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◯【73点】リチャード・ジュエル【解説 考察 :トロマな英雄の末路】◯

リチャード・ジュエル

製作

2019年アメリカ映画

オリンピックイヤーに送る
風化させてはいけない権力者たちのミス。

監督

クリント・イーストウッド
・ミリオンダラー・ベイビー
・グラン・トリノ
・許されざる者
運び屋

キャスト

ポール・ウォルター・ハウザー
・アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
ブラック・クランズマン
・レイトナイト 私の素敵なボス

サム・ロックウェル
・月に囚われた男
・スリー・ビルボード
セブン・サイコパス
ジョジョ・ラビット

キャシー・ベイツ
・ミザリー
・黙秘
・タイタニック
・アバウト・シュミット

ジョン・ハム
MAD MEN マッドメン
ザ・タウン
・ベイビー・ドライバー
ホテル・エルロワイヤル

オリヴィア・ワイルド
トロン: レガシー
・俺たちスーパーマジシャン
・ザ・ワーズ 盗まれた人生
・ラザロ・エフェクト

あらすじ

1986年アメリカのどこか。
小さな公立法律事務所にて物品補充と手紙の仕分け作業を行なっていた
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、
全体的に鈍いが真面目で素直でアメリカの法務を尊敬し、
近い将来法務執行機関へ就職を希望してしいた。
彼はその事務所で弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)と出会う。
ワトソンはリチャードを細やかな気遣いをするが、ちょっと鈍い感じを不便に思い、
彼を気にかけるようになり、
2人は業務の隙間時間などを一緒に過ごすことが増えるのだった。
しかしリチャードは念願の法務執行業務であるアメリカ南西部のジョージア州にある
ピエモント大学の警備員になる。 
真面目に働いたリチャードだったが、警備員業務の範疇を超えた取締りを独自で学生に行い、
寮内から複数のクレームがあった為、学長により解雇されてしまう。

リチャードは同州のアトランタにある実家の母ボビー(キャシー・ベイツ)のもとに帰省し、
1996年に開催されるオリンピック関連のイベントの警備員になろうとするのだった。

1996年7月27日、コンサートイベントの警備を担当していたリチャードは、
ライブ本部タワーのベンチ付近にて謎のパッケージを確認。
酔っ払いたちに揶揄われるリチャードだったが、訓練通り真面目に報告し、
本部の中継スタッフやミキサースタッフを非難させ、
警備本部にも連絡。
その日体調不良のリチャードだったが、多くの人々を避難指示を行うが、
仲間たちから彼がトロいので彼も避難指示を受ける。
謎のパッケージは爆弾で、直後に爆発予告が警察にあったのだ。
解除が間に合わず爆発する爆弾。
多くの人が爆風で吹き飛ばされ、一部のリチャードが親しかった警備員も死傷。
運良く避難していたリチャードは無傷。
またリチャードの早期発見と早期の避難指示などの訓練通りの行いで、被害はごく僅かに済み、
彼は英雄とマスメディアに報道されるのだった。
喜ぶ母のボビー。
その活躍を知った現在は独立して貧乏弁護士になっていたワトソンも喜ぶ。

そして現地のコンサートに来ていたFBIのトム・ショウ(ジョン・ハム)は、
今回のテロ行為の捜査責任者となる。
彼の捜査の上で第1容疑者になったのは、現場で1番最初に爆弾を見つけ、
自身は避難を行い無傷のリチャードだった。
トムはリチャードのかつての勤務先のピエモント大学に訪れ
学長からリチャードが強引な自警活動を行い、
正しいことをすることで皆に承認されようとする傾向があったと穿った意見をトムに伝えた。
実際に会場にいたトムは悲惨な事件に怒りを燃やし、
また警備員でありながら現場から去ったリチャードに一方的な怒りを感じており、
彼を犯人と決めつけて疑わなかった。
トムはリチャードを追い詰めるための捜査を開始。
またトムはアトランタ新聞の新聞記者キャシー・スクラッグス(オリヴィア・ワイルド)の
巧みな情報収集スキルと色仕掛けに負け、リチャードを疑っている情報を提供。
キャシーは自身の成功のため、すぐにその情報をアトランタ新聞の一面に掲載。
それを知ったトム達FBIは情報漏れでのリチャードの隠蔽工作を危惧し、
すぐさまリチャードの任意同行を決行。

