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☆ザ・マスター 2013年37本目「変態映画の申し子PTAの最高映画の一つ。」☆92点

「3D映画などというものは消えてなくなってしまえ」

『A Little his REDEMPTION.』自称映画オタクの映画感想部~season 7~-ザ・マスター
アメリカ2012年アメリカ映画アメリカ

あらすじはこちら。
感想
2012年のポール・トーマス・アンダーソン監督、脚本、製作の映画『ザ・マスター』を見た。
実在する新宗教であるサイエントロジーをモデルにポール・トーマス・アンダーソンが独自に生み出した脚本による映画化。
ちなみにサイエントロジーは、全世界に信者がいる優れた団体であり、俳優のトム・クルーズやジョン・トラボルタは熱心な信者であり、後者は、サイエントロジーの教祖の主張である人間は宇宙人に洗脳された形跡がある?というような考えをもとに映画を製作し(『バトル・フィールド・アース』)重要な役を演じた。
と日本にも信者の数は多いので、あまり口に出したくないのだが、その教祖のもとに現れた1人の信者との謎の友情を描いたのが本作『ザ・マスター』である。
ポール・トーマス・アンダーソンって素敵。
まず感想を書く前に、映画好きなら褒めたいポール・トーマス・アンダーソン。略してPTA。
正直言えば、日本の学校とかにいるPTAが絶対怒り狂うような常軌を逸した題材を素晴らしいビジョンで軽やかに映画化してくれるのがポール・トーマス・アンダーソン。この時点で皮肉が成立しているから頬が緩んでしまう。
ポール・トーマス・アンダーソンは、監督2作目の『ブギー・ナイツ』で、猥褻な成人映画の大スターになった男の自伝的な物語を監督、脚本を手掛けたのだが、これがものすごく面白い。3時間ほどもある映画なのだが、すごーくテンポもよくすごく卑猥で、ぶっとんでいていて刺激的で楽しくて、鮮やか。
その成功をしてから彼は、自分のやりたいことを追求する映画監督になり、どの作品も非常に個性的でありながら、評論家に絶賛され、年度末の賞レースには必ず彼の作品が絡み、また賞を獲ることも非常に多い。
近年で言えば、先日『リンカーン』で再度アカデミー賞を受賞したダニエル・デイ・ルイスだが、彼はポール・トーマス・アンダーソンの映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でアメリカの石油王という金と欲望の申し子を演じ、そのゴジラの如き、傍若無人さで、理解するこのできない人間を完全に演じきり、見事にアカデミー賞を受賞した。更に名言として『ドリンク・マイ・ミルクシェーキ』という素晴らしい言葉を生み出した。
そんな変態映画の申し子とも言える、ポール・トーマス・アンダーソンの新監督作品が、『ザ・マスター』である。
流石ポール・トーマス・アンダーソン、またもタブーに突っ込んでいった。
タイトルからすると、主役は教祖のように思えるのだが、主役は、後に弟子となる男、退役軍人のフレディ・クエルだ。
そのフレディ・クエルを演じるのは、お騒がせスターで、元アルコール中毒のホアキン・フェニックス。そういえば、ドキュメンタリー映画でラッパーに転職するとかいうのがあったが、それがどっきりで、色んな大物俳優に迷惑をかけたらしい。
ホアキン・フェニックスがやばい。
しかしホアキン・フェニックス。これがまじでやばい。
とてもこれまでのホアキン・フェニックスとは違う。個人的には何かしらの賞を得るべき役作りをしていると思う。
まずフレディ・クエルという男が、前述の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の如く狂った男であり、傍若無人な男である。
退役軍人なのだが、そもそもアルコール中毒であり、さらには日々セックスのことしか考えていない、まじで関わりたくない人間である。
それをホアキン・フェニックスは体当たりで演じており、背中も肩も丸く、異様にやせこけており、喋り方も片方の口をつり上げて喋って、表情が固い。
肩幅が異様に狭く、顔よりも狭く見え、何か重い病気を患っているようにしか思えない。歩き方も異形なのだ。それをスクリーン上に存在させることに成功したホアキン・フェニックスとポール・トーマス・アンダーソンの二人は、映画の中身を判断する前に偉業を成し遂げていると言っても過言ではない。非常に印象に残るキャラクター造形は、それだけで価値があると思う。
そして相手役としては、ポール・トーマス・アンダーソン作品では常連のフィリップ・シーモア・ホフマン。更には、その敬虔な信者というよりは、ビジネスパートナーとも思える教祖の冷酷な妻
を演じるエイミー・アダムス。
この三者はどれも常軌を逸している。エイミー・アダムスはまさに不気味で、アカデミー賞にもノミネートしていたが、裸で座っていたり、ぎょっとカメラを覗いたり、更には唐突にテコキでフィリップ・シーモア・ホフマンを逝かせたりする。怖い。個人的には、もうちょっと体当たりして欲しかったとも思う。
映像について。
また技術面を言えば、本作は70mmのフィルムで撮影されたようだ。
