『バットマン:トゥー・ワールズ』感想:一言でいうと
薄い。正直、1,100円は高い。でも、自分にとっては初めてコミックリーフ文化に触れた一冊でもあったので、買った価値はめちゃめちゃありました。
『バットマン:トゥー・ワールズ』は、通常のバットマンとアブソリュート・バットマンの短編を1話ずつ収録した記念コミック。2人の共演を期待すると肩透かしですが、日本語でこの形を出してくれたことには「翻訳してくれてありがとう」という気持ちもあります。
以下、短編2話の結末に触れるネタバレありの感想です。後半では、自分でもよくわかっていなかった2011年以降の『Batman』本編と、別世界の『Absolute Batman』の関係も整理します。
発行
2026年9月19日アメリカ
広告
『バットマン:トゥー・ワールズ』とは? Batman Day 2026で世界デビューした一冊
『バットマン:トゥー・ワールズ』は、2026年9月19日の「Batman Day 2026」に合わせてDCコミックスから世界同時発売された新作ワンショットコミックです。
通常のDCユニバースで活躍するバットマンと、別世界「Absolute Universe」のアブソリュート・バットマンをそれぞれ主人公にした完全新作の短編を1本ずつ収録。2人のバットマンが直接共演するクロスオーバーではなく、「2つの世界のバットマン」を一冊で楽しめる2026年のBatman Dayの記念コミックとなっています。
そして面白いのが、日本でも同じ2026年9月19日にフェーズシックスから邦訳版が発売されたこと。
こちらは約20ページ、価格は税込1,100円。一般的な邦訳アメコミの単行本とは違うかなり薄いミニコミックで、Batman Day 2026の記念邦訳として流通限定で販売されました。
自分は毎年verse COMICS [ヴァースコミックス]さんでBatman Dayになると特典目当てでコミックを購入していて、今回はこちらが限定販売ということで、事前予約の上、お伺いして購入しました。
夕方に予定があったので開店近くにverse COMICS [ヴァースコミックス]さんに訪問しましたが、サイン会でもないのに入店待ちの列が形成されて驚きました。本日はお面が特典としてつくのでお面目当てでしょうか?自分もHUSHのジム・リーのお面をゲットしました。
また心優しいバットマンファンの方と数回ほどおしゃべりさせていただき、自分のように英語がダメでもリーフをジャケット買いされたり、邦訳を追いかけてる人がいるんだぁとにわかかもしれない自分としても安心しました。
並んでる方は洋物好きというところもあってオシャレなアメカジ風の姿があって、人によってはお気に入りのバットマンTシャツやリュックなどを装備してて面白かったです。自分も本日はユニクロのバットマンTシャツで過ごしました。
バットマンよ永遠に!!

まるで本場のリーフコミックを購入したような気持ち
まず手に取って思ったのが、「薄っ!」でした。
というか、開封するという感じですらなくて、薄いチラシを二つ折りにしたようなコミックがクリアシートに入っていて、そこからスッと取り出すだけ。とにかくペラペラです。
普段読んでいる邦訳アメコミは、何話かをまとめた分厚い単行本がほとんどなので、この薄さはかなり新鮮でした。
でも同時に、「あ、これがアメリカで1号ずつ刊行されるコミックの感じなのか」と、ちょっと感動もしました。
内容は通常のバットマンとアブソリュート・バットマンの短編が1話ずつ。思っていた以上に短く、どちらも物語としてかなり濃いというよりは、それぞれのバットマンを軽く紹介する販促用のミニエピソードに近い印象です。
正直、1,100円と考えると「高いな」とは思います。体感としては600円くらいなら納得しやすいボリューム感。
アメリカでは2.99ドルなんですよね。
ただ、日本語に翻訳して、この形でわざわざ商品として出してくれたことを考えると、「作ってくれてありがとう」「翻訳してくれてありがとう」という気持ちもありますし、その方達の賃金など込み込みでこの価格は納得感ありました。
値段だけ見れば高い。でも、自分にとっては初めてコミックリーフ文化に触れた一冊でもあったので、買った価値はめちゃめちゃありました。
本編の感想①:近道(ショートカット)
2025年9月からの『バットマン』本誌を担当しているマット・フラクションさんが脚本を手掛けてるエピソード。
※『フェイルセーフ』期は邦訳済みですが、その後の『H2SH』は音沙汰なし。その後の『Batman #1』期ですね。それについては後述します。
2025年開始の『Batman #1』では、バットマンのコスチュームが青とグレーになっています。
登場人物は、長年警備員として働いてたおじさんとバットマンと謎の若者2人。わずか8ページのお話。
