「素晴らしいぜ!!Mr.フォックス!!」
2009年アメリカ、イギリス映画
監督
ウェス・アンダーソン
(『天才マックスの世界』『ムーンライズ・キングダム』『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』)
声の出演
ジョージ・クルーニー
ジェイソン・シュワルツマン
ビル・マーレイ
あらすじ
イギリスの児童文学「父さんギツネバンザイ」の映画化作品。
泥棒のMr.FOXはある日、恋人と家畜を襲っている最中大ピンチに遇う。その時、恋人から身ごもっているということを告げられ、もしこのピンチから逃れられたら、泥棒家業を引退することを誓うのだった。
それから2年後。
すっかり堅気になったfox、息子もすくすく育ちましたが、息子とはいまいち仲良くできない。
そんな中、FOXは引っ越しを決意しますが、その付近には人間の野心家三人集の牧場と農場と工場がありました。
ふつふつと燃え盛るあの時の感情、FOXは押さえることができずに…。
そしてFOX家には、叔父の息子のクリストファーがやってくるのですが、ちょっと変わった性格の持ち主ですが、運動能力も抜群で、頭脳明晰、若し頃のFOXのようです。そんな彼に嫉妬する実の息子のアッシュ。FOXはクリストファーを大いに評価してしまう。
着々と盗みをこなすFOXと相棒ですが、ついにそれが人間たちにばれてしまい、野心家三人衆は協力して狐たちを殺そうとするのですが、事態はさらに悪化しその地域に住む動物たちに危害が加わり…。
2011年4月4日劇場鑑賞(2011年度5本目)
2013年1月30日Blu-ray鑑賞
感想
ウェス・アンダーソン監督の最新作(と言っても全米公開は2年前の2009年。)はまさかの人形を使ったストップ・モーション・アニメーション。
ストップ・モーションアニメは生きてないものを生きてるように見せ、更に1コマずつ物をかすかに動かして撮影したもので作られた映画。
この手の映画だと一番有名なのはやっぱり「ナイト・メア・ビフォアー・クリスマス」だと思う。近年だと同監督の映画「コララインとボタンの魔女」かな。ちなみにストップモーションアニメの特徴はCG無しで作るのが心意気、今ではそんなこと大手スタジオ系の映画製作では敬遠しがちなことで、そういうことをするというのは、アート系の自主制作の映画監督がするという感じなのですが、それをアメリカ出身でありながらフランス映画の要素を意識している新時代の映画監督のウェス・アンダーソンが2年という時間をかけて作ったのが本作というわけです。(そういえばティム・バートンの『フランケン・ウィニー』はCG使っているように見えたなぁー。あれはどのくらい労力かけたんだろう?)
とりあえずこの監督知らない人も多いと思いますが、この監督は映画が好きなら知っていた方が良いと思う監督です。
メジャーな映画は撮ってないのですが、独特のテンポと世界観を強くもった監督で、自分は『ザ・ロイヤルテネンバウムス』と『天才マックスの世界』を鑑賞したことがあります。
アメリカの映画界でも彼と仕事をしたがる人が多いようで、一度共演すると、常連になるケースが多いです。特にジェイソン・シュワルツマン(天才マックスの世界で主演)とビル・マーレイとオーウェン・ウィルソンは頻繁に出てきます。
また製作面でも癖のある映画を手がけてます。家族の崩壊を描いた「イカとクジラ」など。
そんな陰ながら映画業界で手腕を広げる、あまり知られてないやり手の監督の最新作が、このストップ・モーション・アニメの狐を主役にした児童文学のファンタスティックMr.フォックスになるわけです。
まず注目すべきは豪華過ぎる声優陣。主役には、色男のジョージ・クルーニー。更にその妻は、メリル・ストリープで脇にはおなじみのビル・マーレイやジェイソン・シュワルツマン、スパイダーマンのゴブリンでおなじみのデフォーさんもボイスアクターになっているというわけです。
内容は、児童文学をもとにしているとは言え、実際児童文学のような単調さを含みながらも随所に大人向け、映画好き向けのマニアックな演出を凝らした傑作だと思われる。
またそういった単調な物語を人形アニメで描くこと自体が粋なことで、物語に驚きはなくとも、単調でしっかりした骨組みを用い、そこに自分の個性を存分にぶつけた最高な一本だ。
