「僕たちは、外のセカイを知らない。」
2009年イラン制作
STORY
音楽が好きなアシュカンとネガルは、イランの宗教状閉鎖的な音楽の状況に苦渋の日々を送っていた。
ユニットを組んでるアシュカンとネガルは、ライブをするためにイギリスに行くことを画策するのだが、知人の頼りで知り合った、仲介屋のナデルに「任せておけ。」と言われ、全てが順調な気がしていた。
二人は、一緒にイギリスに行く人やバンドメンバーを探しに、イラン中をナデルと共に進むが、そこまでイギリスに行くことに皆、賛同はしてくれなかった。
イギリスへ発つ日が近づく中、ビザの不正所得を頼まれていたナデルだったのだが…。
2010年9月9日鑑賞
感想
ペルシャ猫を誰も知らない。
すっごい良いタイトルだと思う。一見したら、「猫についてのお話」かと思うけど、ペルシャ猫というフレーズが「イラン」という国の暗喩だというのは、なかなか才覚のあるタイトルだな。
もともとペルシャ猫っていうのが、イラン発祥だからとかで、「皆イランなんて知らない。」という儚いタイトルだ。
本作の描いていることは、イランという国。
イランという国が如何に、ロックに生きることが適していないかということ。
イランは宗教上、CDを出すのにも国の許可がいるし、ライブも許可が無いと出来ない。
ばれたら警察に逮捕されるという衝撃のセカイだ。
そんなセカイで自分の愛するものと共に生きようとする人間を描いた、ロックな映画が本作だ。
本作は一応作り話ではあるけど、登場人物は実在する人で、本当に命がけでバンドをしているし、その環境は正に命がけの状況。主役の二人はガチで今はイギリスにいるとかで、監督は国外に出れなくなったという衝撃の裏事情の数々。
逆に本作の中身は、かなり異質で、ロックをする為に命をかけたカップルが、仲間を求め、色々な場所を巡るのですが、そこで描かれるのは、音楽のジャンルの豊富さ。(笑)
ヘビメタもあれば、グランジもある伝統音楽もあれば、インディパンクもある、それを自分たちの証明のように皆さん演奏するわけ。しかも本物の人たちがガチで演奏するから演奏シーンはとてもカッコいいです。最近日本でやってる謎の音楽映画より大部カッコいいです。
そんで演奏中に何故か、イランの町並みや、首都界隈の人の営みとかの映像が編集され構成されて、本作はイランという誰も知らない音楽文化を描くのと同時に、イランという社会もさらりと描いている。(笑)
正直言って、イランの音楽文化は日本の音楽より全然上でした。(笑)
オアシスのノエルあたりが確か「ロックとは辛い世界情勢の時素晴らしいものが生まれてくる」とか言ってた気がするんだけど、イランの人達は逮捕されながらも弦をかき鳴らしたりしてるんだよ。閉鎖的なセカイの中やりたいこと頑張って、うちらの住んでる世界なんて、ものがありふれ過ぎちゃって、最近の音楽なんて色んなのがミックスされちゃって、どれも特筆されていないんじゃないかとさえ思う。
だから負けて当たり前かななんて思った。
そんな文化紹介映画!!かと思いきやラストは想像を絶する展開になるわけですが、それこそが、生半可ではない閉鎖的なセカイを象徴しているかとも思える。
自分はこの映画結構好きですね。ラストは本当に驚いたけど。
セカイにきっとロックをかき鳴らしていた良い映画だと思います。
ヒロインが可愛くないようで、可愛いそんなところがとても萌えます。
得点
8点
それでもペルシャ猫は誰も知られない。このタイトルの象徴は永遠と埋まることのない距離のようで、このフレーズが心から離れません。
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