「人種差別映画」
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに
製作
1998年アメリカ映画色褪せない社会問題
キャスト
ネタバレ あらすじ
2012年1月10日自宅鑑賞
2011年度127本目
2022年4月22日自宅U-NEXT鑑賞
2022年17本目
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2012年の時の感想
またもIMDbを見ていて
「面白い映画ランキング」に自分が見た事
無い映画が入っていたので借りてきました。
しかもタイミングよくTSUTAYAさんの
発掘良品に本作が選ばれていて
安易に借りる事ができた。
監督はトニー・ケイと元々CM出身の人
らしいのだが
本作以降有名映画を監督していないので
あまり論じる必要はないかもしれない
しかし本作の製作後期での編集作業で
主演である
エドワード・ノートンが
編集をした
と異例の事態が起きたという話題もあり
それで映画監督に懲りたのかもしれない。
また本作のパワフルな演技で
エドワード・ノートンは
アカデミー賞男優賞にノミネートした。
クラックス・クラインが現代に蘇る。
本作は白人至上主義の
青年の栄光と破滅を描いた。
アメリカの消えない問題に
ぶつかった問題作。
ネオ・ナチ
そのめちゃめちゃな役柄を
ワンマン俳優として有名な
エドワード・ノートンが演じている。
DVDのジャケットを見てくれればわかるが
坊主であり胸の心臓の部分には
ヒトラーの指揮したナチスのマークを
入れ墨している。
彼の部屋にはその旗が掲げられている。
そして映画内では
二つの世界が描かれている。
それはエドワード・ノートン演じる
デレクがあることをして
捕まって3年経った世界と
デレクが捕まる前のギャングとしての
活動をしている話だ。
その後者の方が面白いことに
白黒なのだ。
白人と黒人しか世界にはいないという
デレクの片寄った見解を示したような
なかなか面白い構成。
しかしその前者の方が
カラー描写なのを考えれば
自ずと観客は映画の方向性を知る事になる。
兄になろうとする弟。
本作はデレクという怪物(?)が
主役のようにも思えるが
弟のダニーも大事な存在だ。
捕まった兄を敬愛しており
兄のような人間になろうと兄がいない間
有能なストリート・ギャング兼
白人至上主義に傾倒している。
そんな彼がついに兄に再会するのだ。
物語は弟のダニーの視点で描かれる。
その「差別」を
信仰している主人公の視点を通して
それが本当に正義なのか?を
デレクの成長をダニーを通して見る事で
観客に訴えているわけだ。
またダニーを演じたのが面白い事に
『ターミネーター2』のジョン・コナーなのが
面白い。再び彼は世界を救う命運を
背中に背負っているのかもしれない。
エドワード・ノートンの怪演
本作の優れている所は
やはり荒唐無稽とも思える役柄を
パワフルに演じたエドワード・ノートン。
そして成長して真実に気がついて
常人になりながら苦悩して問題を
解決しようとする
エドワード・ノートンの繊細な演技。
はたまた父親とのさりげない会話で見せる
幼さなどの素晴らしい演技もだが
それが納得できる程
デレクの設定も優れている。
そもそもデレクが差別者になった理由は
人命救助をしていた父が救ったはずの人
しかも黒人に殺害されたことが
引き金になるのだが
映画終盤では更に衝撃なことに
父親自身がデレクに
「黒人は異常者」だと諭す
シーンもあるのだ。
つまりその『差別意識』は根強く
過去から続いているのを示している。
デレクは異常者ではなく
アメリカの知られざる歴史を
体現しているに
過ぎないのだ。
本作で特にエドワード・ノートンが
やばいのは父を亡くした母親が
男友達と家族でご飯を食べるシーン。
些細な事で差別についての議論が出た際
激情したデレクが延々と
差別を語る所だ。
とても長い台詞をガンガン喋り続け
それはあたかもヒトラー。
そして家族を傷つけながら
その男友達を追い出してしまうのだ。
そのシーンでのダニーも
なかなか良いわけだが
この演技を見れば誰しも戦慄するだろう。
そのデレクを救ったのが
白人至上主義を利用した
ストリート・ギャングだった。
デレクはカリスマ性を披露するのだが
むしろ彼は利用されているに過ぎなかった。
低能なチンピラたちをデレクは従順な
アーミーに変えギャングは拡大していく。
だが暴走したデレクは
父親の形見を傷つけられたため
枷が外れてしまい
ついに逮捕されてしまうのだった。
デレクを待っていたのは
犯罪の巣窟の刑務所だった。
そこでも白人グループと過ごしていた彼は
自分のリーダーが他の人種に
頭を下げているのに腹を立てる。
そんな彼を白人が地獄に陥れる。
デレクはケツを掘られるのだった。
デレクのケツの穴を多くの囚人が狙う中
デレクは覚悟したが
デレクはそれ以上狙われなかった。
そうだ。デレクは誰かに救われたのだ。
それは勿論あれだ。
刑務所映画というのは結構
見慣れてきたが
ここでの描写は男としては
かなりショッキングでした。
その実情を弟に語るデレクは
ダニーを真っ当な人間にするべく
奔走するのだが…。
衝撃のラスト。
本作は個人的には「希望」を
描いているように思えた。
人種差別主義者の主人公が
それよりも大事なことを知り
真っ当に生きようとし
全てを再生させ偏見を無くし
豊かに生きようと。
弟もその真実を知り
兄と共に家族を支えて生きようと。
だがしかし映画のラストは
それを全てを打ち砕いた。
考えてみればデレクは
影響のされやすい人間で有能ではあるものの
かなりブレブレなキャラクターだった。
最後の最後でデレクは
家族を養う決意をするのだが
映画はいやアメリカの歴史は
それを許さなかった。
デレク自身が死ぬならまだしも…。
という件でこのままではデレクは
また差別に傾倒していくのでは
ないだろうか?と疑問視される
ラストになってしまっている。
本作の極論は一体なんだったのだろうか?