また人形の作り込みなデザインなどもすごいが多種多様な動きも賞賛したいし、時折ルール無視した動きとかも最高。
人形を作ったのが、先ほど紹介したビフォアー~やコララインの人形の人たちだったらしく、上質過ぎるお仕事を垣間見られまくりだったりする。ただそれ以上に驚きなのは、映画の舞台の多さだ。
今作のすごいところは、移動がかなりある。時間軸も思った以上に長いスパンを描いた映画で、挙げ句にキャラクターたちの種類も多様、個性も多様で、とことんコミカル。
また監督自身の遊び心も強く出ており、個人的には食べ物を食べるシーンの野生っぷりはかなりつぼだった。グハウグハグハウ。
またアクションシーンが文句無しに面白いことも忘れては行けない。運動神経抜群のクリストファーの経歴はすごい物で、カンフーも披露してくれたり、終盤はハリウッドっぽいアクションだ。そのレベル『ウォレスとグルミットの野菜畑~』と同格の盛り上がりぶりだ。
俺たちの出来ないことを簡単にやってのける。そこに痺れる憧れる。
物語面も実は単調ながら評価したい、父親が主役の物語だが、過去の栄光が忘れられず、自分自身の為にまた過去の自分に戻ろうとする下りや終盤の息子との駆け引きなどなど、物語としてもなかなか上質だったりもする。知らない間に相棒として定着して妙にしっくりきたりとなかなかだ。
ただなんだかんだで、映像がすごい。
ラストシーンもうけるのだが、その映像が驚きの広角で奥行きのあるシーンで、主役たちは30cmの人形なのだが、そのセットを広大に作ったりしていて、すごいんだよ本当に、さすがに2年前の映画というわけですが、別に色あせることもなく、衝撃を与えてくる一本になった。
しかもやっている映画館の数がとても少ないのが全くもっておしい。
本作は多くの劇場でやるべきで、家族そろってみることをとても進めたい。どの子供作品よりも上質でお父さんも感動できる芸術的価値の高い異色作だ!!とてもおすすめだ!!
ここから2回目の感想。
正直、前回観た時の感想がなかなか良い感じで、蛇足ですが、感想でも書こうかと。
以前からBlu-rayを狙っていたのですが、ふと見てみると半額以下で販売されているでは有りませんか。(定価だと5000円。)
これは買わないわけには、いかんと思い購入しましたー。(タイミング的には、ウェス・アンダーソンの最新作の『ムーンライズ・キングダム』が公開されるからそのタイミング狙ったのかな?)
そのままBlu-ray未開封で補完かな?と思ったら衝動的に鑑賞開始。
2年ぶりの鑑賞ですよ。
いやーまずあの人形劇?いやウェス・アンダーソンの描く動物の世界にまたも入れることに喜びを感じる。
ストップモーションとしての技術の高さは全く気にならず、違和感を感じずにちょっと子供向けでありながら、監督の感性を発揮させた複雑な動きが事細かに描かれる。
それを気づくか?気づかないかの瀬戸際がもの凄いんだよな。
ウェス・アンダーソンのおふざけが、実際再現するのにどれだけ難度の高いことなのか。
それをさらりと描いているのが、そこに痺れる憧れる。
しかも狐と人間の戦い。
その人間たちがデブチビノッポというわけで、そのウェス印のデフォルメが最高。
更には、その単調な物語とそれを彩るウェスのおふざけがやっぱり良い。
音楽も良い。さすが独立系のノットメジャー主義な作家主義を貫いてきただけある。
至福の時を感じさせる。
それなのに主役の声はジョージ・クルーニーだし、その妻役は、メリル・ストリープとやっぱり凄い。
もう4年も前の映画なのに、全然色あせない。
2年の歳月を費やしただけはある。
というか、ストップモーションアニメの傑作って本当にやばいの多いよね。
ちなみにこの年のアカデミー賞は『カールじいさんの空飛ぶ家』に持ってかれました。
うーどっちも好きだがちょっと悔しい。
オチもにやにやできるが、人間的ドラマは少ーし薄めかな?
得点
88点
一度は見ておきたい一本に認定。
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迷わず買え!!
ファンタスティックMr.FOX [Blu-ray] 2000円
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