PTA大先生の『ノーカントリー』??
★この記事をまとめるとこんな感じ★
はじめに:ご訪問ありがとうございます
製作
2025年アメリカ映画
変わっていくアメリカ
監督
ポール・トーマス・アンダーソン
・パンチドランク・ラブ
・ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
・インヒアレント・ヴァイス
・ブギーナイツ
キャスト
ネタバレ あらすじ
2025年10月5日IMAXGT版鑑賞
2025年44本目
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概要:変遷する時代にまた傑作映画が一作生まれる
作る映画全てが高い評価を得ている鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作をIMXGTにて劇場鑑賞しました。
ポール・トーマス・アンダーソン監督は4年ぶりの新作。1996年から長編映画監督として活躍し、今作が10本目。1997年の長編映画2作目のAV男優の半生を描いた映画『ブギーナイツ』以降、映画賞レースには必ず関わっており、クリストファーノーランと同世代でまだ50代という2030年代の活躍も固い30代の映画ファンとしては目が離せない映画監督の1人。
比較的座組が一定のポール・トーマス・アンダーソンことPTA監督。しかし今作は新メンバーでアカデミー賞を若くからノミネートされ常連とも言える、大スターのレオナルド・ディカプリオが参戦!しかも実現実でいつも娘ほどの恋人を引き連れているヤバめの彼が、今作ではまさかの父親役として起用。しかしPTA監督の作品なので『インヒアレント・ヴァイス』を彷彿させるような大麻大好きのラリラリなお父さん役が当てられるのが相変わらずの監督の作風。共演というか敵役にはPTA監督の『リコリス・ピザ』でも起用されたショーン・ペン。『インヒアレント・ヴァイス』でも起用されたベニチオ・デル・トロ。などなど素晴らしい俳優が揃い踏み。
一応原作として読みにくくてやばいけど文学賞常連のトマス・ピンチョンの作品『ヴァインランド』が採用されている。時代設定などは現代に置き換わっているが精神性自体は引用されている模様。またトマス・ピンチョンはPTAのことを好意的に評価しているようで、『インヒアレント・ヴァイス』に続き2作目の映画化となる模様。
今作『ワン・バトル・アフター・アナザー』次から次へと戦いは止まず、転戦していく。目まぐるしい展開が繰り広げられる本作は、時代設定は明確にしていないが、2010年後半から20年代のアメリカにインスパイアされているのは感じ取れる。24年末にトランプ政権が復活し、「アメリカ合衆国を再び偉大な国にする」と宣言し、融和や民主主義や人種の受け入れや他民族の受け入れなユートピア的アメリカを想像していた方向性からアメリカ人に向けの原住民達から土地を奪った移民した白人達のアメリカを再び取り戻そうとする新たなる白人至上主義的な思想が強くなってしまったアメリカに対して、移民達の解放に立ち上がる人々とその次の世代の子供の姿を描いた変わりゆく世界に対してどう向き合うべきか、如何に現在のアメリカは狂いつつあるのかを宣言したようなおぞましい物語を描いている。
だがその物語の根幹にあるのは本当は血のつながらない娘であることを知る由も無い、娘を愛する父という薬物依存だし偏執狂になってしまった父の愛だけが1人の少女の心を救うという愛を描いた揺るぎない作品。センセイという現代の反政府組織として不法移民たちに寄り添うカルロスは、だらしない男でありながら過去に移民達のために戦ったボブを決して見捨てず、そしてただ娘のために奔走する男だと知る彼を最後まで見捨てない。残されたアメリカの善意や希望として彼を信じ支える。
自分の欲望のために人の命を切り捨てようとするロックジョーはその力で多数を踏み躙り上り詰めるが絶対的なアメリカの闇に嘲笑われる。
変遷する時代の中にまた大傑作の映画が生まれてしまったと思うのでした。
ここが凄い:結局何もできない主人公という脚本
見終わってびっくりした。主役のレオナルド・ディカプリオが演じるボブが、全然物語に対して役に立たない。彼はひたすら文句を言いながら娘に会うために移動をするだけ。ラリる、逃げる、文句をいう、匿ってもらう、電話を借りる、落っこちる、救われる、降りる、狙撃する、運転する、娘を保護するという英雄譚には似つかわしく無い主人公。逆に娘のウィラはロックジョーという自分の出生の秘密を持つ男と対峙し、自分の真実を知り、そして命の危機に瀕してしまう。
対極的で卑劣なロックジョーという構造と彼の顛末の虚しさ。中途半端な生まれでは決して真の高みには辿り着けない閉塞感。それにしてもこの革命家になりきれなかった男というか、革命に傾倒したけど本当に欲しかったのは人との繋がりだったというボブの本質的な人間讃歌を体現する普遍さの素晴らしさよ。髭面で髪の毛も変な長髪でやうや太っていて服装は部屋着のまま飛び出して、ただ娘を救いたいという本能だけで行動する普通の男が、最後の最後でウィラにとって一番尊くそして必要と感じる存在への神格化までしてしまうのだから凄まじい脚本だった。
どこもかしこも凄い:ショーン・ペンの怪演
