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☆【90点】ミッドサマー【解説 考察 :胸糞夏至祭が神々しい】☆

ミッドサマー

製作

2019年アメリカ映画

デビュー2作目で
この胸糞と質の高さは異常。

監督

アリ・アスター
ヘレディタリー/継承

キャスト

フローレンス・ピュー
ファイティング・ファミリー
・ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
・ブラック・ウィドウ

ジャック・レイナー
シング・ストリート 未来へのうた
トランスフォーマー/ロストエイジ
・フリー・ファイヤー

ウィル・ポールター
・メイズ・ランナー
なんちゃって家族
・デトロイト
ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島

あらすじ

アメリカの大学生のダニー(フローレンス・ピュー)は問題のある妹テリーに悩んでいた。
彼女は家族を恨んでおり、自殺をしようと企んでいるように思えた矢先、
テリーは車の排気ガスを用いて自殺。
その自殺は彼女の両親を巻き込んでいた。
天涯孤独の身になってしまったダニーが頼れる存在は、
彼氏のクリスチャン(ジャック・レイナー)だけになってしまった。
だがクリスチャンはダニーとの関係を終わらせないと思っていたが、踏ん切りがつかなく、
テリーの自殺により精神的に傷ついたダニーを見捨てることができなくなってしまった。

クリスチャンは文化人類学を専攻する大学生で、
夏休みを利用して、クラスメイトのペレの故郷のスウェーデンに行き、
彼の出身のコミューンのお祭りに男性友人グループ4人で参加しようと思っていた。
そのことをダニーに言ってなかった彼は、仕方なく誘う。
ダニーは最初は拒むが、ペレの誘いにより行くことを決心する。
男だけの水入らずで薬物やフリーセックスを期待していたマーク(ウィル・ポールター)は、
ダニーが来ることで退屈な旅行になってしまったことに腹を立てていた。
黒人のジョシュはこのお祭りや他のお祭りにも参加し、大学の卒論にあてようと考えていた。

そしてスウェーデンの山奥のホルガにたどり着き90年に一度の夏至祭りに参加することになった。
彼らだったが、それは彼ら独特の文化と信仰が合わさった、人を犠牲にする狂ったお祭りだった。

2020年2月24日劇場鑑賞 2020年10本目



お腹痛くなった

『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター監督の作品。
今作も高い評価を得ていたので、巷はコロナウイルスが始まったばかりで、
自分は痔の手術明けだっていうのに、
クッション持って劇場に行ってきました。
うん。めっちゃお腹痛くなった。

前作もなかなかお目にかかえれない不愉快な家族の崩壊と悪魔崇拝という
おそろしき人間ドラマホラーで、違う意味で感動したのと。
不愉快すぎる人間同士のぶつかり合いや、首ギコギコなど忘れることのできない
シーンが山ほどあった別次元のホラー映画として大傑作だったわけでしたが、

今作も別次元のホラー映画として忘れることのできない大傑作だった。

前作ではアリ・アスター監督が長年抱えていた家族との軋轢と家族の病について、
セラピーしたような映画だったが、
今作は監督の失恋の痛みを込めた恐ろしい人間ドラマ映画。

人間本当に精神的に辛い時、人の気持ちをわかろうとする人間よりも、
自分のように感じてくれようとする他者の存在の感謝のいい面が本作ではすごく伝わってくる。

元々はスウェーデンのお祭りのホラー映画を依頼されたとかなのに、
このような恐ろしい映画にしてしまうんだからアリ・アスター監督天才過ぎ出し、
めちゃめちゃお腹痛くなるぐらい不愉快すぎる作品だし、
それなのに映画としての絵作りが前作同様に抜群に優れていて、
不愉快で気色悪くし、めちゃめちゃしんどいのに、
映画としての構図の数々や演技力の高さ、
つまり映画としての完成度がめちゃめちゃ高くて見ていられる。

すごいよ本当に。

冒頭から胸糞炸裂。映像やばし

冒頭から衝撃的な自殺と死体、
さらに息苦しい接写のカメラワークで、見る人を追い詰める。
車の排気口からチューブを伸ばしてそのまま口に差し込んで死ぬ妹のインパクト。
そういうこともさらりとやってのけられる生粋のホラー映画好きのアリ監督。

そこからの不穏音と雪崩れ込むような安っぽい男女の距離を怒涛に入れて、
安易な人間不信を彷彿させる圧倒的なテクニック。
その痛みの描写も巧みに演じきる若手俳優のフローレンス・ピューすご。

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トイレで過呼吸に苦しんだかと思いきや一気に飛行機までジャンプカットして、
スウェーデンに移行。

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そこからの急なホルガという異郷の地。
山奥のお祭り。
でもそこの人々は映画でよく見る西洋人。
その何の変哲のなさと違和感のない会話、
さらには馴染みのある映画などなど、
見る側をただの旅行者とイベントと思わせられたのは束の間、
本作の企画としてスウェーデンの祭りに参加したアメリカ人たちが惨殺されていく、
スプラッター映画は刻一刻と迫っていた。

異郷での巧みなアシンメトリーと美術

映画的にすごいのはやはりセット。
ホルガというカルト宗教集団のキャンプ地をコミカルさの中にダーティーが混じった
ブラックユーモアたっぷりの絵。

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その絵は実は映画の展開を物語っているという緻密っぷり。
そういったネタも盛り込まれているが、
独特な異空間を美術で表現しながらも、
映像としてのアシンメトリーによる構図のバランスも終始絶妙。