人と人は判り合えず
ずっと殺し合いを続ける
とでも言いたかったのだろうか?
本作が少なからず「わかりあえる」と
2時間以上描いていたのではないか?と
思っていた自分としては
ラストシーンには疑問を抱いた。
それがまたアメリカの社会問題を
描いているのに対して
その希望を否定したところが
やはり否めない。
この映画が良く出来ているからこそ
せめて希望を示して欲しかった。
しかし意味深に最後に
アブラハム・リンカーンの言葉が出る。
我々は敵ではなく友人である。
敵になるな。
激情におぼれて・・
愛情の絆を断ち切るな
仲良き時代の記憶をたぐりよせれば・・・
よき友になれる日は再び巡ってくる
ちなみにダニーが書いた
レポートの引用らしい。
それにしてもこの言葉は
距離があるだろう。
映画全体はもしかしたらダニーの
レポートという意味合いなのかもしれない。
タイトル自体もダニーが
校長に呼びつけられて
やることになった課題なわけで
兄の話を聞いて感化された
ダニーのレポートの映像化という
枠組みでもなんらおかしくない。
ラストシーンが微妙。
伏線の広い方がちょっとえぐいのと
「殺せばいいもんじゃない。」という
言葉が頭に浮かんだ。
そこへの戦いをして
解決策示そうとするのが
本当の意義のある事ではないか?と
ラストシーンには疑問を覚えた。
だってクソがつく程バッドエンドだし
デレクもかなり可哀想だし。
アメリカンニューシネマか!!?
しかしスンゲー面白かったので
オススメ。エドワード・ノートンすげーし。
映像特典
デレクのボスのギャングの主催者の
小物っぷりが強調されている。
いやアイツマジで小物。
また本作は正直ジャケットが
損をしている。
かなりインパクトがあって
鑑賞難度が高そうな内容に思えるが
アメリカの根源にある人種差別に挑んだ
素晴らしい映画。
一応貧民街の物語でもある。
10年を経て再鑑賞
10年前に見たIMDbTOP250に
入っている作品は再鑑賞する
ルールを自分に課しているので
今回U-NEXTにて再鑑賞しました。
ブラック・ライヴズ・マターを経て
10年ぶりの再鑑賞なのですが
本作が描く人種差別の歴史の一端について
『フルートベール駅で』で描かれた
白人から黒人への警察という権威を用いた
一方的な暴力は現在も続いている。
今作で描かれた悲しき暴力の連鎖。
及び暴力を止めようという姿勢は
10年の月日を経ても
変わることもなくより悪化していることに
再鑑賞をして驚嘆する。
考察としては過去に書いた方が
熱意もあって優れているので割愛
白黒の表現の個人的解釈がオシャレだなと。
黒人囚人のラモントが何故デレクを
救うことにしたのかは謎。
そしてデレクが最終的に
どんな感情を持つのかが気になった。
亡き弟のレポートを読んで
踏みとどまるのだろうか???
アメリカという毒親だらけの世界やば。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7.5/10
・映像のアプローチ 7.6/10
・映画の美術面 6.7/10
・キャラクターの魅力 7.7/10
・音楽 6/10
・上映時間と個人的趣味 7.8/10
75点
序盤の黒人の処刑シーンでの縁石に歯乗せるやつマジでトラウマ
白人至上主義の思想は
どこまでも人を残忍にできるのか??