★この記事をまとめるとこんな感じ★
『Michael/マイケル』感想:一言でいうと
2026年公開の映画『Michael/マイケル』を劇場鑑賞。点数は66点。ネタバレあらすじは後半の折りたたみ内に入れていますが、本文ではマイケル・ジャクソンのキャリア描写や映画の構成について触れています。
音楽とステージ再現は文句なしに強いです。ジャファー・ジャクソンによるパフォーマンス再現は圧巻で、鑑賞後にマイケル・ジャクソンのMVやライブ映像を漁りたくなる吸引力がありました。一方で、映画としてはキャリアの名場面をなぞる印象が強く、父親の支配からの脱却というドラマに回収されすぎているため、人物の異様さや創作の深みに踏み込み切れていない物足りなさもあります。
良くも悪くも、これはマイケル・ジャクソンの闇を総括する伝記映画というより、キング・オブ・ポップの神話を再点火するためのステージ再現映画です。漂白された聖人伝のような危うさはある。でも、そのプロパガンダ的な熱量にまんまと乗せられてしまう。そんな不思議な映画でした。
製作
2026年アメリカ・イギリス映画
漂白されたマイケルの聖人伝記映画前半戦
監督
アントワーン・フークア
・自由への道
・イコライザー
・サウスポー
・マグニフィセント・セブン
キャスト
2026年7月5日劇場鑑賞
2026年22本目
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概要:マイケル・ジャクソンの伝記映画が登場!
2009年6月に非業の死を遂げたキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンが
『ボヘミアン・ラプソディ』『エルヴィス』に続き、ミュージカル伝記映画化され劇場公開!
監督は、デンゼル・ワシントンの盟友であり、『イコライザー』シリーズや『トレーニング デイ』を手がけたアントワーン・フークア。個人的には当たり外れのある監督という印象ですが、今回はマイケル・ジャクソンの伝記映画に挑んでいます。
亡きマイケル・ジャクソンを演じるのは、彼の甥であり、歌手としても活動しているジャファー・ジャクソン。
本作で描かれるのは、マイケル・ジャクソンが父ジョセフによってジャクソン5のリードボーカルに据えられてから、ソロアーティストとして成功し、父の支配と兄弟グループから離れていくまでの約22年間。127分という尺の中で、バッド・ワールド・ツアーまでのキャリアが一気に描かれる。
家父長制に苦しんだスターの聖人映画
映画は、製鉄所で働く厳格な黒人家庭の父ジョセフが、一攫千金で家族を大金持ちにしようと画策し、小学生のマイケルをリードボーカルに据えて、兄弟でジャクソン5というボーイズグループを結成するところから始まる。
冒頭からマイケルの技術を磨くため、ベルトを用いた体罰を含む練習を行い、子どもたちの睡眠時間を奪いながら成功への道程を突き進むわけなのだが、ジョセフの望みが自分自身の成功にあったのか、それとも家族全員で幸せになることにあったのかは、映画からは読み取りにくかった。
自分がこれまで観てきた黒人家庭を描く映画では、息子に過酷な規律を課す父親像が繰り返し登場する。それがジョセフ自身の子ども時代の反動なのか、成功者になるために家族を踏み台にしているのかは全くわからない。
マイケル・ジャクソンは酷く父親に対してトラウマを感じ、その決別までの心の変遷を中心とした一昔前に流行した家父長制批判の映画を骨格とし、そこにマイケル・ジャクソンの成功としての素晴らしいダイナミックなダンスが肉付けされている映画。