ホラーあるあるな怖い顔な人のルビンも特に意味もなく出してくる不愉快っぷりなど、
近親交配で閉鎖的社会のルールのモチーフを作って自身の生活を縛ってるカルト宗教の象徴
に利用しているだけの存在だよね。
全てにわたって行き届いている不快な映画。
上質ですごい。
夏至祭というエキゾチックなダンスや服装。

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閉鎖的コミュニティのルールからなる様式美。

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その一つ一つが洗練されていて、映画のフォーマットは全くもってホラーじゃないが、
この全てがペイガンのカルト宗教者というだけでいとも簡単にホラーで不快なものとなる。
その秀逸な脚本も含め見事すぎる。

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そして1人ずつ大地に帰っていく

結局はスラッシャーのジャンル映画の骨格にぶったまげた不快な皮を被せた映画。
アメリカの大学生たちはこの地に足を踏み入れたら最後、
彼らのえじきになっていくのはこの手の映画の通常上映。
しかしその一つ一つが禍々しく、彼らの中の正義のため、悪意のない善行こそが、
邪悪なわけでして、不愉快極まりない。
そして意味のあるとしていることも結局は意味のないことであるのもカルト宗教の特徴だよね。

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殺されるのぴったりすぎるちんこ腫れ太郎ことウィル・ポールターは皮を剥がれて、
勉強熱心だった黒人はダメって言われたら撲殺されて、
ラブラブだったカップルはそれぞれ殺されて、1人は鳥の餌になりました。
そして最後にダニーの恋人は、見事に浮気を強要されて、
めでたく熊の着ぐるみを着せられて燃やされることになりました。
そうして彼らの神の生贄になるのです。
合掌。

キレッキレのゴア表現とお花女子感

冒頭の妹の排気ガス死の顔芸の切れ具合異常だったよね。
その後は少しなりを潜めたと思ったら、
逆さま映像で不愉快にして、
そのまま一気にこの夏至祭頭おかしい!というのが明白になる
姥捨崖での自殺からの自殺失敗者の頭蓋骨叩きという、
R18にすべき描写が披露されて、こういうの苦手!!って思ったら、
なんかお花で彩られた人やファッションでほっこりさせる、
塩に砂糖かけたら調和されるでしょ?
みたいな強引な味付けで、脳が麻痺してくる切れ具合。
さらには作中では終始ドラッグ使用シーンも多々あり、
白夜の異常性もあって、とことん脳が麻痺していく。

儀式もあれば、
惨殺死体にお花も添えられて、
とことんやばいものなのに、
全部がやばくて麻痺していく。
一時期フジロックとかではやったお花を服のコーディネートに合わせる人が、
今ではホルガの人なのでは?と思わずにはいられません。

ダニーはホルガにとってなんだったのか?

ペレによって導かれたダニーはあらかじめきまっていたかのようにクイーンになる。
彼らの巧みな薬物を使用してクリスチャンをはめて、
ダニーの怒りをかい見事に焼かれたクリスチャン。
全てがこのカルト宗教者の犠牲を出さないで夏至祭を終える策略だったかのような顛末。

心の弱ったダニーをペレは見抜き、生贄のエスコート役として選んだのか?
それともダニーを自身の過去と重ね、彼女の辛みを理解するにはこのコミニティの
共生関係こそが理想であると確信し、ペレは彼女を迎え入れたのか?
そして劇中で天啓を得てスウェーデン語を理解しだすダニーは幻覚を超越し、
神に出会ったのだろうか?

全くもって意味わからんし、常に薬物を処方されている彼らだったので、
何が現実かもよくわからんが、結局は外部のものが食い物にされる恐ろしいホラーであった。
そして辛い人には、寄り添う以上の感情理解という思いやりがやっぱり必要だということだった。

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無理解であった彼らはだから死んでしまったのかもしれない。
あとペレはダニーを狙っていたのかもよくわからんが、
そのよくわからなさが映画に深みを与えていてすごい。

それでもオルタナホラーを2時間半以上で描くのはしんどい

結局人が惨殺されていくジャンル映画であるので、
顛末は悲劇に決まっている。
その一部始終を凄まじいアプローチと邪悪さで見事に描いているが、
長くてしんどいことは変わらないと思う。
しかもディレクターズカット版は3時間もあって、
殺され方が不明だったキャストがちゃんと儀式によって殺されるようだ。
それ以外でも彼らの調理してるの人肉じゃね?とか色々と気になることが山ほどあったが、
それらはぼかしてヒントは出してるが、明確に描かないの連続なので、
3時間版は全部見せてくれるのかもしれないが、
正直しんどい。
でも映画館とかではなくて、自宅とかなら流し見できそうな濃い作品だなぁと思った。
もう一度見たくはないが、流し見ならいいかなという贅沢発言です。

とりあえず、アリ・アスター監督の今後の作品も劇場で見ちゃいそうだなって思いました。

hisSCORE

・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9/10
・映像のアプローチ 10/10
・映画の美術面 10/10
・キャラクターの魅力 8/10
・音楽 10/10
・上映時間と個人的趣味 8/10

90点

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