「色んな怒りがあります。」
2016年日本映画作品
吉田修一の小説『悪人』につづき、『怒り』も李相日監督が映画化。
自分は日本映画はあんまり見ないが、映画ファンたちが愛好しているフィルマークスで評判が良かったので、映画の日だったので見た。
映画のあらすじは、一つの猟奇的な殺人事件が起き、その犯人は逃走中。
容疑者の面影に似た三人の不審な人物に関わる人々の群像劇描かれる。
犯人はこの三人の中の誰なのか?
どことなく手配写真に似ている彼らに、周囲の人々の不審は募り、それぞれの心が試される。
東京、千葉、沖縄を舞台に三者三様の物語。
そしてすべてが、怒りという抽象的な物語に結びつき、ただただ遣る瀬無さを感じる作品に仕上がっている。
映画ではあるが、オムニバスの人間ドラマが結びつくわけでもく、事件の真相に関わってくるだけで、それぞれが独立した物語。
ただ見ている側に、犯人を推理させ、誰もが疑わしく、思え、推理して見るのも楽しい。
映画内では、第一印象はどう見ても綾野剛、整形後の手配写真は、松山ケンイチなんだけども…。
またこの普通に似ていない三人を似ている人にまとめたのは、なんとも面白い。
重いし長い
映画はステレオタイプにキャラクターを配置。
特にゲイと沖縄米軍との対立のシークエンスは、なんか表層だけを切り取って、怒りへと結びつけてて、「これでいいのか?」と思わずにはいられない。
両者ともに自分と直面していない問題なので、言葉がない。
ただゲイと千葉の展開には、心に疑念を持った自分自身に対する怒り、信じきれない怒り。どうしようもない遣る瀬無さもあれば、その怒りを超えて希望を手にするものも、ありまぁ一辺倒というわけではない。
問題は、広瀬すずのシークエンスには驚きがあり、また森山未來の豹変にも困惑する。
ラストあたりでは、これちょっと極端で短絡的なオチじゃないか?とも思えるが、『怒り』というタイトルにふさわしくそれぞれのキャストが怒り大爆発していたので、まぁタイトル通りの映画だったなぁと。
映画的には、全体的にはテレビドラマ程度だったが、終盤になると映画っぽいライティングで攻めてきた。
特に終盤の沖縄はパワフルだった。
ただちょっと犯罪者に対しての共感力がなく、犯人の怒りが共感できず、三文小説程度のキャラクター造形になっていたように思えた。見ている側に任せてる感のある凶悪殺人鬼はちょっと魅力に欠ける。
映画全体の面白さよりも怒りをテーマにした群像劇としてなかなか面白いという感じで、映画の起点である殺人事件が妙に空っぽに思えたのは、なかなか残念だったし、
3つの物語を丁寧に描いており、上映時間が3時間近くあるのも辛かった。
あと時間軸の構成を時折、狂わすのも困った。
こういう映画ってどのキャラに惹かれるかで、それ以外の話が邪魔になって、一つの物語に集中してしまい「そのキャラいいから、このキャラ見せてくれ!」ってなるんだよな。
俳優としては、宮崎あおいのキャラクターが宮崎あおいらしくなくてびっくり。
すげぇ。あと渡辺謙がそういうおっさんにしか見えなくて、千葉パートの演技合戦はすごかった。
妻夫木はゲイだった。最後の悔しそうな顔が魅力的。
広瀬すずも衝撃的な展開もあって、最後の叫びがまぁ印象的で、キャラクターとしては一番大きな変化のあるキャラだったな。
得点
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7.8/10
・映像のアプローチ 6.5/10
・映画の美術面 7/10
・キャラクターの魅力 7.5/10
・音楽 8/10
・上映時間と個人的趣味 7/10
72点
長いけど最後は感動してちょっと涙ぐんだ。音楽の盛り上がりもいい感じ。
広瀬すずは可愛いなぁ。
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