「初恋」
愛すべき隣人のスパイダーマンの短編コミック。
概要
バレンタインデー、それはスパイダーマンであるピーターには特別な日だった。
毎年、ピーターはある場所に一輪の薔薇を備えに行く。
これは、一つのラブストーリー。
大学生になったピーターはある日、一人の女性と出会う。
彼女の名はグウェン・ステイシー、ブロンドで明るく、そしてミステリアスだ。
・ピーターとグウェンの出会いを再構成した一冊。
スパイダーマン初期の30話後半から40話までの話を再構成して、当時の絵のタッチを現代的に再現して、短編コミックとしてまとめった作品が本作「スパイダーマン:ブルー」だ。
・感想
読んでいて、あんまり面白くなかった。
初期の頃の物語を再構成している為に、ストーリーは現代と比較するとどこか間抜けで、単調だ。
一つの着地点に向けて、話が練られて行くような近年の物語とは違い、1話ごとにヴィランたちが緩く出てくる。
また絵のタッチもどこか古臭く、なんだか違う。
しかしこの物足りなさこそが、制作者たちの狙いであることを読み終わって、知るのであった。
本作は、過去へのノスタルジーに満ちた作品で、全てがリスペクトと驚きの中を漂う一冊であった。
このなんともない出会いが、終局のモノローグとMJとピーターの現代と過去の境遇の差を噛み締めることで、このなんてことのない間抜けな物語が、一気に遠い追憶の彼方のような物淋しさを感じさせる。
懐かしき、ゴールデンエイジを思う、そんなアメコミの歴史を皮肉ったような厚みが本作には内包されているように私は思った。
なので、読み終わって、もう一度本作を読み直してみると、そのノスタルジーが胸を締め付けることになるのだった。
あまりにも自由奔放なMJの現代とのギャップがなお胸を締め付ける。
でもピーターなんでそんなにモテるんだ?
とりあえず、アメコミ上級者向けだと思います。
作家さんは、『ロング・ハロウィーン』や『ダーク・ヴィクトリー』『スーパーマン・フォー・オール・シーズン』の人たちです。読み終わって『スーパーマン・フォー・オール・シーズン』読み直して、この人たちの世界観の濃さと脚本の厚みに感嘆しました。
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