何もしらないリチャードは今でも英雄気分で仕事に向かおうと考えていた。
しかし彼のもとにトムがやってくる。
トムは、避難指示の見本のビデオ制作のため、リチャードの協力を依頼。
何も知らないリチャードはすぐさま了承。
トムの周りは報道のクルーたちでいっぱいだが、リチャードは何も気にしていなかった。
FBI支局に入っていくリチャードは、そこでビデオ撮影をするが、
読むように渡された文章は、
まるで自分が犯人で自供をするかのおかしな内容の供述書のようだった。
ようやく違和感を感じたリチャード。
リチャードはアメリカ政府の下で法務執行行為えるFBIを今でも信頼し、
全面的協力姿勢ではあったが、
おかしいと感じた彼は、
旧友で困ったら一度だけ安請け合いで助けてくれると約束したワトソンに電話をする。

日用品の買い物から事務所に帰宅したワトソンは、
伝言があっことをアシスタント兼恋人から受ける。
リチャードからの電話に驚く彼だったが、
リチャードがFBIにて第1容疑者とされていることを知り、
彼が犯罪行為など及ぶはずないと直感したワトソンは、すぐさまFBIに向かうのだった。

FBIのリチャードをはめようとする罠の数々、証拠がないため、
新たな証拠を作ろうとする酷い手口に腹を立てるワトソンは、
強引にリチャードを連れて帰る。
それでもリチャードはずっとFBIに協力しようとし、
ワトソンは自らを不利な状況に追い込もうとするリチャードに手を焼きながらも、
善人である彼の潔白を証明するために、奮闘しようと決める。

そして事件現場にて独自調査を行ったワトソンは、
犯行予告の電話とリチャードのいた場所では、その時刻に電話ができないことを確信、
彼の無罪を主張するが、トムはそれを認めようとせずに、
捜査と弁護はリチャードの変な性格で泥沼化していく。。。

2020年1月25日劇場鑑賞 2020年4本目



2020年オリンピック開幕前に風化させてはいけない権力の暴走

1996年のアトランタオリンピック開催時に起きてしまった爆弾テロ。
FBIの捜査で第一容疑者に挙げられたのは、
まさかの第一発見者で率先して避難誘導を行った警備員!!
だが彼には犯行はできるわけがなかったのだが、
暴走する国家権力が彼を追い詰める。

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2020年にもし同様の事件が起きたらあっさり、
無関係な人が冤罪で追い詰められそうだなという
東京というか日本の腐った政府体質に
事前に警報を鳴らすかのように89歳のイーストウッドがメガホンを取った。

製作ゴタゴタ映画

製作には、レオナルド・ディカプリオとジョナ・ヒルの名前のある本作。
当初は2014年頃の製作開始が予定されていた本作。
ディカプリオがブライアント弁護士役、ジョナ・ヒルが主役のジュエルを演じる予定だったで、

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監督にはポール・グリーングラスと社会派作品になりそうな予感がぷんぷんしていたが、
製作は難航し、イーストウッドが監督することになり。
ディカプリオとジョナ・ヒルは降板してプロデューサーとして残ることになった本作。

主演をほぼ無名のコメディアンのポール・ウォルター・ハウザーという機を狙った作品へと変化していったが。。

『アイ,トーニャ』で1番やばかった馬鹿デブオタクが、今作ではトロマデブ誠実野郎という最高の人選

予告の時から、自身の映画センサーにビンビン反応していたが、
やはり凄かったポール・ウォルター・ハウザー。
『アイ,トーニャ』で主役のマーゴット・ロビーも凄かったが、
その相手役のセバスチャン・スタンを超えるパワフルな存在だったのが
このポール・ウォルター・ハウザー。
もともとコメディアンだったようだが、
凄まじい華のなさとファーストフードで構成されたような不健康なデブボディ。
そしてたどたどしくにやにやしながら、自分の好きな話題を話すエゴの丸出し感。
凄まじい場末のオタク感がヒリヒリさせる。
そんな彼が「おれにはコネクションがある。」と『パラサイト』顔負けの素っ頓狂な発言プラスα
の謎の俺は「組織で訓練を受けた」という中2感を超越した電波感が、
馬鹿丸出しなのに狂気全開という、
映画で1番のインパクトを与えてくれた彼がまさかのイーストウッド映画で主役。

