「話しがあるミュージックビデオかよ!!」
2012年イギリス映画
監督
トム・フーパー
(『英国王のスピーチ』)
出演
ヒュー・ジャックマン
(『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『リアル・スティール』『プレステージ』)
ラッセル・クロウ
(『L.A.コンフィデンシャル』『グラディエーター』『ビューティフル・マインド』『マスター・コマンダー』
アン・ハサウェイ
(『ダークナイト ライジング』『ラブ&ドラッグ』『レイチェルの結婚』『プラダを着た悪魔』)
エディ・レッドメイン
(『マリリン7日間の恋』)
アマンダ・セイフライド
(『タイム』『マンマ・ミーア』『赤ずきん』)
サシャ・バロン・コーエン
(『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』『ヒューゴの不思議な発明』『ブルーノ』『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』)
ヘレナ・ボナム=カーター
(『ファイトクラブ』『英国王のスピーチ』『アリス・イン・ワンダーランド』『スウィーニー・トッド』)
あらすじ
1980年代から上演されているミュージカル『レ・ミゼラブル』の完全映画化。(同様の小説を映画化したのではなく、ミュージカルを映画化したことは注意すべきこと。)
1815年のフランス。ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は刑務所の作業場でその怪力を使い造船を囚人たちと共に引いていた。彼は妹の息子の為にパンを盗んだことにより19年間牢獄に囚われていた。そんな彼に刑務官のジャベール(ラッセル・クロウ)は、仮釈放が可能になったことを告げる。
19年ぶりの自由なのだが、バルジャンが刑務所にいたことを知ると皆が邪険に扱い、バルジャンは貧困に苦しむ。また頻繁に政府に行かなければ更に刑務所に連れてかれてしまうことも足かせになっていた。
そんなバルジャンを教会の司教は優しく迎え入れ、飯を与えた。だが、バルジャンは彼を信頼することもせず、金目の物を奪い、その場所を後にする。
翌朝、司教のもとに囚われたバルジャンがやってくる。だが司教はバルジャンが盗んだものを「全て彼に与えたものだ。」と言って、「これも持って行け」と蝋燭たてまで与えるのだった。
自身の愚かさに打ち拉がれたバルジャンは、自分自身の名前を捨て、人に尽くすような人生を送ろうと神の前で近い、仮釈放の書状を破り捨て、自身の正義を貫くべく、どこかへ去って行ってしまうのだった。
それから8年後。
バルジャンは新たな名前を使い、熱心に働き、そして人望も厚生き、工場を営むほどになっており、更には、市民の信頼から市長にまでなっていた。そんな彼の元に1人の警察官が現れる。
職務に忠義を果たす男ことジャベールだ。
それを見たバルジャンは動揺してしまい、工場でスタッフが問題を起こした仲裁をせずに身を隠してしまう。だがジャベールと面会をするバルジャンだが、ジャベールはバルジャンのことを忘れていた。そして二人で町を歩いていると市民が馬車の下敷きになっているではないか。持ち前の怪力で市民を助けたバルジャンを見て、ジャベールはその姿に過去に仮釈放になり逃げ失せた男のことを思い出し、いても立ってもいられなくなってしまい、司令部にバルジャンのことを調べてもらうのだった。
工場で先輩に絡まれた美女ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)は、そのままあらぬ嫌疑をかけられて工場を首になってしまう。娘の為に仕送りをしていたファンテーヌだったのだが、それも出来なくなってしまう。お金がどうしても必要な彼女は体の一部を売るまで堕ちてしまい、更には娼婦になってしまう。
市長として市民に尽くしていたバルジャンは、波止場の実情を監視しにやってきた。
そこでは工場で問題を起こしていたファンテーヌがいるではないか?彼女はあの時、首になってしまい、娼婦に堕ちてしまったのか?自身の背徳により人が苦しんでいるのにいてもたってもいられなくなったバルジャンは彼女の方に行く。ファンテーヌは客と揉めてしまい、警察官のジャベールがやってくる。急いで近寄るバルジャン。だがファンテーヌは病気を患っており酷い熱だった。
彼女に謝るバルジャンだったが、彼女は娘のコゼットを気にかけるばかりだ。
その意思をバルジャンは引き継ぎコゼットを引き取ることを誓う。
