描写力高過ぎて何度見ても圧倒される
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに
製作
1998年日本映画
2023年4Kリマスター版を鑑賞
監督
今敏
・千年女優
・東京ゴッドファーザーズ
・パプリカ
ネタバレ あらすじ
2011年5月16日自宅DVD鑑賞
2011年度22本目
2023年10月27日4K版劇場鑑賞
2023年44本目
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2011年の鑑賞経緯:名作『ブラック・スワン』と比較して
ブラック・スワン考察の為に借りたけど
上を行く偶像サイコスリラーサスペンスだった。
『ブラック・スワン』の情報収集しているときに本作に酷似している部分があるという話題を耳にしたので早速鑑賞。本作は今敏監督のデビュー作。今敏監督は病に倒れ既に他界しているが日本アニメに興味があるなら知らない人はいない作品を数多く生み出した人で、今でも熱心なファンは多い。
本作の感想としては
ブラック・スワンは本作に酷似していることは確か。
監督であるダーロン・アロノフスキーは今敏監督の大ファンであり本作のリメイク権を所持。そして『ブラック・スワン』より以前に作った「レクイエム・フォー・ドリーム」は完全に本作のオマージュらしい。だが『ブラック・スワン』については何も影響を受けてはいないと言及しているらしいがおおまかな設定自体はかなり酷似しているし何より本作の方が登場人物の数も多く、事件性も高く面白いのだ!!さてせっかくなのでどこが似ているかを記載すると。まずは、物語のプロットの根源。清純な女の子が試練の為に、頭がおかしくなってしまう。ブラック・スワンでは主観性を強調したので本作とは違う方向性になってはいるが同じ様な事態に直面した主人公は人格崩壊に進んでいく。実際パーフェクトブルーの方がもっと酷い事態に陥るのだが…。
あとはいつの間にか現実と幻覚かわからなくなってしまうことや冒頭の地下鉄の列車内の鏡の演出だとかお風呂だとか動く絵だとかオマージュしまくっているシーンは数多くある。そして「ブラック・スワン」との明確な違いと言えば、主人公よりも他の登場人物たちが主人公に何かしらの影響を大きく及ぼす点。
ここが凄い:『パーフェクト・ブルー』
どちらかと言えば群像的な『パーフェクト・ブルー』は、他の登場人物たちの行動にも注目したい、特にマネージャーのルミの声優が松本梨香なのは、裏があるようにしか思えなかった。後は、やはり扱っている設定のギミックの目のつけどころにも注目したい。本作においては月並みな紹介となるが本作は90年代後半というインターネット全盛期とは到底思えない時期のお話にも関わらず映画内の重要なパーツとしてインターネットを出している。またアイドルのファンの暴走。本作に描かれている要素は当時からしてはいびつで萌えの要素も含まれており10年代に見るとより一層痛烈に感じるものが数多く存在しており当時にここまでまるで時代を先取ったような着眼点の数々は賞賛したい。しかもその裏側で今敏監督は「とりあえず面白そうなものは全部詰め込んだ。」というそういった奔放感の中で生まれたのは凄いことだ。あと本作の特徴として筆者が感じたのは90年代の日本のエンターテイメント独特の怖さが本作には存在しているようだった。特にアニメに関しての怖さは逸脱で当時の日本の描写力のダークさが全快の本作はホラー面でもエッジが効きすぎている。だがそれも相まって素晴らしい面白さが詰まっている。一見本作はサイコスリラーとも思えるが実際はサスペンスだと思う。その先の読めない展開と二転三転する物語展開。主題は、自分を失ったしまった元アイドルではあるがそこに事件が絡んでいきどんどん深みにはまっていく真相につながるわけだが。もうここら辺はアニメ描写の面白さもとても高く。鏡に写った本物と幻影の未麻の姿とか見ていて胸躍る。挙げ句に最後にさわやかなアイドルソングが流れるんだから怖い怖い。登場人物のほとんが良い感じに物語に絡むし持ち味が出まくっているのが映画の完成度の高さに繋がっていると思えました。これが90年代の日本に存在したことが信じられない。まぁー当時の日本ってかなり熱かったような気もするが。本作は、女優に転身した元アイドル未麻の苦悩とその熱烈なアイドルファン。通称オタクの暴走と未麻のインターネットのサイトからなるアイドルの未麻の幻覚を見る未麻が連続猟奇殺人事件へと連なるという物語で精神を病みだした未麻は現実とドラマの世界が判断できなくなってしまい自身が殺人を起こしていると思ってしまうのだが、それもまたドラマの世界のようになってしまう。その描写こそが女優業の現実感の無さに繋がっていきある意味出世作に出た元アイドルの奮闘を如実に描いていることになるのである。そして前述に紹介した要素が加速しだし、暴走列車のごとく物語をもの凄い終着地点に連れて行き、驚愕の真実になるというわけだ。
2023年の感想:やっぱりめちゃめちゃ面白い
制作会社のマッドハウス50周年と本作の25周年を記念した4Kリマスター版で4K版が公開という情報を受け確かすっごく面白かった気がするという感覚から見たくてしょうがなかったがやっている劇場が少な過ぎるしそもそもその劇場が4K上映なのかも疑わしい。※2K上映の可能性もあり。
しかも上映回数も少なく連日ほぼ満席という鑑賞難易度高過ぎだったが比較的行きやすい映画館にて4K上映が決まったので鑑賞してきた。
めちゃめちゃ面白かった
リマスターのここが残念:4K要素は感じられず
リマスターしたようだが発色がすごいとかそういうのは感じられず。照明などは確かにビカビカな眩しさはあった。劇場としては新文芸坐で干渉したがこの劇場スピーカーの音響が独自の音響システム「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」を採用している特殊な劇場。前も『ドラゴン×マッハ!』を鑑賞した時にその音響の良さに感動をした。鑑賞したい映画がなかったから来なかったが店員さんの接客にもとても力を入れいている劇場なので機会あればまた行きたい。
ここが凄い:何度見ても面白い
見ていてうる覚え状態で確かこの人がミスリードで真犯人はこいつなんだよなぁという感じで見ていたが
ミスリード加減が絶妙
むしろわざとらしく何度も登場させて印象付けて最後にひっくり返すの最高。また真犯人の変遷も確かにしっかり描写されており
あ。ここで真犯人は琴切れちゃったんだな
と確かに感じさせてくれるところもあった。最序盤のダンスのシーンもロトスコープとは違うしっかり絵が動いている感じがめちゃめちゃ凄いし。中盤の幻覚。終盤の追いかけっこの動きの描写も凄まじく
制作者たちが命を削ってる感じが伝わってくる
また現実なのかテレビ番組の撮影なのか?その狂わせ方も本当に本当に見事で何度見ても面白い。
ここが凄い;描写力とセンス
ストーカーにさせられたオタクさんのなんだかんだの緻密な描写もすごかったし。その彼が終盤で喋る時、図体は大きいのに声が妙に高いという絶妙なリアルさ。
オタクはやっぱり普段喋らないからここぞという時変な声出るか根本的に声高いんだよな。

