★この記事をまとめるとこんな感じ★
製作
2018年アメリカ映画
監督
マーク・フォスター
・ワールド・ウォーZ
・ネバーランド
・君のためなら千回でも
・チョコレート
出演
ユアン・マクレガー
・ムーラン・ルージュ
・トレインスポッティング
・スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
・ゴーストライター
ヘイリー・アトウェル
・キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
マーク・ゲイティス
・SHERLOCK(シャーロック)
あらすじ
アニメ映画『くまのプーさん 完全保存版(1978年)』のクライマックスから物語は始まる。
クリストファー・ロビンはテディベアの友達プーとその仲間たちと別れを告げる。
クリストファーは、寄宿学校に入る為に、1人違う地へと旅立つ為、彼らに会うことができなくなるのだ。
お別れパーティーで盛り上がる仲間達、クリストファーは最後にプーに「君のことは忘れない。だから君も忘れないで」と告げ旅立つのだった。
クリストファーを待っていたのは、大人への通過儀礼とは言い切れない辛い日々だった。
躾の厳しい寄宿学校での厳格な日々、友好的な関係でなかった父とは分かり合えないまま死別、成長し就職後、イヴリンと出会い結婚し、子供を身籠った2人だが、出産前にクリストファーは出兵。
無事帰還することのできたクリストファーだが、生まれた子供マデリンは既に大きくなっていた。
家族のために商社に就職することができたクリストファーは、家庭での家族との楽しい日々を犠牲にし家でも仕事を行った。
旅行鞄を扱う部署の中間管理職に出世することができたが、戦争の影響で売れ行きの悪い旅行カバンの部署は、
会社側から経費削減のため、部署内のリストラを宣告される。
翌週始めまでに効果的な対策が検討できなければ、部署事態を閉鎖すると上司から告げられるのだった。
クリストファーは週末に、寄宿学校から帰ってきた娘と妻と3人で実家で過ごす予定だった。
妻のイヴリンは、娘が父の言いつけ通りに勉学に励んでいるのにも関わらず、彼が交流を持つ時間を作ろうとしないことに腹を立てていた。
案の定週末も不参加ということで怒りはピークだった。家庭も仕事もうまくいかないクリストファー。
翌朝、食卓には1枚の絵があった。娘が屋根裏部屋で見つけたクリストファーの宝物の中にはプーと過ごした日々を描いた絵があった。それを懐かしみながらも、別れを告げて職場に向かう彼。
プーは久しぶり目覚めた。
しかし100エーカーの森は薄気味悪く、仲間達の姿がない。
プーは助けを求め、1人クリストファー・ロビンの下に向かうことにした。
運よくそこはクリストファーの家の前の公園。
2人は再会するが、クリストファーにはプーが煩わしい、彼を追い払うために、仲間を探すために、実家に帰るクリストファーだった。。
2018年9月15日劇場鑑賞93本目
感想
しばらくは見た新作映画の感想を頻繁に書いて、アクセス数を増やしたいと思う。
実写プーさん可愛すぎ
プーさんのその後の世界を『くまのプーさん』シリーズとしては7年ぶりのディズニーの映画化。
監督は、この手のヒューマン(『ネバーランド』)を撮ったマークフォスター。
この監督が有能かどうかは悩ましい。
海外評価としては、メタスコア(批評家平均評価)59点とまずまず悪い点数ですが、
観客評価が、2018年9月16日時点では、10点中7.7点と良い点数なので、鑑賞した。
公開前から注目してたのは、やはり実写化に際したプーの姿。
うまくテディベアの姿そのままで動くという、猫ばりの破壊力のある可愛さ。
もうこの姿のプーだけでも十分映画1本楽しんだと思えるわけです。
ちなみにホットトイズで精細に表現されたプーが発売される。
3万近くするが、破壊力本当にやばい。映画見る前に欲しくてやばかったが、映画見た後だと冷静になって我慢できそうだ。
ユアン・マクレガーのキャスティングがなかなか。。。
見ていて、ユアン・マクレガーから醸し出される普通感。
これがすごくいい。
あの10代になるまでに誰しもが持っていただろう想像力。
脳内のイマジナリーフレンドと駆け巡った日々の数々、多くの人はその思い出を脳の隅に大事にしまいながらも、
大人になる家庭で、自分と違う考え、育ちの人と共存して、自分の立場を守るために、いつしか恥ずかしいことと
完璧に鍵をかけて、むしろ中古で売ってしまったり、さらには誰かに譲ってしまったり(『トイ・ストーリ3』)
してしまったのではないか。
そうやってどんどん無感症になっていき、休日もすることも楽しむこともなく、溜まって行く仕事の処理をすることで、