しかもまたも辿々しく喋りながら、どこか暴走しがちな危なっかしいが、
凄まじく善良で真面目なトロマな善人が、大きな事件の中心人物になってしまったことで、
捜査も彼を取り巻く人間関係も、そして彼自身も全てがぐちゃぐちゃになってしまい、
国家権力の暴走が際立つ凄まじい混沌とした物語を
イーストウッドらしい鮮やかでシンプルなタッチで、
黙々と語る珍妙な映画へとポール・ウォルター・ハウザーが昇華した。

もはやポール・ウォルター・ハウザーという俳優さんが
こんなにも混沌としたひとなのではないか?
と思いこんでしまうが、本当は表情豊かで元気いっぱいな太ったおっさんなので、
この「もう!お前!何やってんだよ!」なキャラクターは彼の演技で構築されたものだと思うと、
素晴らしい観察眼と人物描写能力の持ち主なんだなと感動する。

via GIPHY

イーストウッド周りもしっかり『アイ,トーニャ』で彼に注目してたんだな。
多分、派手さは当初のものよりも薄くなたけど、ジョナ・ヒルより相当いい人選だと思うし、
デカプリオよりもサム・ロックウェルの方が、
市井の人が善良な市民のために国家権力に立ち向かっていく役柄を
やつれた金のないおっさんという絶妙なディティールを体現できていると思う。

困ったリチャード・ジュエルに翻弄される母親を演じた
キャシー・ベイツがアカデミー賞にノミネート。
それも納得。
終盤のスピーチのシーンなど泣かされる。

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淡々としすぎてる実話映画か??

この手の作品が実話映画2010年代は結構多くて、
なぜか先立って『奇跡体験アンビリーバボー』で映像化されてて、
そっちの方がインパクトがあったりしたが、
今作もそういったことはあったのだろうか?
事件としては見るからにリチャード・ジュエルは無罪なのだが、
持ち前のトロマっぷりでみんなに勘違いされて、
国家権力には良いように冤罪の対象とされるが、
そのジュエルが最終的に導き出した怒りが説得力を実感し、
国家という権力の濫用を恐ろしさと言うか、
それを手にした人間の傲慢さや、
オリンピックという絶大なイベントの圧力の恐ろしさのような、
見えない圧力に市民が苦しむという大いなる災いをオリンピックが孕んでいるということを
この狂った日本政権も知ってて欲しいと思わざるおえないが、

そんなことよりも映画は淡々としている。
抑揚がないし、どこで映画が終わるかが見えてこない。

気がつけば映画は終幕を辿るのだが。。。。

衝撃のエピローグ

事件から7年が経過し、ようやく真犯人が逮捕され、ジュエルは完全な無罪を手にした。
その後文字のでエピローグが衝撃。
2007年に糖尿病関連の心臓病が悪化して死去。
後味の悪さがやばい。

女性軽視問題

本作では女性記者がFBI捜査官に色仕掛けをかけて共犯関係を作り、
リチャード・ジュエルを容疑者としているネタをすっぱぬく。
だがこの女性記者は2001年に薬物乱用で亡くなってしまっており、
この色仕掛けに関しては、現代のジェンダー問題として女性軽視問題があり、
また亡くなってしまっている方なので、
事実がどうかの反論もできない後味の悪い指摘が入ってしまっている。
個人的には、色仕掛けとかは当時あったかもしれないなぁと。
ただ映画的には一方的な女性記者の暴走とFBIのエゴの暴走という
二つの側面が映画的な悪役として確立しており、
劇中でも名誉挽回をしようとする彼女の姿もあるが、
結局はマスコミとして被害者であるジュエルを餌にして、ゴシップとして、
新聞を売ろうとする売名行為の連続だった。
むしろ女性軽視的というよりは欲望という罪への戒めが主だった。
もう少しマイルドな描写にすれば、避けられた批判だったのかもしれないと思った。

hisSCORE

・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7.7/10
・映像のアプローチ 7.5/10
・映画の美術面 6/10
・キャラクターの魅力 8/10
・音楽 8/10
・上映時間と個人的趣味 7/10

73点

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