーライダー』で注目されながら、
翌年の『ファイブ・イージー・ピーセス』で再度ノミネート、1973年でカンヌやニューヨーク批評家賞で『さらば冬のかもめ』が男優賞を受賞し、
翌年の『チャイナタウン』で英国アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞したが、アカデミー賞では受賞できず、1976年の本作でようやく受賞に至った。
その後も『シャイニング』など伝説のホラー映画に出演したり、助演として活躍したり、『バットマン』でのジョーカーの好演が評価されたりと、
10年周期ぐらいに賞レースを賑わせる偉大な映画俳優。
2010年以降は映画への情熱が失せてしまったとのことで、引退状態に2018年には『ありがとう、トニーエルドマン』の続編出演が噂されたけど、
降板してしまったよう。惜しくもあるし、中途半端にカムバックされてもなんか嫌だし、往年のブロックバスター映画での俳優再生工場に巻き込まれるタイプではないけど、優しいおじさんより凶悪の根源みたいなのがぴったりすぎると思うので、そういう変な映画でもう一度見たいなとか。。。
忘れちゃいけない人間のクズのマクマーフィー
10年ぶりに再鑑賞して気がついたのだが、主人公のマクマーフィーって人間のクズだわ。
社会不適合者すぎ。
5度の暴行時間に加えて、英語のWikipediaには15歳の少女をレイプって記載してあるし、相当な重罪の犯罪者じゃねぇか。
しかも刑務所でも問題を起こして、精神患者のふりしてればいいし、
あわよくば脱走できる可能性がある精神病院に行くという極悪の極み。
それを主人公にしているこの映画なかなかすごいし。
そうなったら本当はギャングとかの人なのかな?と思ったら別にそうでもないし、馴染みの娼婦みたいな友人もいるわけで、
近年の映画ではなかなか見かけないドクズ。いやクズすぎる。
いわゆるホワイトトラッシュとかの成れの果てなのかもしれないが、微妙な田舎のオレゴン州だからこそありうる話なのか?
ディストピアSFのような統制社会と戦うマクマーフィー
移ってきた精神病院が思っていた場所と違い、鬼婦長によって投薬や厳重なルールによって統制された場所だった。
もともと精神に異常のある人が多い場所で、そこで人間の尊厳がどうとかよりも動物の飼育に近くなった実情を見た本当は異常者のマクマーフィーが立ち上がり、ディストピアSFの反乱者のごとく、統制された管理社会に暴力ではなく、一人一人の心への訴えかけで、戦って行くという何という素晴らしい話か。
そこからそれ自体にも反対の人もいることや、精神病院で行える電気ショック療法など
現実の世界とは違う異常性が映画としてのフックにもなり、
それと立ち向かって行くジャック・ニコルソンの熱演に魅了されて行く。
『カッコーの巣の上で』10年ぶりに再鑑賞。当時は精神病院を舞台に自由を取り戻すために感情のまま振る舞う男の切ない物語だったなぁ程度だったけど、今みると統制社会と無能な国民とそれに立ち向かう男が敗北するというアメリカン・ニューシネマの象徴のようなダークな映画だな。 pic.twitter.com/cduUyazfwU
— his0809@俺はPS4で映画を見る (@his0809rx78) 2018年5月22日
アメリカン・ニューシネマの代表作
統制社会VS自由
メタ的な部分になるが、本作の本質はここにあるのではないかと思う。
本来ならSF映画で象徴的に描かれることだが、人間ドラマのヒューマン映画で本作はそれがメタ的に描かれ続ける。
終始思考低下を導き統制しようとする婦長と常に自由を求め自身の欲望のままに生きるマクマーフィー。
対立する2人とも堕落していて、片方は独裁者だけど危険から守ろうとしようとした結果の堕落、それに対してマクマーフィーは犯罪者。
結果的には、マクマーフィーがひと時の自由を得るが、その自由に目的を忘れ理性をなくし、疲れ果てたマクマーフィーは
短慮さで敗北してしまい、映画は衝撃な展開へと突き進んでしまう。
善と悪を考えるとどちらもギリギリで、ただ弱い立場ながら戦おうとする姿は搾取されるものとして共感してしまう、その彼が喜びを与えも負ける姿に当時のアメリカの虚しさがあるのかもしれない。またチーフというインディアンは現代だと色んな人に置き換わるだろうな。
ここで描かれる統制された社会の勝利。
でもこの反体制的な人間の心情をつづった作品として、本作はアメリカンニューシネマの代表作であり、
この敗北こそがいわゆるニューシネマ的な重要ポイントである。
アメリカン・ニューシネマが求められる時代性
アメリカン・ドリーム的な「観客に夢と希望を与える」往年の作品の終焉とスタジオ映画としてのルールの崩壊などで、映画事態の陰りが起き、
また背景にあるアメリカのベトナム戦争での泥沼化などで、アメリカ政府の体制に対して、反体制的な人々の思想を映画自体にも反映させるのだが、
結果的に敗北してしまうというまさに当時の人々の心情を映画に反映されている。
まぁまた90年代に向けて映画はシリアスから大規模ブロックバスターのスタジオ大作映画にシフトして行くんですけどね。
演技合戦映画
精神患者を演じる俳優たちは、名脇役達が多い。
本作は健常者が異常者を演じる。
実際精神病院にいったことないが、その再現度は多分高いのではないかと思う。
キャスト達の情緒の不安定さや挙動不審、変なタイミングでの笑顔など、演出した監督と演じた俳優すごい。
その中にいる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でお馴染みのドクことクリストファー・ロイドが狂犬っぷりを披露。
めちゃくちゃ怖い。しかしもともとドクも反体制的でびっくりするぐらい過激な人でテロリストにプルトニウムの強奪を依頼して、
それをさらに奪うというキレっぷりを披露していたし、そういうやばい役がすごい上手い俳優さんだったなぁと改めて思うとわかるが、本作の彩り具合は異常。
また最終盤のジャック・ニコルソンとルイーズ・フレッチャーのやりとりは、禍々しい現実との地続きを感じさせる狂気があった。
野獣化するジャックと本当に殺されそうになるルイーズが演技なのかどうかよくわからなくなる。
その後のジャック・ニコルソンの廃人ぷりもやばい。
カッコーの巣って精神病院の蔑称なんだよな。
邦題は巣の上でだけど原題だとOne Flew Overで精神病院からの脱出で、その1人が誰なのかが注目なのと原作小説の主人公がチーフだったというわけで、映画化に置いて大幅にアレンジが効かされており、アカデミー賞脚色賞は納得。
残念な邦題のひとつなのかもしれない。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 8.5/10
・映像のアプローチ 8/10
・映画の美術面 7/10
・キャラクターの魅力 10/10
・音楽 9/10
・上映時間と個人的趣味 9/10
88点
自由を求めた無教養の敗北という生きている上で誰もがぶちあたる壁を描いたような映画。
いろんな意味ですごい映画。
でも10年に1度ぐらい手に取るぐらいでいいのかなとおもう。
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