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◎【81点】ノマドランド【解説 考察:安住の地を奪われて】◎

ノマドランド

製作

2021年アメリカ映画

アメリカンドリームがなくなった現代

監督

クロエ・ジャオ
・ザ・ライダー
・エターナルズ

キャスト

フランシス・マクドーマンド
・ファーゴ
・あの頃ペニー・レインと
ムーンライズ・キングダム
・スリー・ビルボード

デヴィッド・ストラザーン
L.A.コンフィデンシャル
・グッドナイト&グッドラック
リンカーン
GODZILLA ゴジラ

ネタバレ あらすじ

アメリカ西部のネバダ州にあった
エンパイアという街。
この街は2011年に街全体を
ある鉱山会社が運営していたが、
金融危機により会社は廃業。
街そのものがなくなってしまうのだった。

この街で暮らしていた
ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、
住居も仕事も失い。
愛する旦那も直前に病気で失っていた。

無一文に近い彼女は、
車上を住居とし、
登録制の仕事をし、
各地を転々としていた。

amazon倉庫での勤務中に彼女は、
リンダ・メイと出会う。
彼女も長年同じ境遇で生活していたが、
彼女はYouTubeで車上での転々と生活する
ノマド生活のテクニックを教える
ボブのことをファーンに教え、
よかったら隣の州のアリゾナ州の砂漠で
行われる集会への参加を促すのだった。

真冬のネバダにて仕事もお金もなく
困ったファーンは、
その集会に参加する。
そこで彼女はスワンキーと
デヴィッド(デヴィッド・ストラザーン)と
出会い、リーダーのボブとノマドの
生き方について語りある。

集会は解散し得るものを多く得た
ファーンは、新たな仕事をするため、
違う場所へと向かう。
ただ彼女は仕事をすることにこだわる。

2021年3月27日劇場鑑賞
2021年18本目



フランシス・マクドーマンドの革新的作品

フランシス・マクドーマンドの
プロデュース作品。

via GIPHY

選球的にやはりコーエン兄弟関係者。
渋くてやばい。
また気鋭の中国人女性監督の
クロエ・ジャオを製作脚本監督で起用し、
革新的でもある本作は、
トロント映画祭の観客賞を受賞し、
アカデミー賞にもノミネートされ、
2021年3月現在では作品賞の
本命でもある作品だ。

原作はノンフィクション小説の
『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』
原作者にキャスティングを協力してもらい
リンダ・メイ、スワンキー、ボブ
は実在の人物が自身のキャラクターを
演じている。
その他のエキストラもそうだろう。

作風としてはドキュメンタリータッチな
劇作品。

2011年の金融危機で街ごと破産した
企業が運営する街で暮らしていた女性が、
安住の地を奪われながらも
必死に生き続けていくという
かなり殺伐とした作品だ。

マクドーマンドさんが、
主演も演じ、
彼女がの演じるファーンは、
行き場のない悲しみを全身で滲み出し、
アカデミー賞主演女優賞にもノミネート。

彼女自身が映画化権を手に入れただけあって
入れ込み方が違う。
その滲み出しっぷりは
全くジャンルが違うが
『アトミック・ブロンド』の
シャーリーズ・セロンばりにすごい。

his
例えが全然上手くなくてびっくり

2017年にも
怒りを心に秘め、執念深く、
そして悲しみに打ちひしがれる
未解決事件の被害者の母親を演じ
アカデミー賞を受賞したマクドーマンドさん。
今作もおそらく獲得するのではないか?
と思うのだが、
思えば同じように心に秘めながらも
生き続ける逞しさを体現する役柄と
リンクしてしまっているので、
ちょっと暗雲もあるが、

マクドーマンドさんのキャラの作り込みめちゃくちゃすごい。

マクドーマンドさんの演技すご

アマゾンの倉庫で働くのすご
荒野でションベンやば
アルバイトの数々やば
なんちゃって観光やば
でもそれでもかき消せない
現実の思い悲しみ表現やば

キャラクター作りすっご
ファーンは想像のキャラだよな?

遊牧民とは違う安住が見つからない社会=ノマド?

日本ではいい意味でノマドと表現される
ノマドワーク
会社で仕事せずに
カフェなどでインターネットを駆使した
ビジネスで生計を立てる。
フリーランス的な魅力。
しがらみのない社会。
いつも決まったカフェ、
今日は違ったカフェ、
ワーキングスペースのレンタル
デジタル遊牧民的な?

