ピクサー・アニメーション・スタジオの『モンスターズ・ユニバーシティ』以来2年ぶりの劇場長編映画作品。
監督は、『モンスターズ・インク』『カールじいさんの空飛ぶ家』のピート・ドクター。
思えば、2006年にジョン・ラセターがディズニー・アニメーション・スタジオにチーフプロデューサーとして、抜擢されてからはピクサーとディズニー作品に線引きが曖昧になり。
ピクサーでしか味わえなかった独特なカタルシスはディズニー映画にも存在するようになってきた。
逆にピクサーは、『トイストーリー3』以降、商業映画寄りのカタルシスよりも客を楽しませるような娯楽路線にシフトしてきてしまったようにも思える。あと短編が増えてきたような。
そんなわけで、2年ぶりのピクサーの新作。
若手の育成をしてきた印象だが、今作は『モンスターズ・インク』『カールじいさん』と感動作を生み出してきたベテラン。
感想を書く前に言いたい!!
字幕版を見たのだけど、映画が始まる前にピクサースタジオのロゴが出てきたと思ったら、
本作の日本版主題歌のDREAMS COME TRUEの「愛しのライリー」と日本人の全く知らない老若男女の写真が100枚ぐらい映されて、さらにドリカムの歌がフルでながれる宣伝テロをされる。
これは本当に目のやり場も困るし、聞きたくない音楽が延々とながれるし本当にきつかった。
これを考えた人はなかなか頭がおかしい、全く人の気持ちを考えてない。
こっちはわざわざアンチ吹き替えな気分でわずかしか公開しない字幕を見に来ているのに、びっくりだぜ。
ここから感想
堪えられないぐらい涙を流してしまった。
というわけで、本作は11歳の少女の頭の中を映画の舞台にしたかなりの意欲作。その視点はピクサーらしいとも言えるよね。
でも公開前に日本では『脳内ポイズンベリー』という30代の女性の恋を頭の中の視点から描いた映画が公開されていたので、ちょっと二番煎じ感はあったと思う。
ただまぁーブランド力と質で言えば圧倒的に『インサイド・ヘッド』優勢だと思うが。
(自分は『脳内ポイズンベリー』は見てない。)
あらすじ
映画は脳内に住むヨロコビとカナシミとイライラとイカリとビビリの5人がライリーを操縦しているというわけで、11歳のライリーの中にはヨロコビが中心になってライリーをヨロコビで満たそうと大いに力を振るっているのだが、ヨロコビにとってはカナシミが「なんでこんなやついるんだよ」状態。カナシミの生み出す思い出は全て嫌な思い出。
そんなライリーに転機が訪れる。
それは父親の新会社立ち上げにより、引っ越し。北中部のミネソタ州から西部のカリフォルニア州への大移動。
そんな中ライリーの頭の中では、新天地に動揺する。父と母も新天地でイライラしていて、それを取り持つような行動をするもの、学校での転校での挨拶の中、カナシミが急にヨロコビの思い出に触れてしまい、転校の挨拶は悲惨なものに、カナシミの行動にびっくりしたヨロコビはカナシミの行動を制止しようとするが、そのまま思い出保管庫にカナシミとヨロコビは移送されてしまう。
そこからライリーの頭の中には、イライラとイカリとビビリしかいなくなってしまい、ライリーの日常は最悪な方向に。
ヨロコビとカナシミはライリーの感情を支配する司令室に帰ろうとするのだが、その道はとても険しく。
脳内の保管庫はとても広かった。カナシミはダラダラしたりと余計なことばかりヨロコビは早く帰ろうと必死に。
その最中、ライリーの個性を作る家族の島や友達の島、ホッケーの島、ユーモアの島に色がなくなり、ユーモアの島は崩れてしまうのだった。
ライリーの心が壊れてしまう!!
という映画。
感想
アイデアは面白いと思うけども、面白い映画ではないかなぁー。
物語はあまりにも普遍的。
頭の中というか心の中の思い出たち、その中にいる空想の友達とかそういうのが活躍するわけで、
映画の主役はヨロコビ。
こいつが身勝手に振舞って、絶対意味のあるカナシミを遠ざけようとして、悲劇が起きる。
結局、ヨロコビはカナシミの必要性を知り、ライリーの心はもっと豊かになるという、映画的には、ありきたりで、面白くはない。
子供に聞かせる物語のようにストーリーは単調で、それなのにハツラツとカナシミに嫌がらせをするヨロコビに少々イライラ。
そのストーリーに対して、映像演出を多用にしている点は面白いが、興味が失せてしまった。
でも堪えられきれないぐらい泣いた。
とか言っているけど、終盤は涙が止まらなかった。
これは個人的には卑怯だったと思う。
ああいう自己犠牲の精神とかヨロコビの成長とか、ライリーがまた家族と仲良くなる姿には、心が温まる。涙腺崩壊しました。
これはデトックス映画だ!!
個人的に面白かったのは、お父さんの頭の中にもちゃんと司令室あって、でも司令塔がイカリだったり、お母さんはカナシミだったりと、そういうのは奥が深い。
ライリーの中は、ヨロコビが司令塔だけど、大人になるにつれて、カナシミが司令塔になったりするのかな?
そういった人間の個性がこのあと出てくるんだろな。
11歳の思春期直前の少女の孤独。
それを冒険ものに昇華したが、根底にある人間の感情のあり方や、脳内の構造の表現など非常に優れているが、説教くさい教育映画にしか思えなかったりする。
ピクサーの中でもかなり前衛的な作品に収まったような。
得点
物語の面白さと上映時間 6/10
映画の奥深さと世界観とオリジナリティ 9/10
キャラクターの魅力 7/10
監督の映像演出と印象的なシーン、映像を使った話の描き方 8/10
音楽 7/10
俺の趣味 6/10
70点
上映前の短編。その前に流れたドリカムのせいでかなり精神が攻められていたけども、島のラブストーリーのミュージカル。
あんま面白くなかった。映像は確かにすごいんだけどもね。
ただ映画見たあとは、あのひとの頭の中どうなっているのかな?
とか!レバーをあー!!って言って動かしたくなった。
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