あくまでも作り話。でも壮大な美術と素晴らしい音楽と執念
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに:ご訪問ありがとうございます
製作
1984年アメリカ映画
信頼できない語り手はかくかたりき
監督
ミロス・フォアマン
・カッコーの巣の上で
・ラリー・フリント
・ヘアー
・マン・オン・ザ・ムーン
キャスト
ネタバレ あらすじ
2025年11月9日4Kレストア版劇場鑑賞
2025年48本目
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概要:アカデミー賞受賞作品が日本でも4Kレストア版劇場公開
1985年のアメリカのアカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞(サリエリ)・脚色賞・録音賞・美術賞・メイクアップ賞・衣装デザイン賞などなどを受賞した1984年を代表する最高の映画の一つが、2025年2月にアメリカでレストアされて4KUHD版が発売。日本では2025年12月時点で発売さらに、発売予定はされていないが、公益財団法人 川喜多記念映画文化財団により期間限定のリバイバル上映のイベント「午前十時の映画祭15」で上映が決定し、日本公開。

映画を見ていると史実かと勘違いするが、舞台により大幅に脚色された作品で、サリエリとモーツァルトは仲が悪かったらしいが、現実というわけではなく、モーツァルトをサリエリが殺したり破滅させようとしたというのは事実ではないので鑑賞後、この話を史実として人に伝えてはいけないという点は注意したい。
監督は『カッコーの巣の上で』でアカデミー賞監督賞を受賞したミロス・ファマン。今作で2度目の受賞をした。
2002年には今作のディレクターズカット版も公開され22分長い3時間版となっており、そのシーンにしか出ないキャラクターもいる。

80年代ということで現代なら背景にCGを合成することができない時代。モーツァルトさんとサリエリさんはオペラを作る人たちだったので、映画内はその再現もあり『後宮からの誘拐』『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』のワンシーンとその会場が劇場が美術で作られ、衣装も作られている凄まじい予算感の映画。
冒頭から生身で人を半分担ぐような馬車と、精神病院でのフルチンおじさんたちの群れの物量術。プラハの映像など、豪華絢爛な映像が潤沢に描かれるとことん凄まじい作品。中盤の『ドン・ジョヴァンニ』では壁を突き破る黒い巨神(父のメタファー)が登場したり(ポスターのジャケット)と映画の中の舞台のやってることがめちゃめちゃでやばい。シカネーダーさんの大衆向けの舞台では小人症の人が多数登場したり、舞台の背景の紙がビリビリに破れたり超巨大な馬の屋台が出てきたりと大盤振る舞いの美術っぷりに唖然。終始、無限の予算で豪華絢爛で奇奇怪怪な世界が描かれており、前人未到の境地にたどり着いた映画の一つと思えた。もちろん自分が鑑賞した回も勿論満席。
結果的に本作はこの類稀なる映像作品として北米の映画データベースサイトのインターネットメディアデータベースことIMDbではTOP250にランクインし、総合76位という超高評価映画の一つです。
感想:信用できない語り手の魅力
と今作はイタリアの作曲家のサリエリを通して描かれるモーツァルトの半生という作品。少年時代からその才覚を発揮し、サリエリからは音楽の神と等しき存在と認識されていたが、初対面の時からその下品な振る舞いと同じ才能を持つものに対する冷笑的な振る舞いに、神に等しくない人格を見たサリエリは、彼の作った作品を簡単なアレンジですぐさま多くの人を惹きつけるその才能の差に、嫉妬と憧れに狂い、彼を破滅させることで、自分自身に彼以上の才能を与えなかった神への復讐をしようと決意するというなかなか狂った人。冒頭から自殺を試みたりとモーツァルトの死後さらに精神をすり減らしたが、そんな彼の告白、嘘か本当かわからない、もちろん史実ではないので嘘だが、彼を描かれるモーツァルトの天才さとそれを滅ぼそうとするサリエリ、だけどもモーツァルトの作品の魅力ひとつひとつを理解して感動してしまうという矛盾と葛藤のバランスがとても面白い。その心情を見事に演じたF・マーリー・エイブラハムはアカデミー賞主演男優賞を受賞。モーツァルトを追い詰めて過労死に導く恐ろしい執念と最後まで彼の才能に魅了されるというバランスが凄まじく面白い。この天才たるモーツァルトが最後の最後まで金持ちになれずなもなきものたちの総合墓地に埋葬される圧倒的なサリエリの画策の勝利ではあるのだが、後世に残る楽曲は圧倒的にモーツァルトの曲の方が有名で、最後の最後には誰でもない人物になるのだが、彼自身を誰しも捌くことができないし、彼の語りの虚構とそして彼自身の抱える永遠の苦しみは才能のない皆全てが持っていて、サリエリの凡庸さというのが真に迫る。本当にサリエリはモーツァルトを破滅させたかったのか?神とサリエリという謎の葛藤もあり、神がモーツァルトを奪ったのか?全てはサリエリの都合のいい物語であり、過労死させたかったのか?それとも自分の影響下にある彼に第二の『ドン・ジョヴァンニ』を作らせたかったのか、サリエリの真の心境はわからないというのもまた面白い。
ここがグレイト:音楽がいい
と今作随所にモーツァルトの楽曲が流れるので音のいい劇場で鑑賞すると満足度が高まるし。舞台のハイライトも描かれてバックグラウンドムービーとしても機能性は高い。この音楽体験としても映画の価値はあるし、自宅でUHDなどの高音質なディスクを流すのも優雅でおすすめ。
ここがやばい:やはり映像がすごい
思い返してもまだ見ぬ凄まじい映画とはあるのだなぁと感激。今作無数の蝋燭が照明代わりで凄まじかった。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9.5/10
・映像のアプローチ 10/10
・映画の美術面 10/10
・キャラクターの魅力 10/10
・音楽 10/10
・上映時間と個人的趣味 10/10
99点
モーツァルトの名前かっこよすぎ。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトってなんだよ。
サリエリの俳優さんの演技やばすぎだがモーツァルトの、え?こんな人なの?というあの高笑いの感じと下品な顔つきの造形が同じくらい見事。何故かサリエリと同格の主役となってるが、助演男優賞でノミネートされていれば票が割れずに受賞したんじゃないかなぁと思った。その俳優同士の悲しき対立構造もまた本作の面影を感じる。そもそも『アマデウス』というモーツァルトの名前を冠しているのにサリエリの映画っていうミスリードがこれぞ映画っていうやり口で偉大だなぁと改めて思う。日本版のUHDお待ちしております。
音楽家の破滅ものとしての始祖的な作品とも考えられるか。
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