いやいや遊牧民は
季節ごとに移動パターン固定ですよ。

という日本社会の腐りスラングに
毒を吐きたくなるほど、
この映画の描くノマドランドアメリカは
おぞましいものだった。

背景にあるのはどうしようもない喪失感。

リーマンショックによって、
借金を強制され家を貧乏な人が
買うスタイルのバブルが見事に割れ、
結果的に投資家の一部は大きな利益を得たが、
(背景は『マネー・ショート』など見て)
結果家を奪われた
低階級と中流階級が、
行き着いたのがノマドという車中生活だった。

また特に白人しかいない点にも注目。
黒人は逆に人種差別の的になって
危険がいっぱいだから
ホームレスもしくは
シェルター生活になるようで、
まだ車上生活で日雇いできるだけ
彼らはマシですが、
それ以上はもう這い上がれない

アメリカンドリームがなくなった現代を感じる

主人公のファーンもまた
安住の地を経済破綻により奪われ。
それでも生き続けるのであった。

その地獄の日々の中で、
新たなる希望や安らぎを見出した
ノマドの人たちは、
ボブの思想のおかげで、
自己肯定を見つけ、
そして人間としてノマドを受け入れている。

そんなドキュメンタリーチックに
一人一人の発端や現在の心境語られる本作。
やはり丁寧すぎるし、
ドキュメンタリー映画らしさというものが
出てしまっているし、
そもそも同内容の短編ドキュメンタリーが
あるようで、
ちょっと映画としては物足りないし、
長ったらしいのだが、
それを補うほどの
アメリカという大地の持つ魅力、
そこを車で駆け抜け、
喜びを見出す人の逞しさというのを
実感できる。

しかし主人公のファーンが感じている
ものはどこか違うのではないか?
そう思うのでした。

via GIPHY

痛みを中和しながら

ファーンは多くの人に愛されながらも
一人で生きることを決める。
それは安住の地を奪われ、
愛する人を失った場所さえも
奪われた癒えることのない痛みに
打ちひしがれているからだった。

彼女は仕事をする
車を運転する
雄大な自然に触れることで
その痛みを中和しながら、
生きている。

via GIPHY

his
『ジョン・ウィック3』の
ジョン・ウィックが言ってたことと一緒だ
『ジョン・ウィック3』感想リンク

彼女の思い出がある限り
あの場所はあの場所なのだ。
心の中の安住地には戻れない彼女が
できることは生き続けることだけなのだ。
そしてたった一人で。

同じような痛みはそうそうないが、
もし近いような痛みがあるなら多分、
福島の原発事故で
津波により家族を失い、
住む場所を失ってしまった人は、
同じ痛みを抱えているのかもしれない。

その痛みを埋めれるのは、
多分被害者同士なのかなぁと。

向き合えないなら封印するか、
向き合わないようにするしかないだろうな。

大きすぎる痛みの映画

それが国や会社など
人災的なのだからまた救いがない。
裁きのない罪。

やるせない怒りと喪失感を抱えた
ファーンというキャラを体現する
マクドーマンドさんの演技は素晴らしい。

クロエ・ジャオの実力は次回作で判断

長編監督作3本目の彼女ですが、
個人的には彼女の作品初なので、
すごいとかそんなに思わず。

何方かと言えば
フランシス・マクドーマンドさんやべぇ。
に傾倒している。

作風として
役者を極力使っていないスタイルで
映画作りを前作『ザ・ライダー』で行っていて
今作もしっかりとした原作のようなものがあり
彼女自身の作風として考えていいのか、
見終わってみてわからないなぁと思った。

実際にあったことを
実際に体感している人から抽出というのは、
ドキュメンタリーの手法に
すごく近いと思うし
ある種モキュメンタリーチックであって、
映像もそれっぽい手持ち感や
日常の一コマの切り取りのようなものが多く、
大自然を背景にしているが、
あくまでもテレビで見るようなキャラの接写を
多くしていて、

全く映画的じゃないなぁ

と思ってしまった。

そんな彼女が次回作には
ディズニーマーベル映画のMCUの
『エターナル』を監督するのだから
非常に面白い。
今度は完全に作り話で、
全く違う役者が全く違う
キャラクターを演じる。
それこそ監督の手腕が試されるのではないか?
そう思うのです。
今作ではその存在を知りましたし、
後ほど『ザ・ライダー』も鑑賞しようと思う。

しかし今作では「すごい監督だ!」など
判断することができない。

映画的な映像を見たかったが

個人差もあるが、
アメリカの荒野や岩山の歴史が生み出した
景色に圧倒されるが、
そこには照明などの作り込ものらしさや
構図というものはそこまでなく、
実在する美しき景色が映される。

映画的な角度や構図というものよりも
ありのままの自然の雄大さや
魅力が詰まっているが、
映画というものの魅力とは
違うような気がした。

むしろその中にいる
作り物のファーンという存在が
より際立っているように思えた。

新たな価値観に触れる映画の醍醐味

映画の醍醐味というのは、
やはり新たな価値観と出会うという喜びも
あるなぁと実感した。

車で移動して自由な人ぐらいに思っていたが
それぞれが強い痛みに向き合い
生きることの希望を見つけていく。

ドキュメンタリちっくな映像の数々や
日雇い仕事の実情や
メリットデメリットなど
色々な価値観を知ることで、
自分に新しい価値観をもたらしてくれた。
これだから映画はやめられない。

hisSCORE

・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 8.8/10
・映像のアプローチ 8/10
・映画の美術面 8/10
・キャラクターの魅力 9/10
・音楽 6/10
・上映時間と個人的趣味 7.6/10

81点

フォックスサーチライト作品のため、
現在はディズニーの配給。
だからかパンフレットが制作されてない。。
またそのうち
ディズニープラスに追加される?

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