「平和という正義を成す為なら汚職ぐらいやってのけますよ!!」
中盤までのネタバレありのあらすじはこちら。
感想
2012年に作られた映画『リンカーン』。
娯楽映画の一時代を築き、現在でも第一線で活動し、現在の娯楽映画を数多くプロデュースし、製作総指揮の名前も貸す男、スティーブン・スピルバーグの65歳の時の作品。
2011年の『タンタンの冒険』を封切りに自身がプロデュースする映画を自身で監督するようになってきている。(ドリームワークス売ったからかな?)
ちなみに自身プロデュースで監督作は『ミュンヘン』と『ターミナル』としばらく雇われ監督もしくはプロデュースに専念していた…。
この『リンカーン』では脚本家が『ミュンヘン』と一緒なので、スピルバーグの本気度も感じさせる。
また本作を前作『戦火の馬』と比べると、かなり社会批判に徹した内容になっており『ミュンヘン』と方向性も似ている。
普通の会社員だったら定年退職になる65歳のスピルバーグ、死ぬ前にやっておきたい映画作りの一部なのかもしれない。
とかなりデカいこと言ったが、全然良い感想などかけやしないのが素人映画ブロガーの私…。
今作の『リンカーン』は、エイブラハム・リンカーンが大統領になり、死ぬまでを描いた自伝映画では決して無い。
リンカーンは本作の冒頭で、任期を終え、再当選した状況なのだ。
しかしご時世は最悪だ。映画以前に唱えた奴隷解放宣言のせいで、アメリカ南部は独立をし、戦争を行ってしまったのだ。
最悪で泥沼の同族殺しの中、それでもリンカーンはアメリカを平和に導く特効薬は奴隷解放であると信じ、和平工作と両立しながら、奴隷解放に関係する法律を通す為に、野党である民主党議員の買収を国務長官に指示していた。
という、実は、リンカーンの晩年(暗殺されてしまうため)を描いた作品なのだ。
スピルバーグの映画だから見ておきたいと思い、公開当初はスルーしてしまったが、駆け込みで鑑賞した。
正直、思った以上に面白かった。
見る前は、かなり固く、文芸臭がぷんぷんするような映画を想像していた。
しかし、前述の通り、リンカーンの気持ちは終戦に向けて、最高潮手前だった。
更に、やんちゃな息子が「戦争に行かないならアメリカ人として生きてて恥ずかしい!!」とか言い出して、戦争に参戦し、それを知った奥さんにガチで「息子(長男は事前に戦死しているので、この場合は次男)が死んだら、てめぇーを一生許さない。わーきゃー騒ぐのが嫌なら精神病院にいれやがれ、この髭モジャガ!!!」と夜な夜な罵倒するので、ストレスは限界。
もう終戦しなきゃ、家庭も地獄絵図だ!!という危機感から、堂々と汚職を繰り返すリンカーン。
敵対してた派閥ともがっちり手を組む!!
それほど、奴隷解放こそが、真の世界的にアメリカのジャスティスを証明し、世界が平和になると信じた凡人リンカーンと、映画は一気に盛り上がりに進んで行く。
映画内は確かに戦争中だったが、それよりも下院議会を中心した、水かけ論戦。
そのキーパーソンがリンカーンとは対立しがちなトミーリー・ジョーンズ演じる議員。
彼はかなりの強硬姿勢の奴隷解放の人で(その理由は映画を最後まで見ればわかります。)、ついつい口が悪過ぎるのだけども彼が…をする時は「あ。老人なのに成長した」と思え感動的です。そういう意味では主役より感動をもたらしてくれるのがトミーリー・ジョーンズ。
ガチで賞狙いのルイスさん。
しかしそれでもアカデミー賞を受賞したダニエル・デイ=ルイスと比べるとお門違い。
彼の演技に対する姿勢が違いすぎる。
根本的に、彼はメソッド俳優だと思う。
準備期間を契約の条件に儲けており、映画に対してもかなり役を吟味するようだ。
その結果変態映画の覇王ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でアカデミー賞を受賞し、今作でも生きたリンカーンなんて知りもしないが、異常に背が高く、リーチの長そうなリンカーンを存在させ、見る側に驚きと親しみを感じさせ、むしろ空想上のキャラと同格なのに、確かに存在し、苦しんでいた。
演技作りに奥さんを演じた俳優と文通をしたのは有名な話し。
一応リンカーン自体にバイセクシャル要素などがあるようだが、そこは映画の焦点外だったので描かれず、もしゃもしゃしたリンカーンをルイスさんは確かに存在させた。
しかしダニエル・デイ=ルイスの身長はどのくらいなんだろうか。ちなみにルイスさんはイギリス人。メソッド俳優過ぎて、プライベートのルイスさんがどんな人か想像できねぇー。
比べると格と財力を持つ常連メリル・ストリープの物真似ぶりが一気に高まる。
リンカーンという男は今じゃない未来を見ていた。
上映時間は2時間30分を超える映画ですが、テンポが良いのかあまりにも変な映画過ぎて、集中できたのか、前回の『戦火の馬』よりは普通に楽しめた!!