とショーン・ペンと言えば怪演なのはもはやいうまでも無いようではある。『ミスティック・リバー』でのギャングの親分と『ミルク』でのゲイの政治家の演技の振り幅の恐ろしさ。もちろん『アイ・アム・サム』での知的障害者の熱演も含め、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でもバカにされるやり過ぎっぷりさえ思う、もはや怖すぎる。今作では仕事一筋とも言えない、出世欲はあるが、人生は要領をえない、孤独でその孤独の理由が彼自身のキモさが表すという絶妙すぎるキモくで劣悪な男を創造している。独特の口の閉じ方や苛立った時の口の力の入れ方や、前髪の整え方や姿勢の感じなどの造形の恐ろしさ、確実に賞レースにノミネートしそうな気持ち悪さ。本当に怖い。

ここも凄い:ビスタビジョンで普通に映画が作られてて驚愕
1890年代に生まれた映画。1920年代にの「トーキー映画」の登場により本格的に長編映画が生み出され、早100年近くが経過。今作は1950年代から生まれた比較的古くからある撮影形式のビスタビジョンで映画が制作されている。通常映画の35mmフィルムで撮影してが横縦比が1.375:1に対してビスタビジョンという本来35mmフィルムの縦移動とは違い横移動で撮影し1.85:1という大スケールの映像で撮影する手法が採用されている。

嬉しいことに一番近いサイズの1.43:1というサイズでIMAXGTで上映が決定したので、自分はIMAXGT版で鑑賞することにしました。
見ていてどんな凄い映像が見れるのかとワクワクしたのですが、逆に驚いたのが、普通の画角の映像が多い!IMAX認証カメラで撮った映画って、ここはIMAXカメラで撮りましたドーン!!見たいな映像があって、解像度すごいでしょ!包まれてる感じするでしょ!アカデミー賞撮影賞受賞もんだよ!って観る側を驚愕させてくれるけど、今作はそんな演出的な映像とは距離を置き、普通の映画を普通に特大サイズ向けに撮影し上映しているという、異様さ。映画としては普通にバストサイズの会話シーンも多いし、普通の屋内を普通に特大サイズで撮影している。むしろ1.5:1が今作のスタンダードでふ!って感じ、いやいやそれなら1.375とかの普通の切り取られたサイズで鑑賞したらどうなるのよ??という全く理解不能な気持ちが沸々と湧く。
じゃあ全く特大サイズに驚愕されるような映像無いのか?と言ったら、本質的に縦長の映像であることに特化した映像がしっかりあるんです。
実際に存在する連続の坂道を巧みに利用したカーチェイスの映像があって、追うもの追われるもの、そしてその実情もわからないキャラクターたちをどこまでも俯瞰で見る観客という凄まじい映画的文脈を映像で表現!
ただ車が距離を取って走ってるという映像をアイデアでしかも特大サイズの映像だからこそ、奥ゆかしく楽しめる。
そしてそのアクションの終わりもなんとも唐突、そしてクレバー!なんか凄いものを見た後の、愛というテーマの素晴らしさよ。
感想:映画を理解するってこんなに難しかったけ??
見終わって思った1番最初に思ったことは映画ってこんなに難しかったけってことでした。映画ってもっと主題については一つで収まってたような気もしたけど、変わりゆく世界に対して、寓話として盛り込まれた複数のこと。最初に書いた、高齢者による白人至上主義の再びの台頭。一昔前はホワイトトラッシュが問題になってた気がするけど、その次へ高齢化社会からの昔は良かったよなぁ問題。日本なんて老人に支配されてるとも言える社会ですしね。それがアメリカにもあるんだぁとか、そして移民問題や女性の自立や自由の弊害、有害な男性像VS愛のある父の過去でしか起きないすれ違いと永遠のすれ違い。一つの事案ごとのクレバーさ。アメリカの過去と現在の危機についてしっかり理解していないと楽しめない。こんなに映画って難しかったけ?世界って今まさにこんなに混沌なんだっけと思ってしまうのでした。
考察:久しぶりのコーエン兄弟の映画のような面白さ
映画全体には味わったことのある面白さを再び味わえたような気持ちにもなりました。自分としては『ノーカントリー』の興奮を再び味わったような気持ちもあります。壮大な荒野と追跡者達。巻き込んで巻き込まれて結果自分の力では何もできないけど歩みを止めないデカプリオの往年のコーエン兄弟の映画の主人公のような楽しさのある魅力的なキャラクター、デカプリオの演技プランは近年の傑作『ワンス・アポン・タイム・イン・ハリウッド』と変わってないようにも思えたり。そして唐突に描かれる終盤のウィラが巻き込まれる銃撃戦。そこのシークエンスの乾いた正義と悪の唐突のぶつかりと慈悲のない光景。急に西部劇が始まる面白さと血まみれで惨たらしさのあるのにカラッとして終わる清々しさの妙な違和感、なぜか最近コンビを解消しちゃったコーエン兄弟の傑作映画達を彷彿して最高でした。
hisSCORE
・脚本のユニークさ濃さとテーマなど 9.2/10
・映像のアプローチ 9.1/10
・映画の美術面 8.6/10
・キャラクターの魅力 9.4/10
・音楽 8/10
・上映時間と個人的趣味 9.55/10
91点
ベニチオ・デル・トロがデカプリオと別れる革命万歳と行って扉を閉めると絨毯がくるくると広がるあのシーンの素晴らしさ。
完璧すぎて趣向がウェス・アンダーソン過ぎる。
ポール・トーマス・アンダーソン監督のつかみどころのない才能が大爆発している印象の本作。いずれの作品も面白さがそれぞれ違い、全く違う持ち味で個性については最早言及できない。天才映画監督というやつなのか???脚本含めて最高だし、社会派なのにアクションあるエンタメ的であって全く訳がわからない。
とりあえずできる限り長い間IMAXGTで上映して、今作を見たいと思った人が本質に近い画角でこの映画を楽しめることを切に願います。
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