「感じる心を止めちゃいけないんです!!」
2011年日本作品OVA
★この記事をまとめるとこんな感じ★
あらすじ
前作『機動戦士ガンダムUC/episode 3 ラプラスの亡霊』のラストでお世話になった顔見知りの命を奪い、そのまま地球に落下した世界のルールを変える力を持つ「ラプラスの箱」への鍵を握るロボット「ユニコーンガンダム」に乗っていた少年バナージだった…。
その頃地球では、地球の総合軍の首都とも思えるアフリカにあるダカールに宇宙に住む人たちを中心に構成されたジオン軍の生き残りたちが、一大攻撃を仕掛けていた。その中にはバナージとさほど歳も変わらないロニという少女が、巨大な兵器に乗り、街を壊滅させていた。彼女の心には、一族への復讐のみだけがあった…。
所は変わりジオン軍のお姫様であるミネバを保護するために地球に連れてきたお金持ちのドラ息子で地球軍に所属するリディは、自分は自ら「ラプラスの箱」の事件を追いかける中心地にミネバを連れてきたことをようやく理解する。また自分の家系こそが「ラプラスの箱」とは離れられないドロドロとした汚い血であることを悟ったリディは、どうしようもない感情を抱くなる事になる。それを感じたミネバはより一層どうしようもない気持ちに苛まれる。
バナージは砂漠の中心にいた。ダカール攻撃の陽動作戦のおかげで無事地球に来れたジオン残党軍の輸送船ガランシェールは、地球降下時に、ユニコーンを回収していた。だが着地に失敗し、船は砂漠の真ん中で動く気配はなかった。このままでは乗組員共々死んでしまうし、船を失うことは避けたい。艦長であるジンネマンは歩いて助けを呼ぶ事を決める、バナージを連れて…。
バナージの精神は崩壊間近に思えた。親しい人間をうっかり殺し、一方的に自分の為に命を賭けられて、ただの少年だったバナージは自分が何をすべきなのか、さっぱり感じられない。死ぬ事も出来ない。
そこにジンネマンはあくまでもバナージを戦士として扱うのだった…。
2011年11月17日鑑賞(2011年度103本目)
2012年1月31日鑑賞
2018年8月25日Blu-ray再鑑賞 2018年87本目
感想
福井晴敏の原作小説『機動戦士ガンダムUC』の第6巻『重力の井戸の底で』のアニメ化作品。
今作は、珍しく小説1冊を映像化したわけだが。
ドラマ面が相当薄い。
その分違う部分が相当頑張っているわけだが…。
ガンダムAGEにがっかりした人の為に…。
その言葉が見ている最中に頭に浮かんだ…。
最近TVで放映されている『ガンダムAGE』というガンダムの新作があるが、子供向けを念頭に製作されたアニメだからか、とてもじゃないが悪ふざけのようなアニメであり、総合監督に抜擢されたゲーム会社レベルファイブの日野は元々商才はあるものの文才はないという下馬評はあったが、ここまで酷いとは流石に思えなかった。
多くのガンダムファンが、1話ごとにいらだちを覚え、今後のガンダムに不安を抱く日々を抱え、その最中に公開された本作は、昔からのガンダムファンへのサービスに固執したような一辺倒な内容になってしまった。
今まで日の当たることのなかった設定だけのロボット達の宴。
本作は、そういうガンダムだった。今まで設定だけ、ゲームだけに出ていたロボット達が、実際にアニメとして魂を吹き込まれ動きまくる。
特に宇宙世紀、1980年代から1990年代後半を中心に作られてきたガンダム作品の熱心なファンにはたまらない映像が山ほど出てくる。
自分もアクアジムの活躍には興奮した。むしろジオンファンも歓喜だと思われる。
そういったロボットが山ほど出てきて動くわけだが…。
そのロボット達の戦いには、カタルシスも会話も無い。ある意味機械的に繰り広げられるロボット同士の戦いは完全に感情を唾棄した質だけの高い映像であり、玄人向け以外何者でなく、『ガンダムAGE』に苦しんだ人への救済とも思える程だ。
