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☆マネーボール 2013年41本目「円熟したブラピの自然な演技は必見です。」☆94点

「ブラピ格好良過ぎ。」
2011年アメリカ映画
あらすじはこちらから。
感想
アカデミー賞をブラピに贈りたい。
実在するオークランド・アスレチックスという野球球団のゼネラルマネージャービリー・ビーンの2002年の出来事を元債券トレーダーのエリートさんが注目し書いた『マネーボール』の映画化。
ブラッド・ピットが製作主演を務めた本作は、製作が難航し3年の歳月がかかり、11年にようやくお披露目になった。
監督は、ベネット・ミラーさん。『冷血』『ティファニーで朝食を』などを書いたカポーティの代表作である『冷血』を書くまでの出来事を監督し高い評価を得た人だ。
脚本には、『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンとよく目を凝らせば、上質なスタッフが選り取りみどり。
ブラット・ピット主演作品としては、『イングロリアス・バスターズ』をアンサンブルと見なせば、単独主演となるのは『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』以来の3年ぶりの作品になるのだが、その他の作品としてアート系の『ツリー・オブ・ライフ』やファミリー映画の声優も頻繁にしているが、本作の主演は裏方に回った実情などを考慮しても素晴らしいの一言に尽きるだろう。
実在する球団のGMを完璧に演じている。むしろ彼そのものがビリーのように思える程だ。
映画化に際して、なんだかんだで脚色をしてエモーショナルになっているわけだが、それでもビリーはブラピだった。ブラピはビリーだった。
『ファイト・クラブ』『ジョーブラックによろしく』『ジェシー・ジェームズの暗殺』を敬愛している筆者としては、永遠の目標であるブラッド・ピットの47歳としての選択は、完璧であり感動的だった。
製作者としてもなかなかの選球眼だ。『マネーボール』理論を映画界でもブラピは行っている。
経済書の映画化。
本作は一応は経済書の映画化である。
しかし厳密に言えば、違うような気がする。貧乏球団を強くするという気持ちを持ったビリーが誰も注目しなかった理論を用い、球団を強くしようと考える。その準備まではある一定の法則を利用して多くの選手を集めた。
しかしそれは機能もしなかった。
だがビリーが本気で勝ちたいと思った時、機能は始まった。
ビリーが自分のルールを破り、情熱に燃え、自ら多くの選手にアドバイスを与え、監督たちに強硬手段を用いた時、全ては動き始めた。
人間の気持ち、人間の行動。数学的予見を成功させる為に必要なのは人間の力だった。
好きだけの見放された野球にビリーがもう一度のめり込んだ時、本当の成功はやってきた。
結局は『もしドラ』と似通った映画かもしれない。しかしそこにはブラッド・ピットの切っても切れない製作としての苦悩や年齢から出る深み。ブラピ自体の雰囲気やドラマの一つ一つがよりエモーショナルにし、一概には、経済書とは言えないのではないかとさえ思える。そこはアーロン・ソーキンの実力か?
ジョナ・ヒルの日本での台頭の予感!?
本作には、私の大好きなコメディ俳優のジョナ・ヒルが出ているのだが、これがまさかのブラッド・ピットとの夢のコラボ。すげぇー胸熱です。
元々好評化のコメディ作品に頻繁に出演していた彼ですが、コメディとは無縁の映画に出るとは、しかもブラピ演じるビリーの後釜とも取れる右腕のポジションにいるわけです。
その役柄がしかも今まで注目されていなかった理論をブラピに教える役柄という、彼自身の価値に精通しているとも思える。
しかも彼の映画内でのキャラクターは野球は好きだけど、プレイはできない。むしろ異様に好き過ぎて、注目されない良質な選手を色んな理論、例えばセイバーマトリックスなどを利用して注目しているという、ただの野球オタクだったりする。
オタクが業界を救う。むしろ変える。オタクは変革者なのだ。
そのオタクだったピーター(原作にも実在するが、あまりにもオタクキャラに変更されたので、名前を貸さなかった。)が実力者に興味をもたれた事により、映画は動き出す。
つまりこの映画はオタクがキーマンなのだ。
映画オタクである自分もこの展開は胸熱。その役がジョナ・ヒルなのも胸熱。現にジョナ・ヒルはアメリカで大活躍中。
今まで注目されてこなかった選手たちをオタクの無駄な知識を披露することによって、スターダムにのしあげていくわけだ。
これは一概に野球だけに限ったことではない。一様これまでの野球は、華やかなホームランや盗塁などなどの見せ物としての夢のあるスポーツだった。しかしアスレチックスはその常識では金銭面的に無理があるわけだ。そこで必要だったのは手堅さだった。
それは実際は、この映画を映画界全体から考えると同じようなものでもある。
正直本作は非常に高い評価を頂いている公開当時ではIMDbでは8点越えという脅威の数字だ。だいたい面白くてもばらつきがあって7が普通なのだが、利用者が万単位のサイトにしては凄い数字だ。(結果的に2013年には7におさまった)
この映画には華やかさもなく、異常に静かで、異常に淡々としている。それはまるでドラマ映画であるのに事実だけを追ったドキュメンタリーのように異質なまでに静かに挑戦を描いてく、そんな映画がハリウッドの巨額の富をかけた大作よりも高い評価を得ているのは、手堅いからだと思う。
地味で低予算でありながら(野球シーンのシンプルさはまじ陳腐)、優れた俳優達がコラボし、
優れた演出や優れた脚本がある。それでいて非常に感情的。
そういった映画をブラッド・ピットが製作したことにより、本当の意味で『マネーボール』理論は証明されているとは言えないだろうか?