しかしバルジャンは、ジャベールにより自身の正体がバルジャンであることを裁判所で公言し、バルジャンとして囚われてしまったものを救い、出廷すると言っていた最中であり、ジャーベルは正義を執行すべくバルジャンを追い詰める。逃げ失せたバルジャンはコゼットを引き取るべく、詐欺師であり泥棒である宿屋経営者のもとで地獄の日々を送っているコゼットを買い取るのだった。
そして逃げ伸びたバルジャンとコゼット。
更に9年の月日は経った。
逃げ延びたバルジャンは、コゼット(アマンダ・セイフライド)と幸せで裕福に暮らしていた。
そんな姿を見た革命に燃える学生マリウス(エディ・レッドメイン)は、コゼットに一目惚れしてしまう。
革命という題目で政府に襲撃を仕掛けることを考えていたマリウスと仲間たちであったが、それよりも大事なものがあると思い、コゼットを探す。
コゼットを見つけ心を通わすのだが、そこを元宿屋のおやじことテナル・ディエ(サシャ・バロン・コーエン)に見つかってしまい、騒ぎになる。それをジャーベルの追っ手と思ったバルジャンは急いで引っ越しを計画する。
コゼットの行方がわからなくなったマリウスは絶望し、もう一度革命を志す。しかし遺書をコゼットのもとに届けてもらうのだった。それを受け取ったバルジャンは、もう一度自分の使命を思い、コゼットの為にマリウスを救うべく戦闘の最中の町へ向かう。
しかしマリウスたちの部隊は軍隊に完全包囲されており、絶望的な状況であった。
バルジャンはそこで囚われたジャベールと出会うのだが…。
2013年1月24日劇場鑑賞
感想
下調べせずに、正直日本での評価はとてもとても高いが、海外での評価はぼちぼちで、でもゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門での作品賞と主演男優賞と女優賞を受賞したので、流石に映画好きを名乗るんだから、やっぱりここは手堅く鑑賞しておくのが、やはり映画を語る上でのマナーかな?と思い鑑賞してきました。
自分の中の常識としては、この『レ・ミゼラブル』というのは、有名なミュージカルで、日本でも人気のある伝統的なミュージカルであるということ。
その映画化でしかもミュージカルということもあって、出来映え云々というよりは、作っただけでも偉い!!のような製作したら賞を奪えるような映画であると自分は思っていました。
また『レ・ミゼラブル』の意味が『嗚呼、無情』であることもあり、どんよりした雰囲気の重い内容の映画であることも薄々知っている程度。
でも日本では年末に公開していなかったら年間チャートに食い込みそうなぐらいの大ヒットだよね。
さてさて、観賞後に調べてみると、なんと本作は、原作小説の映画化にミュージカルが混ざった。
というわけでなく、元々の人気ミュージカルを映画化するという、何だか違う概念で成立している作品である。
これまでに『レ・ミゼラブル』は2度程映画化されているようだが、いずれも原作小説の映画化であり、ミュージカルの映画化は今回が初めてです。もうそれだけで作り上げたら凄いとおれは思うな。
またそのミュージカル版の俳優を抜擢しているのも注目。
というわけで感想。
映画っていうよりミュージックビデオでした
もうこれってどうなんでしょうかね。むしろこれだけで、ファンにぶった切られそうだけども。
自分的には話しのあるミュージックビデオぐらいな感じ。
本作って映画っていうよりは、忠実にミュージカルを映画として収めたというわけで、全編歌で彩られている。
いや正確には、舞台を映画っぽく撮影したとも言うような。
台詞一つ一つが歌になっている、非常に珍しい作品。
普通のミュージカル映画って、合間合間に歌唱シーンや舞踏シーンが挿入され、それまでは既存の映画と同一で、映画の山場山場を歌で彩ってきたけども、こっちはガチでミュージカルというか。
むしろ現代的というよりは古典的なミュージカルというか、むしろオペラとも言えると自分は思う。オペラの概念もわかっていないが。
それでそれが映画的にどうかと言うと、絶対賛否両論であると思う。むしろ全てを許すようにこれを全面的に有りにしてしまった奴は、完全なにわか映画好きと自分は認定したいと思う。映画のえの字もわかっていないというか、せめて、ちょっと違うよなぐらい映画好き仲間として言ってもらいたい。
そんで何が映画じゃないって、なんせ内心の葛藤を全部台詞として吐露しちゃうんだよね。
映画ってそういうのを演技だとか画面の構成とかで上手く表現することが、やっぱり映画の技法として確立させているわけじゃん?
