『ヒットマンズ・レクイエム』のレクイエム
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに
製作
2022年イギリス・アメリカ映画
監督の意図がわかれば面白いんだよなぁ
監督
マーティン・マクドナー
・ヒットマンズ・レクイエム
・セブン・サイコパス
・スリー・ビルボード
この映画で主演する俳優は誰か?
キャスト
「イニシェリン島の精霊」はどのような設定の映画か?
ネタバレ あらすじ
2023年1月27日劇場鑑賞
2023年8本目
帰ってきたチーム『ヒットマンズ・レクイエム』
2017年に
『スリー・ビルボード』にて
最悪な事件の遺族たちの怒りから
更なる悪夢を描き
アメリカの闇を燻り出し
賞レースを騒がせた
マーティン・マクドナー監督が
最初の長編映画
『ヒットマンズ・レクイエム』
でチームを組んだ
コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンと
再び主演と監督脚本で映画を製作!!
今回はマーティン・マクドナー、
コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソンの
ルーツであるアイルランドを舞台に
1923年のアイルランド内戦時の
対岸にある架空の島で突如
絶交することになった2人を中心に
巻き起こる相変わらずの悲劇のお話。
本当は舞台作家のマーティン監督
と
『ヒットマンズ・レクイエム』や
『セブン・サイコパス』のイメージが
自分としては強かった
マーティン・マクドナー監督。
サスペンスコメディという印象が得意と
思っていたんですが
『スリー・ビルボード』の詳細は
明かさないが怒りの炎は燃え尽きない
というぼんやりとしたメタのテクなどを
見てどういうこっちゃと思ったんですが
この人同時並行で
イギリス近郊にて舞台作家としても
制作していて
むしろ舞台出身で映画は途中から
という人じゃありませんか。
またこれは本作品のパンフを
追うことで詳細を知ったわけですが
リーナン三部作やら
アラン諸島三部作やらと
アイルランドを舞台にした
舞台作品を製作して高い評価を
得ていた人が
映画にも進出したというのが
マーティン・マクドナー監督の
経歴から読み取る
正しい理解だったんだよなぁと。
また『ヒットマンズ・レクイエム』や
『セブン・サイコパス』は
どちらかといえば本流ではなかった
とも言える。
全然思い出せないから
もう一度見た方がいいんだよなぁ。
今作の指切断というグロテスクな要素や
『スリー・ビルボード』での焼殺や自殺や
唐突な襲撃などは
むしろ舞台作品の色が濃いことを
パンフレットのコラムから
知るのであった。
ミニマムな関係ないでの殺人や愛憎劇を
そして暴力的で残酷な人の醜さを
滲み出す作風が強いなぁという印象。
壁にぶつけて殺したり
ショットガンを短距離でぶっ放したり
唯一愛する猫が頭を叩き割られて殺されたり
まぁー『ヒットマンズ・レクイエム』でも
無関係な人が殺されたりしますよねぇと。
今作は元々舞台作品で製作していたが
紆余曲折あり映画になった作品。
アイルランド3部作という
故郷の閉鎖的でありながらも
のどかでむしろ退屈であるという
ルーツ的なものを題材にしつつ
ライブ感を持って映画作品
としていると思うのでした。
映画としては地味でいて
と映画本編としては
上映時間109分という
1時間半ちょっとの近年の
2時間半〜3時間ぐらいの大作に
比べるとかなり小ぶりで
見やすい内容
いや正確には
全くもって地味な小話
1920年代のアイルランドの孤島を
舞台という
文明開花の乏しい
閉鎖的ながらも美しい光景の
広がる田舎。
この地で唐突で強引な仲違いにより
混乱から狂気に進んでいく
2人の中年の物語と
それに巻き込まれる
女性と青年とそして動物たちという
本当にシンプルなドラマ劇
見ている最中は
退屈だし痛々しいなぁ
と思ってたなぁ。
まさかコルムが指全部切断して
挙句に投げつけてくるとはなぁと。
そしてそれ食ってロバさん死ぬ
とはなぁと。
いやまぁ相変わらず意地悪だなぁと
と見ている最中は
この救いのない物語だったなぁと
思ったわけですが。
隠喩に気がつければ
と実際のところ
シンプルな人間の憎しみ劇
かなぁと思うと
そうなんだけども
作品としてはめちゃめちゃ
その背景にある
監督の意図がやっぱり
しっかりしてるんだろうなぁと。
パードリックがコルムがアイルランドの内紛のメタファーだったか?
