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○【71点】ビール・ストリートの恋人たち【解説 考察:ディストピア・アメリカ】○

製作

2018年アメリカ映画

監督

バリー・ジェンキンス
・ムーンライト

あらすじ

アメリカのニューヨーク
1960年代6歳の少女ティッシュ9歳の少年ファニーは幼馴染で、
2人はいつも一緒に過ごしていた。
19歳になったティッシュと22歳のファニーは自然に恋に落ちた。
愛し合う2人に困難が訪れる。

ファニーがレイプ犯として警察に捕まってしまうのだ。
しかし事件現場と当日のファニーのいた場所には距離がありすぎて、
彼には事件を起こすことは無理だった。
しかし警察はファニーを犯人として留置所に捕らえる。

さらにティッシュは、ファニーの子供を妊娠していた。

どうにか無実のファニーを救いたいティッシュとその家族、
そしてファニーの父親。

しかしレイプ被害者は、異国の故郷へと帰ってしまい、
弁護士は若い白人。
裁判を起こすのにも被害者に無実であることを確かめるにもお金が必要だ。

愛し合う2人に1970年代のアメリカという、闇が立ち向かう。

2019年3月9日劇場鑑賞 2019年24本目



感想

アカデミー賞作品賞受賞作品『ムーンライト』の監督バリー・ジェンキンスの最新作は、
有名小説の映画化。

この小説がなかなか闇深い作品で、
1970年代の黒人に対する都市部の迫害を描いた作品。

バリー・ジェンキンス監督らしいアフリカ系アメリカ人の人間ドラマに絞られた映画。
その演技を見て遣る瀬無さは大いに感じたレジーナ・キングの演技が助演女優賞を受賞。

作風的に白人界隈からは好かれそうにない映画だが、中身的に悪く言えない内容であり、
映画的には映像がかなり硬派で、基礎的な技術力の高さを考慮しても蔑ろにできないこともあり、
またアフリカ系アメリカ人の好感度も考えて、
助演女優賞を受賞させた禊的な何かなのかなとか、勘ぐってしまう部分もある。
近年のアカデミー賞は賞を分配させる傾向が強くありそうだと思ってしまう。

If Beale Street Could Talk

「もしビール・ストリートが話せたら」
1974年にアメリカで出版された小説。
If Beale Street Could Talk。
日本では、『ビール・ストリートに口あらば』という邦題で1976年に出版。
日本での映画公開に際して早川書房にて『ビール・ストリートの恋人たち』という邦題で再翻訳され再販。

著者はもともと黒人の公民権運動を行ってた作家ジェイムズ・ボールドウィン。
マルコムXやキング牧師と共に活動するぐらいの中心人物だったようで、
その活動中に友人を亡くしたことがきっかけで本作を執筆。

映画化ということで日本の広告では恋愛映画色がとても色濃く前面に出されているが、
今作の主題はやはり黒人差別に対する憤りを全編で描いていることは言うまでもない。
もともとの原題が「もしビール・ストリートが話せたら」という、
冤罪に対する活動に心をすり減らされていく人々。
証拠なく白人警官に目をつけられたことをきっかけにファニーという男は容疑者となる。
もしビール・ストリートが話せたら、彼の無罪が証明できたのに。

アメリカの大きな問題である人種差別問題。
現代の白人警官の無実の黒人の一方的な対応の果ての殺害などなど、
結局のところ現代でもその問題は続いてる。

本作はその因縁を主張そのままで描いている。

鬼才バリー・ジェンキンス

原作に忠実ながら、
監督の映像感は前作の『ムーンライト』同様に秀逸。
アフリカ系アメリカ人の肌つや感を照明や焦点、
はたまた色彩を使いとても美しく収めている。

via GIPHY

アフリカ系アメリカ人のカップルの情熱的な恋愛ドラマに
アメリカという国の抱える白人至上主義的な根深い階級とも言える人種差別が立ちはだかり、
その社会問題へアフリカ系アメリカ人のコミニティーとも思える家族で乗り越えようとする
人々の姿を描く。

via GIPHY

ファニー以外にも闇深いファニーの友人の自分語りなど、
辛辣なシナリオを回想を巧みに使い、
幻想的なモノローグを挿入し、

via GIPHY

映像的に魅せることを絶えず続けており、
時折一瞬の精神世界へ映画がダイブする瞬間があり、

via GIPHY

作風としては鬼才テレンス・マリック監督の映画を彷彿してしまった。

あまりにも辛辣なシナリオを、
両親の情感たっぷりなやりとりや幻想的な演出で
アフリカ系アメリカ人の魅力的なミュージックがさらに彩っている。

最終盤の地続きの空気感が、
社会の閉塞感を濃厚に感じさせてくれて、
なかなかの胸糞感を味わいました。

また助演女優賞を受賞したレジーナ・キングよりも
主演女優のキキ・レインがほぼ無名ながらも情熱的な演技をしていてすごかった。
今後も注目したいが、
作品の特性上、次にどう繋がるなどが全く想像できない。

アメリカ映画のタブーなのかもな

見ていて、この胸糞感が他の70年代を描いた映画では感じたことがないことを思った。
あまりにも不都合な真実というものか。
これまで映画業界が如何に白人に迎合される黒人を生み出すことに終始しているのか?
ということをちょっと実感してしまった。
『それでも夜は明ける』でアカデミー賞作品賞を受賞したが、
多分アメリカは何も変わらないだろうし、
あの憎しみは延々と続くだろうな。

根本的にあんま面白くなかった

本末転倒なので、
最後に言うが、あまり面白くなかった。

確かにこの重い内容で、
監督の洗練された映像感を含めば、
批評家の評価が高いのも納得。
しかし観客評価がだんだんと下がっている(imdb調べ)作品なわけで、
そりゃまぁ娯楽映画ではなく、
恋愛映画ではあるが、社会派よりの根深いテーマを描いた映画。
邦題『ビール・ストリートの恋人たち』はあまりにも軽やか過ぎる。

結局この映画の盛り上がりとしては、
事件は冤罪かどうかとか?
彼は救われるのか?とかそういうのではなく、
この地でアフリカ系アメリカ人は生きることが辛いという部分
しかカタルシスとして味わえなかったのは、
なんだかなぁ。
そして超編集のように終盤ダイジェスト化するのもなと。

あと最序盤のファニーの母親のキリスト教の狂信爆発1発退場
が不自然だろ。その後一切出てこなくて、なんか気になったわ。

その。
アフリカ系アメリカ人の恋愛映画としてのここまで熱のこもった映画は確かにみたことなかったが、
白人が出る映画ではいっぱいあるわけで、
結局日本人の自分としては、映画として本作が恋愛映画としてもそこまで面白くなかったという感触があった。
技術力はすごい高いと思ったが。

hisSCORE

・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7/10
・映像のアプローチ 8/10
・映画の美術面 7/10
・キャラクターの魅力 6/10
・音楽 7/10
・上映時間と個人的趣味 7/10

71点

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