それが優れていればいる程、唸ってしまうのが映画好きじゃないか?
それがこの映画には存在しない、つまりその時点で、映画としては賛否両論であるべきなのではないか?
監督自身、俳優の演技に焦点を合わせた手法に異議有り。
と書いてみたが、この映画恐ろしい程に、俳優をバストショットで撮っている。
ほとんどを顔から胸にかけて切り出している。
それは俳優自身も非常に難しいことだと思うし、自由に演技も出来やしないし、しかも本作では口パクをせずに実際に歌い乍ら俳優はカメラの前に立っている。
それってやっぱ俳優にはすごい負担をかけているし、やっぱ演技での賞を受賞するのは至極当然だと思うし、それ以上に素晴らしい演技をヒュー・ジャックマンとアン・ハサウェイはしてくれたと思う。エディ・レッドメインもね。
だが、その分この映画には、映画として楽しめない要素が含まれる。
それは映画として奥行きのあるショットが全然無いことだ。
あるにはあるが、それが露骨に野暮ったいCGなのだ。そりゃー1800年代の世界を再現するとなると凄い資源が必要になるが、CGだと余計に目立つのも当然だ。
しかし映画の画的に全然面白くないんだよね。本当に。本当に本当に。
これはトム・フーパーの選んだ選択ミスなのか?でもその分、俳優の演技力はふんだんに発揮された。だから別にトム・フーパーは無能ではないと思う。
話しが古臭い。
もうこれは仕方が無い。確かに今の不況にはこのような無情な世界の果てで葛藤しながらも他人に全てを尽くす男の物語は非常に魅力的だし、時代が求めているとも言える。
しかしだ、映画としての扱っている時間軸は17年もある。
その最中で時代が変わり、革命が起きたりと、映画の本編は2時間40分もあるのにせわしなく、それでいて重厚な話しであるとは言いきれない。物語の焦点は主人公とライバルの二人に搾られているわけでもなく、多くの登場人物の思惑が交差する形になっている。
物語も唐突であり、アン・ハサウェイの病気の件などは予兆がなく急展開。更に娼婦に身を落とすのも急展開。宿屋の店主に際しては、娘を失っているにも関わらず気づきもしていない。
ラッセル・クロウのジャベールも今ひとつ冴えない。彼に関しては歌唱力が物足りない。声にビブラートがかかっておらず、ボイストレーニングをさぼったのではないか?とさえ疑える。
また途中で出てくる大人になったエポニーヌの歌唱力が凄まじく度肝を抜いたが、彼女が舞台版からやってきたので納得した。正直歌唱力だったら一番だ。
しかしその分、無駄に出ててきてしまう。うーむ。
たしかに本作がミュージカルであるなら、そんなに気にならない。座席に座って、俳優の素晴らしい歌声と演技に感動出来るだろう。
しかし映画となると話しは別だ。これまで見てきた映画達と比べてしまう。
全編歌というのも「そこは台詞の方がテンポ良いんじゃない?」と思ってしまう程だ。
やっぱり俳優陣の演技は凄い。
先ほども言ったが、俳優の演技は映像で良いとこが前面に押し出されているので目に見える程素晴らしい。特に出演時間自体は短いがアン・ハサウェイが髪の毛を売り薄着をして娼婦なりながら顔をぐちゃぐちゃにして歌う「夢破れて」は素晴らしく感動的で、心が動かされた。
