監督
クリント・イーストウッド
出演
ブラッドリー・クーパー
俳優だったのに、今じゃオールジャンル何でもそつなく映画を監督する映画監督のクリント・イーストウッドが監督したのは、アメリカで最大の人数を殺したスナイパーの半生。
主人公を演じるのは、『ハングオーバー』で色男として出てきたのに、デビッドOラッセルとかに演出されて、何でもそつなくこなせる俳優になったブラッドリー・クーパー。
イラク戦争を通して描かれる、変わってしまったアメリカ。
主人公は、アメリカの中部に生まれた生っ粋のアメリカ人。
父に番犬になれとたくましく育てられた。
そんな彼は青年になってカウボーイとして気ままに生きていたが、アメリカ大使館が襲撃されていることを見て、心の中の愛国心、番犬としてのアメリカの心が、彼をアメリカ米軍の中でも超絶強い人が養成されるネイビーシールズに入隊する。
そして9.11を機会に起きる、アメリカのイラク戦争。
イラクへと赴く彼は、スナイパーとして、多くのアメリカ兵を守るのだったが、その腕を買われる中
、彼は多くの命を奪っていく。
イラク戦争の中を生きる一人の男を通して、今のアメリカが抱える一つの社会問題でもある、帰還兵たちが生まれるまでの過程が理解できる。
強く偉大なアメリカを信じ生きてきた愛国者たち、彼らが戦場で見たのは、正しいことが何なのか?常識を超えたイラク戦争の実態を通して、そして失っていく友たちの命。
クリント・イーストウッドは相変わらずジャンルや主張に偏ることなく、ただカメラを通して物語を紡いでいく。
淡々とも言える彼のあまりにも写実的なスタイルに、監督としての能力に疑問さえも感じてしまうのだが、企画があまりにも面白いため、そんなことが全く気にならない。
ネイビーシールズの最強のスナイパーの映画ってだけでも面白いのに、その彼が戦争によって、徐々に人間としてぶっ壊れていく様もすごいわけだが、これが確かに現実に起きたことであり、イラク戦争の無意味さを写実的に捉えている。
強く偉大なアメリカは無くなってしまった。
戦争映画としても面白く、なかなか惨たらしいのも良い。
ただ序盤こそテンポを遅くし、濃密に描いていたのだが、中盤からは駆け足気味に描き、終盤はテレビゲームのような戦争シーンが描かれる。ちょっと唐突すぎて笑ってしまった。
ゲームだったらプレデターをぶっ放していたよ。
こんな状況でスナイパーとかきつすぎる。笑
またあまり、映画見た人は言及しないが、主人公がネイビーシールズに入るという展開が物語る、ドを過ぎた愛国心ぶりは言及したい。
あんなクソみたいな訓練を乗り越えるには、それ相応の固い意思がないと無理だろ。
ちなみに本作を観る前に『ローン・サバイバー』を鑑賞しておくと、より一層、本作の主人公がすげえやつだってわかる。
また特にアメリカの保守派の人は歓喜するし、最後の最後に涙を流すだろうな。
特に老人。
でも主人公は完全に犠牲者なんだよな。
映画のオチの切り方も良かった。
コーウェン兄弟だったら絶対映像化するのに、あれをああするのは、イーストウッドしかできないと思う。
あたその後のエンドロールを無音にするのは、自分は英雄への黙祷のように思えた。
よくいう日本男児みたいな考え方のアメリカの愛国者みたいな映画なんだけども、その権威の失墜を感じさせる。
『グラントリノ』で移民問題で、アメリカは変わってしまったというイーストウッドはまたも、アメリカの変貌をフィルムに収めた。
得点
物語の面白さと上映時間 9/10
映画の奥深さと世界観とオリジナリティ 9/10
キャラクターの魅力 9/10
監督の映像演出と印象的なシーン、映像を使った話の描き方 8.5/10
音楽 8/10
俺の趣味 9/10
89点
コメントを残す