なんせ汚職の映画ですからねー。そんな映画今まで見たことあったか?と言えば、正直あんまりないかな…。しかもアメリカで偉大な男の上位にいるような存在が、実は汚職してた!!みたいな内容ですよ。しかも映画内で描かれる彼は、英雄でもなく、妻に脅され、息子のわがままに悩まされ、さらには戦争の責任とかも問われて、八方塞がり。
それでもどうしても奴隷だけは解放したい!!
悪事だって手に染めますわ。未来のため、果てはアメリカという国が「奴隷解放すんだ!!おれたち平和の象徴!!」という史実を生み出し、アメリカの優位性を示す。
どこまでもぼんやりしてもしゃもしゃした表面と、遠い未来を考える狡猾さを兼ね備えた男リンカーン。でも普通の人と普通におしゃべりする本当に変な奴(ゲイか?)
彼は、全ての大統領の目標となるべきであり、他国の指導者も学ぶべき姿勢の持ち主であることをこの映画はぼんやりと描いてみせた。
スピルバーグは、まだ終わっていなかった。
しかし何だか癖がある映画であることは確か、描いた視点も独特ですし。
そりゃー作品賞は難しかったですね。
でも思った以上に面白くて、見て良かったと素直に思える。
「いつやるの?今でしょう」と同様に映画好きの方は「It,s that cureからのnow!now!now!」を愛用しよう。私は既に使ってますよ。勿論机を叩きながら!!
また映像に関しては普通。
照明は相変わらず凝っていましたが、調和してませんでした。
衣装はピカイチのクオリティ。そのおかげで、なんだか没入感増すんですよ。
勿論アカデミー賞も受賞。
他に注目すべきは、デイン・デハーン(『クロニクル』が冒頭に登場)そこでリンカーンの有名な演説「人民により人民の為の政治」の話題が出る。むしろ観客としては、それの映画かと思ったら出ないから驚きという良いフック。そのあと黒人兵士にディスられるリンカーン。相変わらずのぼやぼやぶり。
リンカーンの息子として、ゴードン・ジョセフ=レヴィットが出ますがね。
私的な話しですが、『サタデー・ナイト・ライブ』見てからこの人演技おかしくね?って思い始めて、なんか変な気分で見てしまった。演技の幅狭いかもしれない。(全部『サタデー・ナイト・ライブ』が悪い)
あとは、野党っていつの時代も難癖つけるだけの嫌な奴らなんだね。正しいことをするという考えが、あいつらにはあるのか?まぁー当時の気持ちとしては黒人を国民と見なすという考えがあまりにもおかしいことって意識は強かったし、それが原因で戦争もおきているわけだしね。
それをコミカルに描いている点は、賛否両論。
予備知識が結構必要かもしれない。
これはね。見てて思った。「おれ全然南北戦争知らねー。」って。
戦争の原因が奴隷解放にあったことも、これを書いている時に知りました。痛いです。
だから映画鑑賞中は、結構困惑した。
中盤までは、結構時勢に悩む話しだし。
中盤からは陽気に汚職したりの感動物語にシフトなんで慣れるんですけどね。
得点
78点
こんなに普通に楽しめると思いませんでした。
近所の映画館では上映終了していた。そんな人は、気持ちを紛らわす為に、制作費無駄遣いアクション映画の『リンカーン』を。
字幕無くても映画見て意味分かる。そんなイケテル高学歴なあなたには、海外版Blu-rayを。
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