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◎セッション「映画を劇場を見ている観客の呼吸さえも支配する」84点◎

セッション
アメリカ2014年アメリカ映画アメリカ

映画を劇場を観客を支配するJ・K・シモンズそしてそれを覆す……
アカデミー賞の助演男優賞を受賞した作品。
(裏方の技術部門では録音と編集も受賞)
『スパイダーマン』で有名な新聞社の編集長役で有名なJ・K・シモンズが初のアカデミー賞受賞というか映画賞を総なめした。
むしろ遅すぎたとも思えるような。
そんなJ・K・シモンズが演じた役は、アメリカで一番の音楽学校の鬼教授フレッチャー。
完璧主義で、自身の理想の音楽を奏でないやつは言葉の暴力で、ぼこぼこしにし、できるまで深夜までだろうと朝までだろうと練習を強要する、超スパルタ教師。
その鬼教師により支配されるのは生徒だけじゃない、むしろ映画全体、いや劇場の空気を更には、見ている観客の呼吸さえも支配する。
劇場での音立てさえもできないように思えた。
それに対抗するのは、主人公、19歳の大学1年生。
演じるはマイルズ・テイラー。
かなり無名な俳優だが、先日見た『ダイバー・ジェント』では主人公をいじめるけども後々ぼこされるマルフォイな役回りでした。
すごいなと思ったのが、マイルズ・テイラーがドラムを叩いてるということ。
ように見えるだけならまだしも、ドラムを叩いてるように見えた。
本当に演奏しているように見える。
むしろ映画のために、ここまで仕上げたのか?すごいな。
そんなマイルズが演じるアンドリューは、親戚の中でもパッとしない。
ドラムが昔から好きで、ついに名門大学まで来てそれ以外は何もない。
憧れのドラマーを見習い、いかにドラムを早く叩けるかを終始追求する。
その先に何かがあると信じて。
そしてJ・K・シモンズ演じるフレッチャーと出会い見出され彼は、フレッチャーに従うことで、偉大なドラマーになり、出世ができると信じ、彼の鬼というか暴力と暴言の荒らしに耐えるのだが、その結果、アンドリューの人格も徐々におかしくなってしまい、最終的に最悪の事態に陥る。
ストーリーは監督の学生時代の実体験を基にしている。
プロになるということで立ちはだかるもの。
自己の経験では、鬼指導員により挫折の結果になってしまったのだが、この映画では、その向こう側に二人は行くことになる。
それが安直であろうとなかろうと、音楽の楽しさや、現実の辛さを超えた映画だけで味わえるカタルシスになる。
日本の音楽批評家や音楽マニアたちには、暴言ばかりで音楽の深みがない。ファッキンテンポの聞き分けができない、そもそもアンドリューがドラムを早く叩くだけで、なんか違う。
みたいなこと言われてますけども、映画的な視点で言えば、ラストの9分間の、長回しと錯覚するほどの長尺のドラムソロは圧巻で、これまで映画を支配してたフレッチャーが、覆されて、しかも楽しみだすとこが半端ない、映画的にはすごい。
音に対しても静寂というか緊張感の中に響く音楽すべてが素晴らしく、水面に落ちるひとしずくの水のように、響く、心に響く、わかりやすく響く。
またそれが劇場で味わえることがいい。多くの人間とフレッチャーに支配される。
そしてラスト9分に酔いしれる。
それが味わえるので、この映画は音楽とかそういうグルーブとかとはちょっと離れた、映画的カタルシスが存在する。
音楽の枠組みで考えず、映画という別枠で堪能すれば、最高の味わいがある。
確かに物語としては、そこまで面白くもないし、ちゃっちい。
ウィップラッシュって原題なのに、重要な曲はキャラバンだし、そもそもフレッチャーのラストはやり過ぎ。
でもこの映画が与えてくれた感動は凄まじかった。
それだけは確かなことです。
メモ得点メモ
物語の面白さと上映時間 7/10
映画の奥深さと世界観とオリジナリティ 9/10
キャラクターの魅力 9/10
監督の映像演出と印象的なシーン、映像を使った話の描き方 8/10
音楽 10/10
俺の趣味 9.5/10

84
セッションって邦題が安直すぎて台無し。
文章つければ『セッション』も納得だが、単体だと酷い。
ウィップラッシュっでよかったやん。
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