警備員として働いてたおじさんが大金を手に入れて海外旅行をするわけですが、その大金は、自分の勤めてる研究所の鍵を差したままにして帰宅することへの報酬だったということ。
そこで装置を盗んだ若者2人がバットマンに追い詰められるわけですが、バットマンはそこで秘密兵器と悪を裁く執念で彼らを追い詰めて真実を追求するわけ。
そしてそのおじさんが乗った飛行機の隣の席にはバットマンの正体であるブルース・ウェインが座っていることが明かされ終わりというわけ。
まぁそのあたりは途中の後ろ姿で丸わかり。
バットマンとはどういう人かというのがわかりやすく描かれたエピソードですね。
若者の1人が赤いマスクをしているのでジェイソン=レッドフードが絡む話かと思ったらまるっきり勘違い。
若者2人が使う装置が一部高速移動できる装置みたいですがその辺りの描写はやや読み取りづらかったですね。
てっきり勝手にアブソリュート・バットマンの世界とクロスオーバーすると勘違いしていたので、単独で完結してやや物足りない。
表紙の裏のバットマンデイマークの方が読み応えありか。
とりあえず調子乗った警備員のおじさんの清々しい顔がたまらないが、その後の物語を想像するとなんだか切ない。
これこそバットマンのカタルシスというやつ。
本編の感想②:近道(カットショート)
カタカナの表記がよくわからんがそういうタイトル。
ライターは2024年から『Absolute Batman』を担当している我らのスコット・スナイダー。
2011年から2016年のNEW 52『Batman』で#51まで主担当を務め、邦訳作品も多いので、私には馴染みのあるお人。
番外編の『バットマン:ラストナイト・オン・アース』含めてとても良かった。『アブソリュート・バットマン』はまだ邦訳単行本が出てないけど、そりゃヒットするわけだともう納得してしまっている。
こちらは本誌バットマンとは違う億万長者設定がないというわけで、野蛮なゴリラという感じ。
まだ邦訳作品を読んでないので人物関係はわかりませんが、デアデビルみたいなお面を被った武装集団が銀行のあるビルを襲撃。そこでバットマンが協力者と一緒に襲撃をして事態を解決し、黒幕を特定して完結。こちらも8ページしかないのに綺麗です。
またこのエピソード内でバットマンを評するキャラについては誰だかわかりません。協力者であることはわかるのですが、その辺りは邦訳を読めばわかるのかな?
またブルースが工事現場で働き、フォックスに対してビルの基礎にヒビがあるという話をするのですが、それがゴッサムそのものを根本から正さないといけないというメタファー。
このエピソードには、アブソリュート・バットマンのプロローグにあたる回想要素があるのかもしれません。完全な憶測ですが。
と、バットマンの2026年までの歴史とかが全然わからないので、自分のためにもここでざっくりまとめておきます。
とはいえ、1939年の初登場から全部やっていたらさすがに終わらないので、今回は『アブソリュート・バットマン』を書いているスコット・スナイダーが『Batman』本編を担当し始めた2011年以降に限定。
現在のバットマン本編がどうつながっているのか。そして、別世界の『アブソリュート・バットマン』がどこから出てきたのかを整理します。
アブソリュート・バットマンを読む前に、近年の『Batman』本編をざっくり整理
まずややこしいのですが、現在の『Absolute Batman』は、これまで続いてきた『Batman』本編の続編ではありません。
通常のDCユニバースで活躍するバットマン本編とは別に、新しく誕生した「Absolute Universe」で展開されている別世界のバットマンです。
とはいえ、その『Absolute Batman』を書いているスコット・スナイダーは、もともと2011年から『Batman』本編を長期間担当していたライター。
なので、まずはそこから2026年現在までの『Batman』本編をざっくり並べるとこんな感じ。
| 時期 | ライター | 『Batman』本編 | 邦訳状況 |
|---|---|---|---|
| 2011~2016年 | スコット・スナイダー | NEW 52版 #1~51 | 主要エピソード多数邦訳済み |
| 2016~2019年 | トム・キング | Rebirth版 #1~85 | 主要エピソード多数邦訳済み |
| 2020~2021年 | ジェームズ・タイノンIV | #86~117 | 主要エピソード邦訳済み |
| 2021~2022年 | ジョシュア・ウィリアムソン | #118~124 | まとまった邦訳は未確認 |
| 2022~2025年 | チップ・ズダースキー | #125~157 | #125~136、#139~152が邦訳済み |