つまりIMAXと同サイズになる。そのおかげか、全体的に映像の構図が広く、映像にパワーがあり、見ていて気持ちいい。日本では勿論IMAXで公開してなどいないが、海外だとIMAXシアター上映している場合もあったのかもしれない。それはそれで羨ましい。
確かに静かな映画だが、映像の美しさは全体的に非常に高かった。正直全く退屈でなく面白かった。
見応えのある映像が多かったと思う。商業的にもキツいと思うが、本来は大スクリーン映えする映画なのだ。それについてはIMAX野郎のクリストファー・ノーランも大興奮。更には、同じグレー路線の題材を好む、園子温監督もポール・トーマス・アンダーソンを絶賛していた。
しかしポール・トーマス・アンダーソンは、脚本も面白いのに、映像も面白いなんて、ほんとうにすごいクリエイターだ。
映画の中身に突っ込んで行く。
正直筆者からすれば2013年に見た映画の中では、トップクラスに面白かった映画が本作だ。いや多分ポール・トーマス・アンダーソンの力量にノックアウトされたんだと思う。
題材もカルト宗教を題材にしたグレーな内容なのも好みだし、更には、映像の技術、脚本の面白さ、俳優の演技。映画に必要な面白さは全て網羅している。
時代も1950年代というのもなかなか面白い。気がつかなかったがほとんどを長回しにしている印象もある。それを露骨に感じさせないあたりが完成されている。
題材はカルト宗教の話しではあるが、一概にカルト宗教を悪として描いているわけではないのには、驚いた。確かに鑑賞していて非常に怖くはなるのだが、確かに宗教で救われている人間もいるのだ。それは思い込みなどでもあるわけだが、ビジネスの前に、人を救いたいと思う気持ちが確かにあり、それが不正ではあるものの、それを拠り所として救われた人は確かにいる。
ただこの映画の悪いところは、少し金銭のやり取りの描写が少なく、マイルドにしてしまっており、警鐘としての能力は少し低い。
だが、フレディ・クエルを通して、ペテンであることを体現させているところが、映画作家として境地に達している。
また根本的には、教祖であるドッドは、純粋で陽気、「笑顔こそがなによりだいじ」というような快活な人間なのだ。また信仰の薄い信者は「彼はとてもいい人だ。」その人と人との印象でつながっているという描写があり、むしろ一番危険なのは彼の側近とも言える後妻なのかもしれない。
まぁー本人も自分がペテンをしていると実感こそはしているが、それを内面にしまっているのだが、それでもフレディ・クエルという人間と出会い、感化されたドッドが彼を救えるのは私ししかいない。という宗教を分離した善意の話しだと筆者は感じ、結果的にフレディ・クエルは何も変わらないように見えているが、確かに人生のほんの一部は変わった。ドッドは確かに救っていた。
しかしフレディ・クエルは最後にペテンであることを察知し、それ以上にお互いが人間として惹かれ合っていた事実だけが、残り、光輝くのだ。
私が言いたいのは、この映画は一見すると、教祖と弟子の信仰の物語に見えるが、そうではなく、もっと純粋な、男と男の出会いを通して、カルトな教えという色眼鏡がありながらも、お互いを信じ切磋琢磨しようとした人間ドラマであり、人間讃歌であったのではないか?と思う。
だからこそお金を扱った描写を少なくしていたのではないか?と思う。
むしろ本作の魅力は、多角的に物事を見ることが出来ることだと自分は思う。
どの面から見るかによって主張は変わってくる、また色々な事象を説明している。
フレディ・クエルは本当にどうしようもない男で、絶対係わり合いたくない、それでもドッドは彼を好み、導こうとした。それは色々な視点からものが言えるが、自分としては、ドッドはフレディを導くことで、自分が本来したかった純粋な何かを取り戻せると思えたのではないか?と思った。
それは結果的に成功したかに思えたが、それ以上にドッドはフレディを愛しており、結果的に喪失を得た二人は、ペテンというイデオロギー、ダメ人間というイデオロギーに従うように見え、そこでドッドは二人を本来いるべきだった存在と例えたように思えた。
また自分的にはフレディは映画の最初から最後まで宗教など信じておらず、ただドッドという人間を信じたと思う。それを信者というのかは難しいが、それを弟子というよりは、他者を信じる、友人の如き立場だと思う。むしろ二人はまさしく愛し合っていと思う。
しかしこれがどこまでがポール・トーマス・アンダーソンの創作なのかは、非常に難しい。
またこの映画がどうなっていくかが、全く読めなくて、びっくりした。どこで終わるのかもわからなかったし、どうなっていくのかも分からず。すごくいい気分だった。
メモ得点メモ
92
見終わってごちそうさまという気持ちになった贅沢な一品だった。音楽もレディオ・ヘッドのメンバーが担当しているけども前回と違い優雅な音楽が多く、緩かった。
また2D映画でここまで素晴らしい映像を実感できるのだから、3D映画などというものは消えてなくなってしまえ。アカデミー賞が獲れなかったのは、題材があまりにもグレーだったので仕方ないと思う。しかしこの映画は凄かった。ぶっ飛んだ映画だ。

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