面白いほどに映画の焦点はそこに絞られているのが不思議。マイケル・ジャクソンというスターが、同じくらいのスターとの交流描写はなく、プロデューサーとレコード会社とライブと父親だけで物語は突き進み、その過程でのマイケルが聖人のように家族を愛し続け、そして子どもたちを愛し、病に苦しむ子どもたちに忙しい中駆けつける慈善事業を行うという宗教の教祖のような存在で君臨し続け、これがポップの王様というものだ!とファンや彼の楽曲だけ聴いて好きだった若い層を再教育し、彼の沼に引きずり込もうとする宣伝映画のようでもあり、プロパガンダ的な勧誘作品のようでもあって驚く。
むしろ近年鑑賞した『ボヘミアン・ラプソディ』『エルヴィス』など、同じく今は亡きスターミュージシャンに切り込む社会派要素は一切ない。
フレディが奔放すぎる生活と乱痴気騒ぎにハマり、金も時間も浪費してQueenから孤立し、さらにエイズ発症という現実に直面する点や、エルヴィスが成功を信じたマネージャーに支配され、ラスベガスという黄金の監獄に囚われ、薬物と酒に身を滅ぼして消滅していく点。ショウビズの闇に滅ぼされていく大スターたちに、「生きていればまだ見ぬ境地があったかもしれない」と感じる物悲しさと苦味、成功の裏にある真実の一端を体感するようなカタルシスが、本作には一切ないことに驚く。
むしろ安心して見ていられるドラマの空っぽさは、商業映画の娯楽としては圧倒的に正解だと感じる面もある。
現に今作を見て、帰宅後マイケル・ジャクソンのYouTube映像を漁りまくり。PV見まくり、ライブ映像見まくり、マイケル・ジャクソンとは何者なのか?という疑問に日中の隙間時間が支配されている。ヒー、ヒー!ア!ア!
マン・イン・ザ・ミラー最高!スムース・クリミナルのPV初めて全編見たかもすご過ぎぃ!!!
ここがすごい:ジャファー・ジャクソンのステージ再現とダンス
映画の物語については、やや疑問を感じるほどだったが、やはり全編のダンスシーンは素晴らしい。この手のスター伝記映画として口パクなのは仕方ないが、マイケル・ジャクソンの個性的なダンスや歌い方をここまで再現して映像に収める技術と労力は凄まじかったはず。
劇中では『ビート・イット』『スリラー』のMV、モータウン25での『ビリー・ジーン』、ヴィクトリー・ツアーでのショー、そしてバッド・ワールド・ツアーでの『バッド』が再現される。
キング・オブ・ポップと呼ばれるに相応しい偉業を再現していて魅了される。
結果的に帰宅後はWikipediaでマイケル・ジャクソンについて調べまくっちゃうし、上記のPV以外にも実際のライブ映像も見ちゃうしで、マイケル・ジャクソン凄い!という点とマイケル・ジャクソンの最後について、何が起きてしまったのか??と複雑な気持ちになる。
特にジャファー・ジャクソンは、マイケル独特の喋り方に加え、子ども時代を奪われた反動で常時退行し、5歳児のような幼さを抱え続ける危うさまでしっかり体現している。ダンス以外の演技もかなり頑張っている。顔立ち自体はマイケルそのものというわけではないからこそ、演技や身体表現の努力を強く感じさせる役作りだった。

強いて言うならジャファー・ジャクソンは、今後どう生きていくのか??元々歌手だったが、俳優として活動するのか?それともマイケル・ジャクソンのカバーシンガーのようにクイーンのアダム・ランバートのようになるのか?