ヒュー・ジャックマンの全編を通して奏でられる歌声もすごい。怪力男の件はウルヴァリンを思ってしまうが。(笑)サシャ・バロン・コーエンに関しては、相変わらず『ボラット』とか下衆な映画に出ているのにもこういう映画に顔出して、悪役演じてしまうのが、嬉しい。
完全なコメディ担当として、ヘレナ・ボナム=カーターと共に不気味な世界観を彩ってくれたが、映画としてのバランスは欠いているようだが、個人的に好きな俳優たちの活躍が拝めて良かった。
エディ・レッドメインは『マリリン7日間の恋』で知った俳優だが、ここでも活躍していてくれて嬉しかった。普通にラッセル・クロウより歌うまいし。アマンダ・セイフライドは出番ほとんど無かった。(笑)
字幕微妙じゃね?
前方から鑑賞したが、字幕がかなり煩わしかった。これは凡人である英語力の無い自分がいけないのだが、字幕がいちいち俳優の演技を煩わせる。更に字幕の中身もちょっとアホっぽかった。
まぁーここは贅沢言えないが…。
総合的な判断をすると…。
やはり映画としては、自分は無し。
どちらかと言えば、長時間のミュージックビデオを眺めていた程度か。
しかし長時間の上映時間を自分は感じなかった。
終盤付近で革命前日のシーンでの演出はかなり興奮したが、その後の革命のシーンが何だかしょっぱくて微妙だったが、トム・フーパーの手腕はあるなぁーとまじまじ。
もう少しCGを多用したジャベールの葛藤のシーンは映像演技こみでどうにかならなかったものか?
また正直言って、これだったら実際のミュージカル版の『レ・ミゼラブル』を見るの手なのでは?丁度、25周年記念のBlu-rayも販売されたのだし、それを見比べてみるのも良いかもしれない。
と思ったらこれコンサートじゃないですか!!いやいやごめんなさい。でも面白いらしいですよ!!
レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート太陽の街の代書屋さん 大いに語るさんの感想へのリンク。
1400円とか安いなおい。
また個人的には歌の使い回しが印象的で、キャストを変えて同じ歌を歌詞変えて歌うのが、そこまで良しと出来なかった。どの歌詞が一番なのか微妙な所。でも民衆の歌が一番印象的かな?でも口ずさむタイミングはちょっと無さげだが。
あとサドゥンリー(確かヒュー・ジャックマンがジャベールからコゼットと一緒に逃げる馬車内で歌う曲)だけが本作のみの書き下ろし。
まぁー別にこれと言ってどうとかないが、ヒュー・ジャックマンはカッコイイ。
得点
56点
うーむ。こんなに低いのはオレぐらいな気もする。
でも日本人受けは正直良さそう。なんせ日本人の映画を見る人は基本的に限定的で、ヒット作になるとTV局映画が好きな人が多いと思うのですよ。本作は、それに当てはまるとも言える。なんせ全心情を表現してくれる作品だから非常に見やすく、それでいて音楽で彩られており、分かりやすく俳優の演技を誇張するように映像で限定的に捕らえてあるんだから、ものすごく見やすくて感動しやすいと自分は思います。なんか馬鹿にしている見たいだけども、多分皆そうだと思う。
ひねくれている自分ぐらいしかこんな苦言はていさないはず。
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