むしろユニコーンにドラマを求めたとしたら本作は決して面白い作品ではなかった。そのように断言出来る。ここは注意が必要だ…。
むしろ『AGE』と『UC』を並ばせることでガンダムの親会社のBANDAIの思惑が痛い程伝わってくる。これが面白いか、忌み嫌う程不快なものであるかは、全ては日野がいけないとオレは言いたい。
オリジナルビデオとはこういうものだと実感するのも良い。
ある意味では本作はOVAとして考えるとふさわしい出来だったと思える。個性を重視したものであるそれは、たまには見なかったロボット達の動きを堪能してみるのも良いと思う。
特に『08小隊』が好きだった人はたまらないと思うんだけど…。
原作小説とは大きく差が出てきた。
ロボットたちの大活躍に伴い、原作が大幅に変更されていると思う。
12月2日現在読書中なのだが、かなり内容が違う。バナージとの砂漠渡りはあったが、ロニとの関係がかなり違う。アニメ版では、バナージとロニが全く関わらずロボット戦以外に交流がないに近い。
これが個人的にはかなりがっかりだたのだが、せっかく同世代の少女がジオンという血塗られた敗者の復讐の血を背負った運命を決められた存在として、同じく主人公として運命を背負ったバナージとの邂逅は、バナージの心に大きな変化が生み出されると思えて見応えあると期待できたと思うのだが…。
結構残念だったな。
そして小説ではロニの父親が健在でしかも攻略地点がトリトン基地でなくて、アニメ冒頭に破壊したダカールになるわけで、かなり違いがあるようだ。もしかしたら原作小説8巻は完全カットの可能性もあるかもしれない非常に残念だ…。
ここから2回目の感想
Blu-rayが発売されて、持ってる巻全てを再鑑賞したわけです。
ちなみに小説も対応した巻は読み終わりました。
本作は音楽が凄い
特典としてつく、解説書には音響担当の方のインタビューが載っているのですが、そこで「本作は音と画の戦いだった」と書いてあったと思うんですよね。それを意識して見ると終盤のロボット同士の戦闘シーンが凄く印象的で胸の奥にずしんと来ました。
これもまた「ガンダム的」であると思うのですが、元々ユニコーンの音楽って凄く良いと思うんですよね。ゲームとかに他のシリーズと交じると違和感が多少ある程聞き心地が良くてさ。
そのパワーに負けないような感情のこもった台詞を発して、終盤の戦闘シーンはかなり名シーンになっていたと思います。
感動し過ぎて、見ながらツィッターで実況してしまったよ。(笑)
ただ全体的に見ると前回と比べるとかなりスローダウンした内容になってしまっている。
またかなり原作小説と内容を変えているのも印象的。
冒頭に小説で戦場になるはずだったダカールをジオンの残党軍が攻撃を終えている。
そして行くべき場所がトリントン基地という『0083スターダスト・メモリーズ』の冒頭の舞台に移されている。この点はロボットの大量出演が自然となる為によくなっているかもしれない。
原作との相違
だが本作のゲストキャラでヒロインであるロニが、いまいち描かれていないのがなんだか微妙で、逆に戦争をどう思うか?バナージの心境やミネバたちの動向などに前半は時間が割かれている。
バナージとジンネマンとの交流もやや少なめになってしまっている。
しかし小説後半を考えると正直OVAの方がロボットアニメ的で面白いかもしれない。
小説の根本のテーマがガンダムから外れて、民族抗争や人種差別などの偏見に満ちたある種の人の心にある闇に注目されている。
また小説では、最悪の殺戮兵器であるシャンブロは4人乗りで、ロニはNT能力を利用したシールドの係で、陣頭指揮を取っているのはロニの父親になっている。
アニメ版ではロニの父親は連邦軍に殺されている、その復讐をすべくロニは殺戮を行う。つまり父親の仇という呪いとなっている。
またアニメのオリジナルさのおかげでどちらかと言えば、ガンダムらしい狂い系のヒロインに昇華されている印象は強いと思う。
フォウ・ムラサメ系かな?