描かれなかったマイケル像:世界平和、奇行、後年の疑惑
個人的にはマイケル・ジャクソンに対して思っていたことと今作は乖離があった。
マイケル・ジャクソンって黒人なのに何故か肌白いし、顔面が宇宙人みたいな整形顔だったし、後年の裁判や疑惑に踏み込まない構成であること自体はさておき、ビリー・ジーンって歌詞がかなり過激だけどそれについての秘話とか??「マン・イン・ザ・ミラー」に代表される世界平和や世相批判などをテーマにした楽曲の扱いというマイケル・ジャクソンの全盛期の音楽で世界を変えようとする物語もなくアフリカ飢餓救済のための慈善企画「USAフォー・アフリカ」に参加したことも、映画では描かれない。
本作あまりにも中身がなく、父との確執や『ピーターパン』を敬愛していて、自宅の豪邸を動物園化し出す奇行やマイケル・ジャクソンが取り入れた「ポッピング(Popping)」との出会いが描かれる程度。
敏腕マネージャーを雇うけどもプライベート面ではボディガードと親しくなる程度で、マイケル・ジャクソンに聖人的なイメージを大事にしディスコグラフィーをなぞった程度で驚愕。ジャネット・ジャクソンの存在も感じないし、いい意味で焦点が絞られているのか?しかし同じ黒人アーティストであるプリンスについてはライバル視している描写もあるが、なら同じ事務所で憧れにもなるダイアナ・ロスの存在は??となんかコレジャナイ感も出てくる。
メタスコアが低い理由もわかる:描かないことより、描いた範囲の弱さ
後年の裁判や疑惑をどこまで扱うべきだったのか、という問題は当然ある。ただ、自分はそこを本作の評価の中心には置きません。描かなかった出来事を理由に減点するというより、映画が実際に描いた範囲の中で、マイケル・ジャクソンという人物の異様さ、孤独、創作への執念、父からの支配がどこまでドラマとして機能していたかを見たい。そう考えると、本作は音楽とパフォーマンスの説得力は圧倒的なのに、物語としてはやはり弱い。
続編前提に見える、あまりにもあっけない完結
続編の製作はすでに進められており、第2作に使用できる映像も一部撮影済みとのこと。映画ではまだ29歳というわけで、あと21年間の濃い物語、世界を救おうと立ち向かうが、疑惑の裁判で心が破綻していく現実が存在するわけで、『チェ 39歳 別れの手紙』のようなバッドエンドに突き進むようなきつい映画を是非とも期待したいわけだが。。。
知らんかった:マイケル・ジャクソンの火傷が重すぎる
劇中では、ペプシのCM撮影中に頭皮へ3度熱傷を負う事故が描かれる。この出来事が、その後の鎮痛剤への依存につながったとも言われている。
マイケル・ジャクソンの死因については、総決算のツアーとして行うはずだった『THIS IS IT』のリハーサルで不眠症になり医師に麻酔薬を投与してもらったが、その量が多すぎて亡くなってしまったわけ。。。
この辺りから薬に頼る人生になっているのが感じられて辛い。
その起因については、厳格ならまだしも強欲な父親による強制労働がきっかけという部分もあり、印象に残ってる父の重圧が子を破滅させてしまう『WAVES/ウェイブス』を思い出す。
マイケル・ジャクソンのあの独特なチリチリの髪型ってウィッグだったのか。。
勝手な推測だが、ライブ中に頭をやたら触る仕草も、ある種の後遺症だったのかもしれない。
またそのストレスが原因で劇中で本人から語られる尋常性白斑などが原因で肌の色が抜けてしまうとか、前述した『ボヘミアン・ラプソディ』『エルヴィス』大スターたちの闇がしっかりあるのに一切扱わず、マイケル・ジャクソンの音楽の良さで引っ張っていった点は、やはり映画としての疑問を感じさせる。
そういえば、ジェフリー・エプスタインが暗躍していた時期とも重なるが、子どもたちを守るためにネバーランドを作ったとかいう噂も見たことがあるけどもジェフリー・エプスタインの闇はいつか明かされるのか??
hisSCORE
・脚本のユニークさ、濃さ、テーマ性 4/10
・映像のアプローチ 8.5/10
・映画の美術面 7.8/10
・キャラクターの魅力 7/10
・音楽 7/10
・上映時間と個人的趣味 7/10
66点
66点にした理由は、ステージ再現と映像の熱量だけならもっと高くしたくなる一方で、脚本がマイケル・ジャクソンという人物の複雑さに追いついていないと感じたからです。音楽映画としては強い。伝記映画としては薄い。だからこそ、観ている最中は楽しいのに、観終わった後に「本当にこれでマイケルを描いたことになるのか?」という疑問が残りました。
おすすめはできる。ただし、かなり問題も感じる映画でした。嘘を描いているわけではないのだが、見せ方はかなり偏っているという印象です。
音楽が好きな人は見ても楽しめるし本作きっかけでマイケル・ジャクソンの再ブームが当然来ることが理解できる熱量のステージ再現があるし、現に私もその1人。マイケル・ジャクソンのことはよくわからないけど、楽曲は好き!という人は楽しめます!
ネタバレ あらすじ
最後に:ご訪問ありがとうございます
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