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◎【映画 レビュー】シング・ストリート 未来へのうた【81点】◎

「やっぱBTTFは大傑作」
シング・ストリート
アイルランド2016年アイルランド映画作品アイルランド

監督
ジョン・カーニー
(『はじまりのうた』『ONCE ダブリンの街角で』)
あらすじ
1985年のアイルランドの首都ダブリンを舞台に、大不況によって職を失ってしまい家庭が金銭的に厳しくなった少年であり主人公の14歳の少年コナーは、金銭問題を解決すべく私立から公立の学校へ転校させられることになったのだが、この学校がかなり荒れた学校だった。
学校内で先生との対立、いじめの対象になったコナーだったが、学校前にいる年上の少女ラフィナに一目惚れしてしまい、ナンパした勢いで、バンドを組んでいてミュージックビデオを作っていると嘯き、そのビデオの出演を依頼してしまう。
バンドも組んでいないコナーはついさっき知り合ったばかりの同級生の紹介で、ウサギが大好きな音楽少年たちと知り合い、あれよあれよとバンドを結成してしまう。
青春まっしぐらなコナーを待っていたのは、楽しいことだけではなかった、家に帰れば、父と母の喧嘩。
二人の口論に嫌気がさしたコナーはニートで引きこもりの音楽マニアの兄の元で、一世を風靡するブリティッシュミュージックに心を踊らせるのだった。
★85年のブリティッシュ音楽に影響される14歳★
コナーは、女の子を振り向かせるために、大好きな兄と一緒に見たデュランデュランに影響されてバンドを組む。コピーに近いが、オリジナルで挑み、ミュージックビデオを作成する。
そこから時期を経て複数の楽曲を作成するが、当時の流行歌を絶妙にコピーした楽曲をジャンルを飛び越えて
生み出していくコナー。中学生でここまで出来れば最早天才だわ。
辛い日常のはけ口として音楽。負の感情を音楽に載せて歌うことで、彼の魅力は高まっていく。
青春真っ最中のコナーはいつの間にかコズモになっていく。
監督自身もバンド経験があり、前3作ともに音楽を題材にした監督だから出来る、自伝にも近い作品。
85年で10代の人、つまり今40代の元サブカル野郎の人たちは、自身の青春を振り返って涙出ちゃうのかもしれないなぁ。
またその当時流行ったバンドによって自分の服装や髪型を変えていくコナー君がなかなかの魅力的。
ナードなのに学内のカースト制さえももろともしない彼が素敵すぎる。
色とりどりのファッションも見ていて面白いし、まぁブレブレな主人公ではありますが、その裏側には、家庭の崩壊だったり、20代の兄の挫折だったり、年上の女性への恋の挫折だったり、そういうフラストレーションを音楽に載せて、人生として形をなす物語が、どこか同じく80年代に傑作青春映画を生み出したジョン・ヒューズの作風に似ていて、2016年に確かに80年代の風を吹かせる監督のビジョンと技術に一番驚いた。
2016年なのに、確実に80年代があるような。
また背景にはMTVの勃興があるのか、コナーのバンド、シング・ストリートが生み出しミュージックビデオのビジョンがそういうMTVよりで、それを低予算を超えた手作りで作ったいくさまが素敵で、その映像かもまた魅力的だった。
▲脚本はご都合主義でもある。▲
映画はトントン拍子で軽快に進んで行くが、その様はむしろ違和感さえあって王道過ぎる。
安易に予測こそ出来るのだが、それを補うギミックがいろいろ効いている。
★『BTTF』の再現が泣ける★
今作のびっくりしたのが、MVのイメージとしてBTTFこと『バック・トゥー・ザ・フューチャー』の終盤のパーティーシーンをモチーフにするというシークエンスがあるのだが、その直前に家族の崩壊、失恋など色々あったコズモだが、演奏中は心も自由になるのか、自分の演奏で全てが幸福が起こせると信じていたのか、
彼の夢がついに具現化してしまう。
その映像も見事だが、幼稚とも言える、彼の理想の夢がたまらなく愛おしく、それでいて絶対に叶わない儚さが、14歳という淡さが胸をぐっと締め付ける。
今年一番のシークエンス。
確かに『BTTF』でもたった一度の演奏で、全てが解決するんですよね。でもそれはまたSF映画の空想で、でもそれをみんな夢見ている。儚いなぁ。
ヒロインはメイク落とすと普通に綺麗だコズモ羨ましい。
個人的にはコズモよりお兄ちゃんが魅力的だった。
ラストシーンのガッツポーズはコズモが兄のカタルシスを果たしたんだなぁと。
個人的にラストは『卒業』に近い無茶っぷりですが、『卒業』なんて視野にない突っ走りっぷりがいいですなぁ。
エロを排除して、音楽と青春を突き抜けた一本。
ベスト候補にはしないが、ベストにしたい人の気持ちもわかる。
メモ得点メモ
物語の面白さと上映時間 8/10
映画の奥深さと世界観とオリジナリティ 8/10
キャラクターの魅力 8/10
監督の映像演出と印象的なシーン、映像を使った話の描き方 9/10
音楽 9/10
俺の趣味 7.5/10

81
渋谷の映画館のシネ・クィントの休館前の最後の映画になりました。
個人的には予告編にあった『ドープ』の方がツボにはまりそうな予感!
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