ロックンロールを大衆文化にした男の悲しき搾取の物語?
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに
製作
2022年オーストラリア・アメリカ映画
白人で初めて本物のロックを体現した男
監督
バズ・ラーマン
・華麗なるギャツビー
・ムーラン・ルージュ
・オーストラリア
・ダンシング・ヒーロー
キャスト
ネタバレ あらすじ
2022年7月17日劇場鑑賞
2022年30本目
雪を売る男は斯く語る
エルヴィスの自伝映画だが
本作の主人公は名優トム・ハンクス演じる
トム・パーカー大佐。
軍属の経歴もないし
本当はアメリカ国籍も持っていない
サーカス出身の興行主という
いかがわしし過ぎる男は
自らをスノーマンと名乗る。
スノーマンと検索すると
どうしてもジャーニーズの
アイドルグループが引っかかるし
詐欺師と入れると上記グループの
メンバーが出演するテレビドラマに
引きあたっちゃって
全然馴染みがなく引用もしづらいが
溶けて水になって流れちゃう雪を
売るということで日本でいう水商売やら
どこの水かわからないものを売る
先行きのわからないもの?
まぁ雪だるまってくらいだから
どっかにいっちゃうもの
お金を雪に例えてるかなぉと。
そんな彼の半生にて最大イベントは
もちろんエルヴィス・プレスリーの
成功の日々だったというわけ
バズ・ラーマンの帰還
その泡のような物語を
ゴテゴテのバッキバキの
『グレート・ギャツビー』と
『ムーラン・ルージュ』と
『ロミオとジュリエット』を
映画化したバズ・ラーマンが
9年ぶりに製作、監督、脚本。
40代という比較的短い生涯の中
最後の10年ではラスベガスという
まさに泡のような街で
5年間もコンサートを毎週行った
男を描くのだから相性は抜群か?
と思ったら至極丁寧に
エルヴィスという男や
初期の彼を取り巻く
黒人文化との関係性や
人種差別問題を巧みに
取り入れているのだから
恐ろしい。
ド派手なセットは
後半までお預け
まだまだロックミュージックが
エンタメとイコールでなかった
時代には色味こそは
抑えているがハイパー照明で陰影
がバッキバキ。
更に巧みなカメラワークや
編集技術で見ている人を魅了する
この監督でしか味わえないだろう
というバッキバキの映像が
終始銀幕を彩る。
トム・ハンクスのナレーションのスーパーパワー
トム・ハンクスといえば
出演作が何かしらの部門で
アカデミー賞にノミネートする名優。
今作では15年ぶりぐらいに
悪役っぽい嫌な奴を演じたと
思われるトム・ハンクス。
でも主役でもあり
物語の語り手でもあり
舞台もアメリカ南部ということもあり
『フォレスト・ガンプを彷彿。
そちらも主人公でモノローグであり
今作ものその体裁が取られている
点であアカデミー賞受賞作品の
衣を借りてるとも思えなくもない。
またその大佐のモノローグ
及びナレーションによるお話
というところで
彼の主観、そして詐欺師の主観と
あるのでこの映画自体が嘘に
塗れているとも言えなくもない。
それに伴いますます見る側の
娯楽に対する抵抗をガクッと下げている。
序盤のエルヴィスが覚醒するシーンやばかった
まぁ上記の通り大佐のモノローグにて
語られているので全てが嘘かもしれないし
誇張しているようにも思えるんですが
エルヴィスとのギターブルースとの
出会いや
そのままゴスペルでの天啓を
再現したカルト的な熱狂。
そしてそこからのサブリミナルに
自身の表現に転換し
女性を熱狂させる様が
めちゃくちゃ狂気孕んでて
面白かった。
それまではコミックブックの
シャザムに憧れてた青年が
スーパーパワーが欲しいと願って
ロックの力を手に入れたと
落とす物語展開もうまいし
シャザムの力の出会う場所である
ロック・オブ・エタニティも
ある種ロックミュージックのメッカ
のように聞こえなくもないのがうまい。
エルヴィスの曲が良い
洋楽は邦楽より聴くタイプの人種で
フェスもなんだかんだ行ったり
海外フェスの配信は見てたりするが
エルヴィスはちゃんと聞いたことない。
コマーシャルとか
映画の劇伴で聞いたことあるなぁと
思う曲がいっぱいあったが
いざ字幕がつくと
なるほどこのような歌だったのか?
あ。これはゴスペルなのか?