とまぁ対岸のアイルランドの内戦が
時代設定的に描かれるのは
やはり2人の関係が
そもそもアイルランドの内戦
なんだろうなぁと見終わって
思うわけです。
最初仲良かった2人が
思想の違いにより唐突に対立。
結果的にはコルムのテロ的な
行動により無関係で純粋無垢な
ロバが亡くなり
ついにパードリックもコルムを
殺そうと反撃をすることにする。
このロバがまた戦争に
巻き込まれてしまった一般人の
メタファーとしてあるのかなぁと。
またうまいのがこの戦争という部分に
おいては社会背景とも絶妙にリンクし
ロシアとウクライナの戦争や
巻き込まれる人
逃げ出す人とそういう
現代の時勢にもリンクしている点も
賞レースに関わっているなぁと
思うのでした。
そして最終的には
対岸の内戦が終わったように思え
2人の内戦も終わったか?
と思いきや
今度はパードリック側から
内戦はまた始まる
中断しただけだと
暗い会話をしているのが
またリアルな戦争というものの
暗喩だなぁと思いました。
精霊が二つの死を見守って
とこれも隠喩の解釈だが
その内戦という部分を
俯瞰して2人の中年に置き換える
あたりは神の視点をもとに
映画の物語が紡がれているのかな?
と思ったりもする。
そしてこの顛末的な部分
死ぬのはパードリックと
コルムかな?と思わせといて
パードリックの愛するロバと
突如亡くなってしまった
ドミニクというところの
ミスリードの誘い方と
意地の悪さ
いや神として君臨する
マーティン・マクドナー監督の
えぐさを実感する。
考察:本当はパードリックが死ぬはずだったのでは?
とパードリックを愛する
妹のシボーンはこの島に嫌気が
さしながらも残り続けていたが
ある日のイニシェリンの化身とも思える
老婆との咄嗟の会話をきっかけに
島を出ることを決めたのでした。
この時の
シボーンが聞いた言葉の内容は
島を出なければパードリックが
死んでしまうという内容だったのではないか?
と自分は思いました。
島を出なければ最終盤で
警官が前日の酒場での反抗に腹を立てて
殺しに行くこうとしていたのだが
ドミニクが亡くなってしまったという
ことで意気消沈して止めるという
件があった。
このドミニクというのが
シボーンに恋して
普通に告白して普通にふられるわけですが
それを機会に自殺してしまったという
内容がパンフに記載されていましたが
自分としては
ドミニクはシボーンが乗る
船に手を振っており
彼女を見て歩きながら
手を振ったことで
足を滑らせて
落下して亡くなってしまった
自殺ではなく事故死だったと思うわけです。
詰まるところのシボーンが
去ったことでパードリックは
死ななかったのかなぁと思いました。
地味なドラマだけでなく映画の構造を俯瞰することで
と作品としては
地味なドラマだけども
上記の考察を含めた
暗喩的な部分も解釈することで
映画を立体的にも
楽しむことができる
一級の作品に仕上げているわけで
見ている最中よりも見終わった後の方が面白いと思えた映画でした。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 8/10
・映像のアプローチ 8/10
・映画の美術面 8/10
・キャラクターの魅力 7.6/10
・音楽 8.4/10
・上映時間と個人的趣味 8/10
80点
自分はこの構造映画こその技術力の高さがアカデミー賞作品賞を受賞するかな?って思いました。
あとバリー・コーガンさん
こういう役柄が多いものの
動きや動作
そしてキャラの設定含めて
まじもんの人にしか
見えなくてクッソやばでした。
いやまぁそれっぽすぎて
逆に賞取れないやつなんですけどね。
通販
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面白優男として映画を回していく様にとっても感動した記憶があって
そのチームの映画が再び生まれたことに感動した。