またオタクであるジョナ・ヒルは、映画に置き換えれば、評論家のようなものだ。
誰も見ないような映画、隠れた選手(良作)を導き出すことが大事なのだ。それに伴い映画の価値は変わり発展する。野球界もあの時の変革により発展したのだ。
思うのだろうけど、日本映画は今まさにピーターのような人間を必要としている。
金のかかった映画がなかなかお粗末なパターンが増えた今。むしろ映画を見る行為自体に疑問を抱く人も少なからず多くなる一方だろう。
そこに必要なのは、本当に面白いと言える映画を紹介し、それを見て、また映画を見たいと思ってくれることだ。
このままだと日本映画界は衰退していしまうのではないか?『マネーボール』という手堅い映画を導き出すような革命は今おき始めてると思いたい。
鳴り響く敗者の音は聞こえたか?
この映画は、結局は成功の物語でなく、変革を行った第一歩を描いただけで、成功は描かれていない。大団円などは存在しない。
『メジャーリーグ』のようなスター選手の大活躍など見る事も出来ず、やたら静かにビーンが自分のやっていることは正しいことなのか?と葛藤を繰り広げながらも成功の兆しを実感しながらも勝利を掴むことの出来ない野球界の未来を感じて終わるという実に渋い物語だ。
結果的には、セイバーマトリックス理論は、資産の多い球団が実行することにより実証され、その起因はビーンの活動の成果であるわけだが、結果的にビーンの首は更に締まった事になり、今でもビーンは苦しんでいる。
しかし映画は成功を切り離し、ビーンの人間面に焦点を合わせた。自分の人生を奪った野球をまっすぐ愛することのできないビーンは、苦悩した結果答えを出す。分かっていたのだが、言葉にできない。そんな複雑な感情を娘の歌声に乗せて映画は幕を閉じるのだ。その時のブラッド・ピットにはアカデミー賞をあげたい。勿論支えたジョナ・ヒルにもだ。(笑)
それにしても本作は静かだった。そうは思わないか?その答えはビーン自ら映画内で言っていた。
ビーンは連敗中の味方が控え室で悪ふざけをして盛り上がっている光景を見て、激を飛ばす。その時に氷ついた選手たちの中ビーンは言う。
「この静けさが敗者の音だ。」
つまりこの映画は成功の兆しを描いていたにも関わらずあくまでも敗北した革命の犠牲になった男の物語であると映画監督は考えていたのだ。
全編にうるさい程敗者の音は流れていた。それにしても淡々としていたが。
そういえば実際の映像良く使われていたよね。そういうとこが味があっていい。
ブラピは本作でもひたすら食っていた。そういうとこが好き。
ジョナ・ヒルのボールを握り潰す姿は最強だった。ジョナ・ヒル輝いていたよ。ジェシー・アイゼンバーグに続きお前もトップ・スターだな!!
最後の20連勝達成の瞬間は奇跡と同じ意味のマネーボールの勝利とも思える決定的瞬間だったけど、あそこで対立していた監督が指示を出すのは、その理論が正しいと監督が実感していたからで、最後の代打の選択もある意味理論に勝負を賭けたという現在の野球に繋がる道の体現とも思える。
ここから二回目の感想。
多分鑑賞したのは3回目かな?買った直後に流し見したと思う。
それでも見るのは久しぶり。何故観たのか?と聞かれたら難しい。実情としては、自分が就職活動に打ちのめされて負けたからだと思う。自分自身敗北の音がガンガンに鳴っていたから、実際の敗北の音をもう一度聴きたいと思った。だから観た。
それにしてもブラッド・ピットはカッコイイ。このブラピはあまりにも自然体で、今度公開されるような映画という娯楽の中で生み出されたキャラクターとは違う。
*『ジャッキー・コーガン』と比べてます。
ここまで地味なキャラクターなのに中身があり、それでいて色気がある。このブラピは本当に自然体で素晴らしい。地味過ぎるという難点こそあるものの近年のブラピの中で一番素敵だ。
その補佐に当たるジョナ・ヒルも良い。完全にモテないクソ野郎。この機会が無ければあんな重鎮になれなかった。この負け組の二人が起こした挑戦はやはり見応えがあるし感動的だ。
また俳優で言うとフィリップ・シーモア・ホフマンのカメレオンぶりも忘れ難い。
ほとんど台詞もないものの佇まいが中間管理職のわがまま野郎というとこか?それでも中身を感じさせる彼の役柄には、摘み取って文章の花束に添えるべきキャラクターだ。
しかしこの映画実に地味で面白い。音楽の使い方も良い。良いスコアと良い歌声がある。
このBlu-rayは買って良かった。また観たいと思う。
得点
94点
先駆者が勝利するなんて無理な話しだ。

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