| 2025~2026年 | ジェフ・ローブ | #158~163『H2SH』第1部 | 2026年9月時点では邦訳未確認 |
| 2025年9月~ | マット・フラクション | 新たに『Batman #1』から再スタート | 2026年9月時点では本編邦訳未確認 |
※号数は各ライターの主担当期間の目安です。途中の他ライター担当回や、増刊号・特別号は省略しています。
2011年~:スコット・スナイダーのNEW 52版『Batman』
まず今回一番重要なのがここ。
2011年、DC全体を再編した「NEW 52」で『Batman』も#1から再スタートし、ライターを担当したのがスコット・スナイダーです。
代表作は『バットマン:梟の法廷』をはじめ、『梟の街』『喪われた絆』『ゼロイヤー』『エンドゲーム』など。
日本でもこの時期の作品はかなり邦訳されているので、自分も読んでいた作品がいくつかあります。
そして2024年に始まった『Absolute Batman』で、スナイダーが再び「新しい世界のバットマン」を一から作ることになったわけです。
2016年~:トム・キング期は#85まで
2016年の「DC Rebirth」で『Batman』は再び#1からスタート。
ここから主にライターを担当したのがトム・キングで、途中に他ライターの担当回を挟みながら、#85まで続く長いシリーズになっています。
キャットウーマンとの関係を大きく扱った時期でもあり、『アイ・アム・ゴッサム』『アイ・アム・スーサイド』『アイ・アム・ベイン』『バットマン:ウェディング』『シティ・オブ・ベイン』などが日本でも邦訳されています。
自分の中ではこのあたりまでが比較的「知っているバットマン」。
問題はここからです。
2020年~:ジェームズ・タイノンIV期
トム・キングの後を引き継いだのがジェームズ・タイノンIV。
『Batman』#86から始まり、「ジョーカー・ウォー」や「フィアー・ステート」といった大きなストーリーを展開しました。
こちらも日本では『バットマン:ダーク・デザイン』『バットマン:ジョーカー・ウォー』『ゴースト・ストーリーズ』『カワードリー・ロット』『フィアー・ステート』とかなり追える状態になっています。
私は購入済みですが、まだ読んでないです。。。
2021年~:ジョシュア・ウィリアムソンを挟んでチップ・ズダースキーへ
タイノンIVの後は、ジョシュア・ウィリアムソンが#118~124を短期間担当。
そして2022年の#125から、チップ・ズダースキーによる新章がスタートします。
ここは現在の邦訳でもかなり追いやすく、
『バットマン:フェイルセーフ』
↓
『バットマン:バットマン・オブ・ゴッサム』
↓
『バットマン:ジョーカー・イヤーワン』
↓
『バットマン:ダーク・プリズン』
まで日本語で発売済み。
『フェイルセーフ』が#125~130、『バットマン・オブ・ゴッサム』が#131~136、『ジョーカー・イヤーワン』が#139~144、『ダーク・プリズン』が#145~152を収録しています。
途中の#137~138など、日本語版だけでは抜けている号もあるので、邦訳だけで完全に全号を追えるわけではないのが少々ややこしい。
まぁトム・キング期も『バットマン:ウェディング』『シティ・オブ・ベイン』の間が未邦訳ですしね。。。
ズダースキーの担当は#157まで続き、2025年に終了しています。
2025~2026年:『HUSH』コンビが帰ってきて『H2SH』
その後の#158~163は、名作『Batman: Hush』のジェフ・ローブとジム・リーが再び組んだ続編『H2SH』。
この6号で『H2SH』第1部が展開され、2016年から続いてきた『Batman』は#163で終了。ただし刊行が遅れ、#163の発売は2026年5月27日となったため、2025年9月開始の新シリーズとは刊行時期が重なっています。
2025年9月:『Batman #1』からまた再スタート
そして2025年9月3日。
『Batman』は再び#1へとナンバリングを戻して、新シリーズがスタートしました。
現在のライターはマット・フラクション、アートはホルヘ・ヒメネス。
今回の『バットマン:トゥー・ワールズ』で通常バットマン側の短編を書いているのが、このマット・フラクションです。
つまり『トゥー・ワールズ』は、
通常世界の現行『Batman』を担当するマット・フラクション
と、
別世界の『Absolute Batman』を担当するスコット・スナイダー
が、それぞれ自分のバットマンを書いている一冊ということになります。
これを知ると、今回の2話が「今の2種類のバットマンをちょっとずつ味見させる」ような内容だったのもかなり納得できます。
では『Absolute Batman』はどこから始まったのか?