そして最終盤のルミとの追いかけっこ。主描写は幻想の未麻だけど僅かな時間、現実のブヨブヨのルミが鬼の形相で映る。その僅かな時間という所のセンスがとことん絶妙。
また猟奇殺人って映画においては無茶苦茶力強くて。デビッド・フィンチャーの映画の数々を彷彿させる面白さがある作品。
ここも凄い:2020年代でもまだ面白い
10年代が再びアイドルの時代で2023年でもアイドルはまだまだあるし地下アイドルも文化として普通にあるわけでSNSでは地下アイドルとかの闇みたいなのも垣間見られる。今作はある種シーンの中では狭い場所から大きな場所へと変遷していくわけですが現代の方が生々しい恐怖を感じるんじゃないかなぁと思ったところもある。昔より今の方がアイドルオタクも多いだろうし狂った犯罪者になる人も分母が多い分あり得るストーカーとかもあるだろうし。まぁルミの方は薄いか。そして2011年にも書いたがインターネットでの自分の成りすましブログはマジクソ怖い。SNSが普及してより手軽に他人に成り代われるようになった時代から見ても今作の描いたギミックはより身近でより切迫した恐怖。容易に狂えるし容易に身近な人を疑える。とことん絶妙過ぎるし
色褪せなさ過ぎてやばい
まとめ:今敏監督の趣向を感じて
今敏監督の作品として先日『千年女優』を鑑賞したが面白過ぎてびっくりしたが同様に女優を描いていた。アイドルから女優に脱皮する女性をサイコロジカルサスペンスを通して当時流行していたテレビドラマ調に収めた本作。そして監督が愛してきた日本映画の数々をオマージュした銀幕の素晴らしさを謳った『千年女優』。
どちらも今敏監督の日本の映像業界への愛
を感じさせる素晴らしい作風だなと感じるのでした。そしてどちらも精神世界と現実が狂っていくという類似点もあって作家性としても非常に面白いなぁと思った。

現在も存命だったらどんな素晴らしい愛に溢れた映画を生み出してくれたのかなぁ?って改めて思うのでした。

hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9.4/10
・映像のアプローチ 9/10
・映画の美術面 9/10
・キャラクターの魅力 9/10
・音楽 9/10
・上映時間と個人的趣味 10/10
94点
また10年後に鑑賞したいなぁ。
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