「二番煎じのおかげで世に出れたとは思うけど…。」
2010年アメリカ制作
出演
レイン・ウィルソン
(メタルヘッド、ギャラクシー★クエスト)
ケヴィン・ベーコン
(X-MEN: ファースト・ジェネレーション、ミスティック・リバー、インビジブル)
エレン・ペイジ
(ローラーガールズ・ダイアリー、インセプション、JUNO)
リヴ・タイラー
(インクレディブル・ハルク 、ロード・オブ・ザ・リング、アルマゲドン)
予告編
あらすじ
ダイナーのコックのフランク(レイン・ウィルソン)には、生きてきて二つの幸せなことがあった。
一つは、妻であるサラ(リヴ・タイラー)と結婚したこと、もう一つは罪人を追いかける警官にそいつが向かった方向を教えた事。
その二つの幸せなことをフランクは大事にしていた。その絵を壁に貼る程。
だが、サラは昔よりも悪いことをするようになった。薬物を使用するようになり、性行為も拒むようになった。
ある日、フランクの家に謎の男がやってきた。イカれた男であるジョック(ケヴィン・ベーコン)はサラはいるかと聞き、いないとわかるとフランクと共に朝食を食べ去って行ったのだった。
その翌日、サラは家からいなくなった。
悲しむフランク、サラを取り戻すべくサラが出没するストリップクラブへ行くがサラは薬物で認識力が低下していた。サラの隣には幸せな日々を破壊した元凶のジョックがいて、彼はこの街を中心に活動するギャングのボスだったのだ。取り戻そうとするが、返り討ちにあるフランク、警察も彼を相手にしなかった。
酷く落ち込み、なす術のなくなったフランクは神に助けを乞うのだった…。
すると神からの掲示のようにTVでヒーローが活躍していて…。
2011年8月25日鑑賞
感想
一見すると「キック・アス」の二番煎じのような映画だが、中身を開けてみるとそちらとは別物の違う良さのあるシンプルだがパワフルな快作だった。
「キック・アス」と比べると予算的な違いが顕著で、特に派手さが格段に無く、むしろこっちの方が、暴力や自警的行為の責任などが顕著に描かれており、痛快さもコメディ要素の才的にも優れておりスター性も勿論低いのは確かだが、日本でもそこそこ有名なケヴィン・ベーコンやリブ・タイラー、極めつけはエレン・ペイジまでもが怪演してくれるわけで、正直言えば、「キック・アス」と同等の注目するべき作品であるとも思う、予算低いのに同等のカタルシスあるんだからさ。
だが、「スーパー!」に関しては、映画の設計図を見てみるとそこまで映画を好評して良いのか悩んでしまうような無名の製作行程があるわけだ。
特に監督に関しては、一番の痛い点でもある。(笑)
キック・アスに比べれば、有名映画の監督も無ければ、好評された作品も本人ではない。(笑)
出生作が、「スクービードゥ」の脚本で、その後はなんとザック・スナイダーを一躍有名にした「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本を担当、そしてホラー映画を作り(厳密にはホラーコメディ)本作を監督脚本したというわけだ。
一番の驚くべきとこは、彼が「走るゾンビ」の生みの親であること(これ以前に走るゾンビはいましたけど、多分バタリアン)、彼の脚本が無ければ、ザック・スナイダーが「300」を撮る事もゴミ映画「エンジェル・ウォーズ」も作られなかったわけです。
でも監督自身は「ドーン・オブ・ザ・デッド」を笑いながら「今度はゾンビを走らせたよ!!テヘ!!」ぐらいなテンションだったので、結構好評して良いのか難しいとこ。(笑)
ですが、さすがに監督・脚本を兼任した経験や、彼の脚本で映画を救ったことが2回もあった為、確かな技術はあると思うし、どんなにぶっ飛んだ脚本でも地に足をつけてそれなりのものに出来ていたと思えるのです。
なので、自身の感覚だけで言えば、本作は結構良かったです。
確かに筆者はかなりのヒーロー好きだと思いますがね。
とりあえずは、笑って良いのか難しい本作。
主演の方は、筆者は「メタルヘッド」で拝見したので、記憶にあったわけで、結構良い俳優さんですが、簡単に言うと、主人公が相当頭が弱いわけで、それはオープニングから顕著に出ているわけですが、それが訳ありの女と出来てしまって、結局女はまた繰り返すという輪廻の中に、異物である主人公が入ってしまい、それが壊れるという異質な物語。
また主人公が敬虔なクリスチャンであるかは定かではないが、彼が天啓を得て、ヒーローになる件などは、かなりのインパクトで、しかもグロテスクだったりと本当にありがたい映画です。(笑)
また知らなかったのが主人公がスーパーヒーローを知らないという設定で、それがコミックを読んでヒーローになったり武器を選んだりという件も結構良かった。
またコミックショップの店員として働くエレン・ペイジが相変わらずのJUNOと変わらないキャラ設定で、結構笑えたけど、彼女のヒーローとしてあり方の問題性が、上手い事因果応報していたりと、そこからの責任だとか。
映画としてのエンジンになっていた彼女だけど、終盤にはさらに拍車がかかって最高だった。
手作りヒーロー感がバットマン以上に際立っていて、挙げ句に強くないとこも極めて良かったし、彼自身が自分のあり方を考えて、映画のラストにふさわしい終わり方を持ってきており、なかなかの優れた映画だった。
手作り感と言えば、終盤の戦闘は、ヒーロー映画というよりは、ギャングの抗争に近い。
それが現実のヒーロー達の戦いなのかもしれない。バットマンやキック・アスの戦いはあくまでも銀幕に彩られているに違いなく、実際の戦いなどは夢のない血みどろで肉片の舞う、狂気の沙汰なんだろうな。それをブラックユーモアを込めて描いているのが非常に良かった。そこが更に「ヒーローっておかしくね?」に繋がる要素でもあるんだよな。「ヒーローは犯罪者ではないのか?」そこにメスをわかりやすく入れた。そういう映画だとも思う。
コメディ的には、音楽の使い方がやっぱり上手く、聖的な音楽を大事なとこで使うのが本当に笑える。
やはり多くの人やアメリカのサイトでは、一般人の覚悟も能力もない人間がヒーローになる映画で大ヒットして好評の「キック・アス」と比べられたり、またはパクリ的だったりと批判を浴びているのだが、内面を見れば既存のヒーロー映画、特にバットマンに酷似しているもののちゃんと見れば映画としては良作だったと思うのだが。
またバットマンは未だに「彼は頭がおかしいのではないか?」という要素は正当に映画化はされていないので、そういう意味ではこっちの勝ちだと思う。
得点
9点
もしかしたら高いかもしれないが、2011年の夏にやっていた映画の中では一番面白い映画だったと思う。
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