ここまでが通常の『Batman』本編。
では、今回もう一人登場した「アブソリュート・バットマン」はどこから出てきたのか。
こちらは『Batman』本編の途中から分岐したわけではなく、DC全体の大型イベントを経て誕生した別の世界です。
かなりざっくり並べると、
『バットマン・メタル』
↓
『バットマン・デスメタル』
↓
『インフィニット・フロンティア』
↓
『ダーク・クライシス・オン・インフィニット・アース』
↓
『アブソリュート・パワー』
↓
『DC All In Special #1』
↓
Absolute Universe誕生
↓
『Absolute Batman #1』
という流れ。
ただし注意したいのは、『Absolute Batman』を読むためにこれを全部履修しないといけないわけではないということ。
『Absolute Batman』そのものは新しい世界の新しいバットマンとして始まっているので、単独でも読めるように作られています。
ここで知りたかったのは「なんで突然Absolute Universeなんてものが誕生したの?」という部分です。
スコット・スナイダーは『メタル』『デスメタル』でもDC世界を広げていた
スコット・スナイダーはNEW 52版『Batman』を離れた後もDCから離れたわけではありません。
2017年にはグレッグ・カプロと再び組んで大型クロスオーバー『Dark Nights: Metal』を手がけ、ダーク・マルチバースという新たな世界を本格的に導入。
その流れは『Justice League』などを経て、2020年の『Dark Nights: Death Metal』へとつながっていきます。
日本では『バットマン・メタル』『バットマン・デスメタル』ともに邦訳済み。
さらに『デスメタル』後のDCユニバースを描いた『インフィニット・フロンティア』、その先の『ダーク・クライシス・オン・インフィニット・アース』も邦訳されています。
なので、このあたりは日本語でもかなり追えます。
『アブソリュート・パワー』から『DC All In Special #1』へ
そして2024年、アマンダ・ウォラーを中心としたDC全体の大型イベント『Absolute Power』が展開。
日本でも『アブソリュート・パワー』として2025年に邦訳されています。
この事件の後を描くのが、スコット・スナイダーとジョシュア・ウィリアムソンによる『DC All In Special #1』。
ここでダークサイドを巡る事件が発生し、その結果として新たな「Absolute Universe」が誕生します。
そして2024年10月9日、その新世界の第1弾としてスコット・スナイダー脚本の『Absolute Batman #1』がスタートしました。
つまり一番単純にすると、
『アブソリュート・パワー』
↓
『DC All In Special #1』
↓
『Absolute Batman #1』
この3段階だけ覚えておけば、とりあえず大丈夫そう。
ただし『DC All In Special #1』の邦訳は未確認
そして日本の読者として困るのがここ。
『アブソリュート・パワー』は邦訳済み。
『Absolute Batman』もフェーズシックスから日本語版リーフが先行発売され、単行本『アブソリュート・バットマン:ザ・ズー』も発売予定。
なのですが、その間にある肝心の『DC All In Special #1』は、2026年9月時点で日本語版を確認できませんでした。
Absolute Universeが誕生する号なのに、その日本語版が見つからないというなんとももどかしい状態です。
ただ、『Absolute Batman』自体は「事前知識不要」の新シリーズとして始まっているので、ここを読んでいないから話が分からないという作品ではなさそうです。
2026年現在は「通常Batman」と「Absolute Batman」が並行中
というわけで2026年現在は、大きく分けると二人のバットマンが並行して連載されています。
通常のDCユニバース
→ マット・フラクション版『Batman』
Absolute Universe
→ スコット・スナイダー版『Absolute Batman』
マーベルでいう通常のマーベル・ユニバースとアルティメット・ユニバースが並行しているような感覚に近いです。
そして今回の『バットマン:トゥー・ワールズ』は、その二人が出会うクロスオーバーではなく、それぞれの現行ライターが短編を1話ずつ担当して「今はこんなバットマンが走っていますよ」と紹介する一冊だったわけですね。
何も知らずに読んだ時は「ずいぶん軽い2話だな」と思いましたが、現在のDCコミックスの状況を調べてから見ると、Batman Dayで二つの『Batman』をまとめて紹介する販促用ミニエピソードという印象はさらに強くなりました。

アブソリュート・バットマンの設定やなぜこうなったなどはアブソリュート・バットマンの単体読んでから書きます。
関連記事
最後に:ご訪問ありがとうございます
関連商品

広告


