生活を維持するための給料のために、時間と心をすり減らして行く。
そうやって大人になった感、優男なのに無味な人間になった感、それをユアン・マクレガーが凄まじく醸し出している。
そもそも声も高く、よく喋るキャラを演じる彼、中盤以降のプー達によってめちゃめちゃにされる日常でのリアクションの数々の定番ぶりが違和感なく鑑賞する余暇を与えてくれる。
脇を固めるペギー・カーターことイヴリンも真の強い女性として理想的。
この理想的で毒の少ない作品が、ちょうどいい。
特に長時間残業が普通、残業しないやつは悪。生産性とは無縁の老人の作った社会とも言える日本では、
この内容は数多の選択肢を技術の発展で垣間見て大人になってきた30代の就職氷河期を経験した人々には、
ツボにはまるのではないだろうか。
「それって風船より大切?」
大切に決まってるだろ!と思うが、大切になんてしたくない、全部しがらみを捨てて、遊びたい。
何もしたくない。
でもこっちは生活を維持しないといけないんだ。
そうやって心に鎧を背負っている我々にとっては、夢のような物語なのかもしれない。
闇深いメタファーがある映画
と何とも安っぽくてペラペラな映画だなぁと思ってたが、
終始違和感を感じる。
この映画には重いメタファーがあるのではないか?ずっと見ていて歯がゆかった。
帰還兵のセラピー映画なのでは???
厳密には描かれていないが、
劇中でクリストファーは戦争を経験している。
映画ではわずかしか描かれないが、戦争に行ったらだいたい人格変わるのではないか?
想像力は奪われ、惨たらしく死んで行く仲間、
たまたま大した負傷もせずに帰ってきたクリストファー。
そりゃあ精神もやられるだろう。
本編でPTSDみたいなシーンは全くないが、あっても良かった。
今作はどう考えてもセラピー映画だったが、本作の本質はこの「心はまだ戦場にある」も背景にあってもおかしくない。
また映画では全く描かれないが、
実際には、この「クマのプーさん」という原作は、相手をしてあげられない息子のために父が書いた本として、
実名で書いてしまった本として有名だと思う。
寄宿学校で厳格に育てられた以外にも、現実とリンクする部分があるとしたら、有名人の息子兼登場人物として、思春期の嫌がらせの矛先になったことは容易に想像できる。
消したい思い出として、プーのことを忌み嫌っていてもおかしくない。
その闇を解いたのもまた、幼少期の大事な思い出、
正直プーさん達はイマジナリーフレンドだと思ってた、『トイ・ストーリー』のようにおもちゃだと思っていたが、
どうやら違ったようで、そこの変なファンタジー部分が映画として曖昧に描いている点もかなり置いてけぼりで、
レンズを外してみると仕事と家族のストレスで精神が壊れた男が、またイマジナリーフレンドを呼び起こして、
家族に迷惑をかけながらも家族も理解し、共に歩むという壊れた男のセラピー映画なのかなと思ったりする。
映画のラストシーンでプーさんと同じ赤いチョッキを着たクリストファーは、
元々はクマのプーさんやイーヨ、ピグレットなど自分の感情臆病さ、馬鹿さ、のんびりさ、焦り、知識、ストレスなど、
分解した感情のメタファーだったものが、プーさんの絵を見たことで再度蘇り、全ての感情を取り戻し、
最後の最後で自分のアイデンティティーを取り戻したことを赤いチョッキを着た自分=優しいノロマのプーということで、
家族と一緒に取り戻して行くという、これって戦争から帰って着た人間が自分を取り戻す物語と何も変わらないのではないか??
と思ってしまった。
しかし映画はドタバタ劇としてヒューマン部分にメスを入れず、家族の再生とドタバタ、そして仕事の成功という
良いものだけを観客に押し付ける、ディズニーらしい安いヒューマン映画になってしまった点は、
残念だったなと思う。
ディズニーによってだいぶ本来の主題をすり替えられてマイルドになった映画だと思う。
それでも実写化されたプーの可愛さは半端ないので、良かったなと思うが、
歯痒く、思ったよりも面白くない映画だったなぁと思った。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 5.5/10
・映像のアプローチ 7/10
・映画の美術面 9/10
・キャラクターの魅力 6.5/10
・音楽 7.5/10
・上映時間と個人的趣味 7/10
68点
マーク・フォスターのカット割りなどヒューマンドラマを得意としているからかすごい良かった。
ユアン・マクレガーもすり替わった主題にはぴったりな配役だった。
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