エルヴィスの多才っぷりに驚愕。
ロックだけじゃなくて
ポップの部分もかなり良くて
邦楽の往年の歌謡曲の良さを
彷彿させる。
ロックミュージックのパイオニア
の凄さが濃縮されている。
だが逆に彼以外の音楽業界の
動向が分かりづらいのが難点
作品の中にビートルズの言及はあるものの
彼がキング牧師の死に心を痛めて
再び音楽をメッセージとして
やり直そうとする意識高い展開が
あるのだが
エルヴィスに影響された
イギリスのビートルズが
アメリカにてロックミュージックとして
逆輸入されてエルヴィスが古くなって
しまうという移り変わりは
見ることができない。
活動期間はビートルズよりも
エルヴィスの方が長いにも関わらず
音楽史的には初期の部分にしか
フォーカスが与えられてない。
音楽史を紐解く映画ではない
その一因としての
パーカー大佐の金儲けと
エルヴィスが選んでしまった
音楽家ではなくエンターテイナーの道
というものが彼をスターにし
どん底に陥る要因でもあるのだから。
大佐の洗脳術の恐ろしさ
今作のずば抜けて恐ろしいのは
大佐の処世術だろう。
人をコントロールする天才の大佐。
そもそも大佐とか名乗っているのに
軍属にいたこともないし
そもそもアメリカ国籍もない
本当にやばい人。
自分も営業職なので交渉術の一つとして
真実の側面だけを見せて
良いように見せる手法やら
合間合間の隙間に意見を言っておく
無数の意見のうちそれがハマれば
その影響力は強くなるという
ネットでも検索数稼ぎで
事前にあるかもしれないネタ記事を
書いて実際に起きたら
検索流入が爆上がりにあって
広告収入を得る手法。
洞察力で人の隙を見て
そこに入り込んでいき
栄養分を吸うという
恐ろしいテクニックを持つ大佐。
勿論彼の欲によって
エルヴィスの授かったスーパーパワーが
ふさわしき場所で振るうことができた為
それを理解しているエルヴィスは
大佐をそこまで憎むことができなかった
わけなのだが。
そしてエルヴィスの元妻も大佐を
憎んではいないというオチもあって
大佐の処世術の凄さは計り知れない。
知らず知らず人を洗脳するテクニックは
本当に恐ろしい。
彼にギャンブル癖があったオチは
なかなかに最低で
ここまで大金を手に入れたのに
全部ギャンブルのスリルに興じて
ほぼ残ってなかったという顛末
マジでやばい。
人種問題扱っていて現代的
今作がうまいなぁって思ったのが
人種問題の扱いができてるところ。
劇中ではエルヴィスこそは
黒人文化を白人文化にしている
ように思えるが
それについてアフリカ系の方はそれを
悪く思っている描写はなかったし
むしろ楽しんでいる様もあった。
確かなルーツをエルヴィスは体現した
本物だったところもあるだろう。
現代において分断が騒がれる中
このような作品がもう一度
融和に繋がれば良いなぁと思うのでした。
時代に相応しい社会派な部分も
あってよかった。
ただ実際にアフリカ系アメリカ人の方が
本作を楽しんでいるのかは全く
わからない。
皮肉が効いているのかラスベガスに
移ってからはその要素がなくなっちゃたしね。
伝説のロックスターの死の真相は?
先日も大好きなバンドの
フー・ファイターズのドラムの
テイラー・ホーキンスさんが
薬の過剰摂取等の起因の
心臓肥大による心血管虚脱にて
亡くなってしまった。
大好きなバンドだったので
すっごくショックだった。
マイケル・ジャクソンも
鎮痛剤の過剰摂取により急死してしまったの
記憶は新しい。
そんなスタートして
ファンの愛に答えたいと思う気持ち
フー・ファイターズの場合は
デイヴがまさにそのように思える。
それについてけなくなった
テイラーが果ててしまったのかなと。
本作でのエルヴィスの死もまた
ラスベガスという大佐の作った
黄金の檻の中での重圧と
苛立ちの中で精神的にも追い詰められ
徐々に薬などに蝕まれていく中
ボロボロになりながらも
ファンの愛に応えようとして
燃え尽きてしまったのかもしれない。
エンターテイナーとしての
哀しき末路というものを
垣間見るのでした。
映画長かった
冒頭から複数のショットを
同じ画面で大量に写す手法の豪華さや
序盤の天啓の目まぐるしいお話。
徐々にエルヴィスが成功していくと
バズ・ラーマンらしい
バッキバキの美術やら
映像がバシバシ出てくる
濃厚豚骨の太麺、野菜マシマシが
2時間40分近く続くため
体感時間がクッソ長い。
これどうなってんだ?が
終始続くものの
なかなかに眠くなったのだが
面白かったし。
エルヴィス・プレスリーについて
詳しくなったような気がしてきたので
この映画は最高だと思いました。
エンドロールがバッキバキ
ポスターのように
濃厚豚骨
ぎっとぎとを想像していたが
本編はそんなことなかった。
ワーナーブラザーズのロゴと
バズラーマンの会社のロゴの
デコり具合が
一昔前のギャルを遥かに凌いでいて
凄まじかったが
ラスベガスのシーンでも
カジノやネオンなど
煌びやかなものは一切なく
プレスリーの洋服等が印象的で
ステージこそ広めだが
豪華なだけで派手はは抑えめだった。
だがエンドロールの前の
文字から
この書体異常にゴテゴテ
と思った矢先
宝石がこれでもかと敷き詰められた
エンドロールの幕開け。
あとパンフに乗ってる
バズラーマンの顔面にも
照明がいい感じあったてて
めっちゃ陰ってて最高でした。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 7.9/10
・映像のアプローチ 9/10
・映画の美術面 8.6/10
・キャラクターの魅力 9/10
・音楽 9/10
・上映時間と個人的趣味 8.5/10
85点
きっとアカデミー賞複数
ノミネートすると思う。
だって主役がトム・ハンクスだから。