だが小説版では、ロニの父親が民族間問題を吐露し、白人どもは俺たちの国を奪った。殺せ。などちょっと宗教の過激派のような存在になっている。そしてロニは父の暴走に耐えかねて、父親に犯行するのだが…。それを察知したバナージがシャンブロを破壊するという話だったと思う。
しかしロニの父親のポジションを違う視点でロニが受け持つことになりバナージはロニと直接少ない情報むしろ2回目の再会ぐらいで説得することになるわけだが、ここはバナージの人間性でカバーされているとも思える。
しかしロニだけではやはり物足りないわけで、そこで父親のビジュアルのままロニの育ての親というジオン残党軍として登場、結果的に過去作のジオン軍のMSたちが山ほど出てくるというすっごいサービスが展開されるのだ。
過去作のしかも日に当たることも無かったロボットまでが最先端の映像で蘇ったりするのだからやはり古来のファンは嬉しくて仕方ない。
だがそこも成り立たないと行けないので、描写に時間がかかったりとバランス自体はやはり悪い。90分は必要だよな。
でも面白いのが、これまでガンダムには勧善懲悪な作品だったと思うが、ここで描かれるジオンはテロリズム的で、
まさに悪。復讐の矛先という現代の中東の戦争の延々と繰り返される行き場のない怒りとその手段としてのテロリズムが、
ガンダムに盛り込まれているのが、凄いなとまじまじと思う。
ジオンへの連邦の悪意に晒され続けたジンネマンとその中にある元来の優しさを感じとる少年バナージとのやり取りは、
前半と後半見比べても見事。
前作で戦争の為に生まれたそして人としての尊厳を奪われ続けながらもジンネマンのために再度戦地に赴く強化人間のマリーダとの精神の共鳴を起こし、人間としても大きくなり、複数の人間の死、自分の為の死、奪ってしまった死、それらを体験し、精神がボロボロになりながらも立ち上がり、自分のすべきことを見出し、完全に暴走特急と化したバナージが主役として完成。その支えはジンネマンだったわけ。そういうのの積み重ねが見事。
また小説では、リディがガンダムシリーズの有名艦長であるブライトの下に配属される件で、エースパイロット達と絡むシーンがあるのだが、そこが丸々カット。
また実際シャンブロを止めるべくリディと雑魚兵と協力して戦うシーンがあるのだが、この描写がかなり面白くて、シャンブロの最強ぶりが非常に伝わってくるのだが、そのシーンも丸々カット。(笑)
ここは正直見たかったと思うのだが、OVAでラスト2巻になってしまったため、リディをダークサイドに落とすべく終盤の行動のみに絞られた点は少し寂しい。ロボットアニメ的にもおしい。
やはりハイライトは先ほども言った通り、今まで日の目を見ることの無かったロボット達の戦いだ。
連邦軍の軍事基地に乗り込みそこに旧式たちが奇襲をかけるのだ。
パイロットの通信や断末魔はほとんど無いが、映像的には非常に楽しいし真新しい。
また登場シーンフェチっぷりもいい。でもそこから登場しないのもいるんだよな。
どんだけカネあって、どんだけおっさんホイホイなんだよ。
総評
バランスが悪い。
まぁー原作もちょっと行き過ぎたし、OVAとしての尺合わせとか考えたんかもしれません。
そういえばブライトさんの声自然だよね。(笑)
しかし貴重な映像が山ほどあるマニア向けの作品としては本当に貴重です。オススメです。
あと終盤の戦闘での台詞の掛け合いとBGMは鳥肌ものです。
部分的には非常に良いと思います。
Blu-rayのジャケットが本編と無関係なのが微妙。
バナージ「それは願いなんかじゃない呪いだ!!」
ロニ「親に血肉を与えられた子の定めなのだよ。」
ロ「これは私の戦争なんだ!!」
ロ「…ジークジオン…ジーク…ジオン…ジークジオン」
リディ「諦めろ!!」
「ロニ。おれたちの戦争は終わったよ。」
リ「可能性に殺されるぞ!!」
リ「そんなもの!!捨てちぃまぇぇぇぇぇぇ!!」
バ「ああああああああああああああああああああああ!!」
ロ「バナージ…哀しいね…。」
バ「撃てませーーん!!(泣)」
いや終盤は何度見ても感極まるな。
エンドロールが真っ暗なのが残念!!
そういえば、本作での終盤のキャラって親に縛られた子供達の戦いなんだなぁー。気づかなかった。
それぞれの立場の違いが胸熱。
ネタかと思ったらユニコーンがデストロイモードになった時の衝撃波って、サイコフィールドなんだね。知らなかった。超能力的なものかと思った。笑
あと実際ロニは最後の最後で戦うことを辞めたけど、サイコフレームの暴走により機体が殺戮を止めず、リディがとどめを刺した構図なんだな。
普通のアニメでは体感できない濃厚さが味わえる。本当にすごいシリーズ。
3回目の感想は追記という形にしました。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9/10
・映像のアプローチ 10/10
・映画の美術面 10/10
・キャラクターの魅力 10/10
・音楽 10/10
・上映時間と個人的趣味 8.5/10
88点
なんでBlu-rayのジャケット絵がロニじゃないんだ!!
ガンダムUCシリーズ感想リンク一覧
・◯機動戦士ガンダムUC/episode 1 ユニコーンの日 ◯ 66点
・◯機動戦士ガンダムUC/episode 2 赤い彗星◯70点
・◎機動戦士ガンダムUC/episode 3 ラプラスの亡霊◎85点
・◎機動戦士ガンダムUC/episode 4 重力の井戸の底で◎88点
・◎機動戦士ガンダムUC/episode 5 黒いユニコーン◎84点
・◎機動戦士ガンダムUC/episode 6 宇宙と地球と◎78点
・◎【81点】機動戦士ガンダムUC/episode 7 虹の彼方に 【MX4Dで見た!】◎
・◎【80点】機動戦士ガンダムNT【映画感想】
・ 【コミック】機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男【感想】
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