「こんな映画どっかで見たことあるんだよな。」
予告編
こんな話し。ネタバレ有り。
ジョセフは妻を数年前に無くし、失業中の男だ。彼は、自分の怒りや暴力性から伴う破壊衝動をコントロールすることが出来ずにそれを悩んでいるのだ。彼はまた怒り狂った勢いで大事にしていた愛犬を蹴り殺してしまう、それを機会に彼はこれまでの生き方を変えようと決め、周りに嫌な奴がいようともそれを無視することにする。
しかし彼はまた無闇に暴力を振るってしまうのだった。悔いいる彼はとっさにチャリティーショップに入ってしまい、そこで気を落ち着かせようとする。そこの女性オーナーのハンナはジョセフを心配し、真摯な態度で彼を受け入れるのだった。
やはり後日ジョセフは彼女にも悪態をついてしまう。だがジョセフはハンナのおかげで徐々に怒りを制御出来るように思えてきたのだった。
しかしハンナもまた悩みを抱える人間だった。彼女は家で旦那に家庭内暴力を振るわれていたのだった。それを抱え続けるハンナ。ついに旦那にジョセフと仲良くしている様をハンナは見られてしまうのだった…。
2012年10月20日鑑賞
感想
『ボーン・アルティメイタム』の序盤で殺される記者の男を演じた俳優が監督した映画だよ!!
というわけで、見てきました『思秋期』いや思秋期ってどんな時期だ!!
原題は『Tyrannosaur 』まぁ日本語訳では『ティラノサウルス』です。ギャオー!!
でも主人公は中年のおっさんで、自分を映画『カジノ』や『レイジング・ブル』あるいは『ア・ポン・タイム・イン・アメリカ』で衝動的の暴力を振るってしまう、または暴力的な人間として育って行ってしまう男を演じたロバート・デニーロと例えてくれる。主人公もまた暴力を抑えることができず、苦しんでいるそんな哀れな男なのだ。
思秋期の語源って岩崎宏美?
映画の邦題になった思秋期なのだが、辞書で調べたら出てこなかった。Wikipediaも出てこなかった。というか映画『思秋期』のページはまだ出来ていないようだ。(苦笑)
しかし頑張って調べてみると、中年期に入った辺を言うことらしい、これまでの人生で経験してきたこと学んだことをどう生かし、自分自身を変えて行くか。
人生の折り返し地点にたった主人公ジョセフは、自身の内面に抱える抑えられない怒りをこの映画を通して、どうすれば良いか学ぶのだ。
英語圏のインディー映画賞で数多くの賞を獲得
話しはそれたが、この監督の長編デビュー作である本作は、アメリカの若手監督の登竜門である2011年サンダンス映画祭のドラマ部門で監督賞を受賞。
元々俳優としてそれなりにイギリスを中心に活躍していた個性派俳優だったが、2007年に監督したショートフィルムで賞を取り、今作で長編デビューに至ったようだ。
また2011年の東京国際映画祭でも『Tyrannosaur』として公開もしており、この度めでたく日本公開に至った。個人的には『サブマリン』が公開しないのが許せないのだが。
そのサンダンス映画祭がチョイスする作品としてふさわしい独特のインディペンデントさ。
娯楽映画らしい派手さを唾棄し、俳優の演技力やあえて荒廃した環境にカメラを向ける選択。
予算の少なさを映画本来のドラマ的面白さ編集と映像の面白さのみで勝負するその姿勢を上質に感じられるという意味では間違い映画でもあることはとても明白だ。
しかし海外での評価はいまいち高くない。
metascoreでは68点。まぁー高い方でもあるが。
個人的な感想としては、やはりサンダンス映画祭で賞を獲る程の、質の高い映画だった。
しかしどこか使い古されたとも言える物語のような気がした。
怒りを抑えられない男が、女性と出会い、生き方を変えることに成功する。
また女性自身も問題を抱えており、それが悲劇的な展開に繋がる。
確かに面白い、特に俳優陣の演技が逸脱。ジョセフなんか特にすごい。内包した怒りを抑えきれず、暴走してしまう。腹が減ったらあたり一面の動物を食尽すティラノサウルスの如き存在(そして周りが誰もいなくなる孤独も体現)。
それなのにどこか安心感を与えてしまう優しさを備えている。
その怒りをどうにかしたいという葛藤も上手く描いている。またその相手役の女性も同様にDVを受けた女性として非常に上手く体現していた。
挙げ句に、監督がこの地味なドラマをどこか映画的に彩るようにその暴力を70年代80年代のマーティン・スコセッシのような勢いや『ゴッドファーザー』の冒頭のような衝撃を与えてくれる。
まぁー『思秋期』という邦題は、個人的に好きだが、映画自体を総括し過ぎているので、ガジェットとしての『ティラノサウルス』の方が良かったかもしれない。
そのティラノサウルスとしての小ネタも盛り込んでいる点は結構好き。
しかし映像、監督の演出、俳優の演技と全てが良いのだが、脚本がいまいち物足りなく、地味過ぎる。
ドラマとして逸脱だし、上映時間も90分とちょうど良い。
イギリスの労働者階級と中流階級の温度差を描いているのも良い。
でも主人公の怒りを抱える理由が、ちと物足りない。そしてそれを悔いる原動力もなんだかいまいち。そもそも彼は暴力を生業とするような生活を送っていたのか?それとも日常的に暴力を使うことが癖だったのだろうか、凄まじくはた迷惑でもある彼、むしろ異常者。何故警察は彼を捕まえない?もとマフィアなのか?イギリスの労働者階級が抱える怒りなのか?自分には内面の「怒り」に対して描き理路整然さ説明が弱いように感じた。
またそれがいとも簡単に抑えれてしまうのが少々安直か?ラストの一件も少々枠にはまり過ぎていて、興奮度が物足りないか?
サンダンス映画らしいショッキングでありながら安らぎを感じる顛末だが、少し一辺倒。
特に女性の旦那さんがなんだかなぁー。旦那の職業はなんだったんだろう。
まぁーこの旦那さんの未来の姿がジョセフなんだろうが、そしてハンナがジョセフを受け入れるということは、つまり何かの矛盾を抱えており、とても歪な形なわけで…。
でもこの規模でこれだけの質の高い映画を生み出せるので、監督は次回作で予算が増大した際、どのような作品を生み出せるか非常に楽しみだと思う。
個人的に表層が似ている映画としては『グラントリノ』。(あっちは人生の最後でこっちはターニングポイントだけどもね。)ジョセフが怒りと悲しみを内包して拳を武器として使うに際して、イーストウッドの如き内包した怒りを体現している姿が印象的。イーストウッドのセンスに近い感性の持ち主か?
得点
8点
うっかりぴあの出口調査に遭遇して支離滅裂なこと言ってしまった。今思うととても恥ずかしい。鑑賞直後だと頭混乱してるな。あと意外とよくわからなくて、彼女に色々観賞後質問した。ちなみに金が無さ過ぎて彼女に映画代をおごってもらった。というかその日全部おごってもらった。
あとツィッターで相互フォローしている方が同じ回を鑑賞してて、オレを見つけたことをツィッターに呟いていた。オレも相手がいるような気もした。(苦笑)
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『サブマリン』も公開してほしい。じゃないとDVDが購入出来ない…。
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