「ごめん。生涯の映画ランクにこの映画入れさせていただきます。」
1960年アメリカ制作
監督
ビリー・ワイルダー
(お熱いのがお好き)
予告
STORY
1960年代年末のNYの都市部でのお話。
保険会社の平社員のバクスターは、身内もいなく友人も恋人もいない天涯孤独の身だった。
バクスターは昇進の為に、会社内の上司数人に自身のアパートの鍵を貸し愛人とのラブホ代わりに貸し、出世しようと考えていた。
だがある日、その行いが部長のシェルドレイクにばれてしまい、バクスター事情を話と、彼もまた昇進と引き換えにその秘密のアパートの鍵を貸すことになる。
ついに昇進が決まったバクスターは、以前から気になっていたエレベーターガールのフランをデートに誘うが、彼女こそがシェルドレイクの愛人だったのだ。不倫を辞めたいフランだが、シェルドレイクは彼女を手放そうとはしなかったのである。
2010年11月21日鑑賞
感想
そう言えば、本作は例のランキングの最新版(2009年版)で20位ぐらいに入っていたので、たまには古い映画でも見ようかなと思って衝動的に借りた一本です。
自分古い映画って結構苦手なんだけど、この映画を見る限りでは、その価値観は間違ったものだと決定づけるな。
一応白黒映画でも、「殺人狂時代」だとか、「素晴らしき哉、人生」だとか、「お熱いのがお好き」だとか、「市民ケーン」や「第3の男」、はたまた「カサブランカ」や「深夜の告白」「十二人の怒れる男たち」などはかなり好きだし、「第3の男」のあの影は衝撃的だったのを覚えているが、この「アパートの鍵貸します」は、全ての映画の基礎にでもなるんではないだろうか?
完璧な映画だと思えた。
どうやら噂では、この映画を撮った、ビリー・ワイルダーを映画界の神に置き換えたように、「ワイルダーならどう撮るか?」という言葉があるとか無いとか。
ただそれぐらいこの映画の映像の演出は際立っている。
一応コメディ映画のカテゴリーに当てはまった作品ではあるが、内容は至ってダークな物語である。(ダークナイトもビックリ)
孤独な好青年が、自身の中に残った「仕事」というイノセンスの為に「生活」を犠牲にして、悲惨に生きるものの、そこで「恋」をしてしまうのだが、その「恋」は自身のイノセンスと対立するものだった、またその「恋」が暴走を始め、全てが狂いだし以前とは違う波乱に満ちた「人生」が孤独だった彼を孤独じゃなくさせるというビックリな内容。そこから更に怒濤の展開になるのだが、ここまでダークで複雑な話を明るく描かれているのだからすごい。
内容は重いが、映像は明るい。(対立しているね。)
また話の広がり方が恐ろしい程、意外で、そこにしんみりさせてくれる「クリスマス」という時期を掛けて(孤独な人間にクリスマスのネオンは痛い)、心をドキドキさせながら、コミカルさも忘れず、挙げ句には、どこをどうしたらそんな良いセリフが生まれるの?というセリフをあっさり使ってくれる。
そう言った、映画としての面白さを超越して、映像の面白さまで表現しているのだから本作は恐ろしい。
映像は至ってシンプルでいて、普通。この手の人間ドラマにはふさわしい固定的なショットが多々あるのだが、その普遍さに甘えていない、攻めが本作には盛り込まれている。
その映像的なアプローチにむしろ感情さえ感じさせる程本作のショットは神が潜んでいる。
映画とは正直言えば、セリフが無くても良いので、また状況などは映像で表現することが基本であり、セリフとは、映画における映像で表現することが出来ない情報を詰め込むもの。そして演技とはセリフよりも前に表現する情報伝達方法になるわけで、本作の映像とはまさにそれらの向こう側を意識した素晴らしい構図なのだ。
それをやってのけたビリー・ワイルダーはだからこそ「(このショットは)ワイルダーならどう撮るか?」という監督達の心のボイスとして存在したのかもしれない。
またビリー・ワイルダーの明るさはその他の映画同様本作にも健在、バクスターを演じた、レモンさんは、今で言う所のジム・キャリーのような方でもしワイルダーとジムが出会ってたら、どんな素晴らしい映画が作れたか?今思うと泣けてくる。
そう言えば、本作は結構卑猥な内容だと思われがちだが、全く卑猥でなく、そこ紳士的なのがまたね。
決して劣化することの無い素晴らしい映画。手に取ったことを感謝するよ。
いつか、アパートの鍵貸しますを流しながら、「ここのこれがやばいよね!!」的なことしてみたい。
得点
11点
そう言えばラストシーンの下りが私の大好きな「恋人たちの予感」だったので、きっとあの素晴らしいラストシーンの元ネタはここなんだなって思えた。良かった。
アマゾンでは現在は、予約だけ受けている状態みたい。人気なのか、もともと期待されていなかったのか、ブルーレイで欲しいけど、白黒というか40年前の映画をブルーレイって意味あるのか?都市部行ってDVD売ってたら買おうかな。(笑)アパートの鍵貸します [DVD]
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